2004/3/26 3/26 3/27 3/27 投稿者・ritonjp

     「男壮里見八見傳 巻之二」

     第三回

 業通自在の八総ハ、美少年と姿を変じ、佐世姫と淫楽を欲しい侭になしけるが、好実ハ斯かる事も知らせ給ハず、奥方の歎き、腰元の愁訴、元来愛娘の事なれバ、殊更に捨て難く、幾度となく富山の奥へ人を遣ハし、其の音信をとハせられしに、渓川の向方ハ常に深霧の立ち覆い、更に便りを得ざりしが、今ハ中々思い兼ね、好実自ら、是を尋ねんと南蛮伝来の遠眼鏡を携え、家臣ハ麓に留め、心利きたる侍女二人を伴い、歩み悩める女の手を、右と左に採りかハさし、荊桂を踏み分け掻き分け漸うにして谷川の畔に着きたるが、此所にて向うを見渡せバ、白河岸を洗いツッ、霧ハ細かに木隠れて、其れぞと見分ける物もなし。
 此時好実、例の遠眼鏡取出し、川の向うを見て在れバ何ぞ図らん八総ハ、今佐世姫とまじハりの最中にて、余所目に気の悪く、心浮縷々其の風情
 そも佐世姫ハ犬をしも、親の許せし夫ぞと、思い諦めおハしけん。
 さも麗しき玉門を振るハし振るハし取乱し、息遣いこそ聞こへねど、白き淫水だらだらと八総の赤き陽物へ流れ罹り、八総ハ一心其の事に凝り固まり、元来犬の事なれバ節くれ立ちしを抜き放ち、また頭下げ、佐世姫の耀艶なる太股抱へ、尻の辺りを鼻息荒く嗅ぎ廻し、前尻、さねがしらと熱き舌にて舐めるやら、こつぼ目掛けてざらざらの舌突きいれ、また高く掲げし玉門にまらを後罹りに突きたて突き立て小腰を速め、ずぼりざくりと、既に真精の縺れ尽す時なり。
 佐世姫ハ雪より白き左右の手を八総を留めツツ、本手に為り背中に懸け、足を空さまになして嬌淫の体、好実遥かに遠眼鏡より是を見て、心中に思う様、
「夫、犬ハ極熱の獣にして、陽物の温かなる事喩える物なく、女子一度是と交ハる時ハ、其の美快に畜生と謂うも忘れ、人畜の差別ある道理を弁え乍ら、犬を夫と慕う心になるものぞと、されバ獣国と謂う夷国も、人間と犬と交合てより国の基を開きし聞きぬ、げにさも在りけんか、佐世姫が尊き身にて畜生に気を遣る事甚だしき、人間よりも百倍の善き事なくてハ、斯くあらんや。嗚呼心地よき風情なるかな」と忽ち春心発動なし、持ちたる眼鏡取り落とし、溜息就いて傍ら見換えるに、佐世姫を介抱させんと連れ来りし二人の腰元、小萩・桔梗と謂えるハ、今年二九の娘盛り、先刻より好実の顔に見蕩れ、且つ男根の壮大なる噂をなし、二人共に腎水の湧きかえり、茫然としてありけるが、好実前後を忘れつ、右手に在りし小萩を捉え、直ぐ様其処へ押倒し、無二無三に乗り懸り、左手に在りける桔梗を引寄せ、二人並べて口を吸い、馬の物より恐ろしき、彼の好実が一物を小萩が玉門へ押し当てれバ、子安貝に擂粉木を突き付けが如くなるを、好実ハ色々と骨砕き、唾にてあしらいあしらい乍ら、漸うの丹精にて半分斗り、ズブズブズブと嵌りし加減の快さ。
 静かに抜差しなしけれバ、何時しか小萩も快く、眉に皺を寄せ乍ら、怖々下から持上ぐる、弾みに根迄押込まれ、ハァッと乗りいだせバ、好実ハ女の肩へ手を懸けて押さえつけ、スカリスカリと大腰に、遣い乍らも桔梗を離さず、真白なる股を開かせ、見る斗りにても気の乱るヽ可愛ゆらしさ、玉門をくじり乍ら、やがて小萩に気を遣らせ、直ぐに桔梗をよがらせつっ、果てハ二人を抱き付かせ、二人を交互に一突きヅツ、激しく犯し罹りけれバ、二人ハ腕と腕取交し、恥かしさを打ち忘れハァハァスゥスゥドックドックドクドク、好実も今ハ堪りかね、小萩・桔梗の玉門にてドクドクドクドク両方のこつぼへ注込むせハしさ。
 正体乱るヽ折しもあれ、耳を貫く鉄砲の音凄まじく響きしかバ、是に驚き精を遣りしまい、辺りを看れバ谷川の、向かいの深霧晴れ渡り、思いの外に近く見えて、八総ハ打倒され、佐世姫歎きの風情、其の傍らに一人の益荒男、鉄砲を引提げ走至りしが、誰ならんと看てあれバ、是即ち姫君の許婚、金精大好と謂う者にて、彼の妖犬を撃ち殺るせしハ聊か忠義の業なりしかど、姫上既に得心して、八総に犯され給う上ハ是が我が大いなる不忠為りとて、後悔ハ遺憾方なく、忽ち出家をなしにける。
 此時好実ハ此処に至りて、仔細を問ハんとなし給うに、佐世姫ハ深く恥じらいて、やがて自害なし給えバ、奇異為るかな姫上の疵より、武家の娘に町家風、芸者・女郎・囲れの体、後家に年増に岡遊女風、種々の女の美しきが、煙の如く顕れて、八方にこそ消えて行く、いと怪しき事なりけり。
 好実ハ歎きの中に、此の様々を見て記憶なし、還らぬ事と諦め給い、姫の亡骸を懇ろに弔い、八総をも埋葬ありて、大好に内意示され、其の後愈々腎勢強く、隣国までも犯し倒して、安房・上総・下総の三ヶ国に跨り、別けても情愛深く、契りし女五十余人に及びし故、是を里見の五十余情とハ謂えリしなり。
 かくて年月過ぎて後、武州大塚の片ほとりに、犬塚番作と云う浪人あり。
 其の一人娘に於信乃とて、いと美しき娘あり。
 年ハ二八の花の顔、此処らわたりに見もなれぬ、女の子にて在りけれバ、近所の若輩等心を掛けぬハなけれども、於信乃ハ毎度女の多き家ならざれバ遊ぶ事もなく、また後家・娘・下女・はしたも、於信乃を慕ハぬ者とてハ里に一人もなかりしとぞ。
 さて番作ハ身罷りて、於信乃ハ父の縁者なる、好六と云う荘官の許え引取られて暮らしけるが、其家に濱次郎と云う男子在り。
 是も稀なる美少年にて、近所の者ハあの器量を女に欲しき事なりと、挙りていハぬハなかりけり。

     「恋のやつふじ」第三回 了

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