2004/3/4 3/4 3/4 3/4 投稿者・ritonjp

     第四 中の巻 「返り花の巻」

 百年に一とせ足らぬ九十九髪とは、「伊勢物語」六十三段中の歌、下の句は「我を恋うらし俤にみゆ」
 かの業平を慕いぬる、老媼に対して詠み給う。
 夫れにあらねど手弱女も、四十に近ずきては、顔の小皺の目に立ちて、肌も荒びつ髪さえも荊ならねど霜八度、おける尾花に彷彿ッッ、見所はなきもの乍ら、春宵一刻千金、花に清香あり、月に陰ありとは中国の蘇軾の詩。
 有触れたる人情にて、花と月とを賞せんなんど、また霜葉は二月の花より紅なりと褒めたるは、杜牧を少し捻って騒がしき。
 春より秋の閑静よしと言いたる人々の心々の世の中にて、喩えば鰻の蒲焼は、旨いの極みなりと言えど、日々三回ッヽ食わせられては、鼻に付きて其の香を厭う。
 砂糖屋の丁稚甘きを好まず、鰻屋の猫馨しきを嫌うと謂うも此処ならん。
 されば室町の吉光君は艶々麗々としたる年の若き、美女のみを抱き寝して味わい鰻に等しけれど、また偶々にはごまめの卯の花漬、煎菜に油揚是も妙と、換った物の珍らしく、年こそ少し萎れたれ、其の取回し詞の端、賎しからず野暮からぬ、朝香を鳥渡一口と、心の裡の目算に、今宵は此処にお泊りと、神輿を据えての大酒盛。
 春の夜いとど更け易く、はや子刻に程近し。
 朝香は娘の帰らぬを、心の裡に案じ侘び、畢竟こうして貴人の、罹る草屋へ来給いしも、娘音勢が故なるに今宵みし帰り来ずば、不興ならんと思うにぞ、飲んだる酒も裡に落ちて快くは発しもせず、唯、人知らぬ気扱いも、皆無駄ごとに夜は更ける。
 朝香は下女に謂い付けて、嗜みの夜具取り出させ、
「むさくろしきも此の処へお寝せましょう」ト佐栗に商談、表座敷へ敷き伸べる、綾の蒲団に緞子の夜着。
 お前は此処に御憩みと、一間隔てし納戸へは佐栗が床うを敷き伸ぶる。
 吉光君は朝香が案内に、表座敷へ入り給い、蒲団の上に肘枕。
 酔うた酔うたと寝給えば、朝香は傍に手を仕え
朝「御前様其の儘では、お召物が皺になり、見苦しう御座います。サァサァ是に召し替えてませ。御腰なり御足なり、御摩りでも致しましょう」ト云えば、吉光起き直り、朝霞の手をひっとらえ、
光「何処も按には及ばぬからマァ此処を摩ってみやれ」ト手を持ち添えて宛がい給うを、着物の上からそろそろと、摩って見れば木の様にしゃっきり勃起たる大業物。
 股の間へ横たはる、其の手触りの心善さ。
 朝香暫く撫で摩り、握って視れば其の太さ、着物の上とは謂い乍ら、凡そ八寸胴返しとも、謂うべき程にてピンピンと、押さ経る手さえ撥ね返す、威勢鋭どき有様に忽ち気持ち味になり、吾を忘れてぬらぬらと吐淫いでしや、内股もやがてびたびたするばかり。
 此の時吉光手を伸ばし、朝香が顔を引寄せて、口を吸わんとし給えば
朝「アレ勿体無いお止し遊ばせ、憚り多う」ト半ばも言わせず、
光「ハテ野暮な事を言う。恋に貴賎の隔てがあろうか。夫れとも其方が否ならば」ト態と焦らし手を放し、身を引き給えば
朝「ァレ御前様、何で否で御座いましょう。然し乍ら遥々と是迄入らせられましたは娘、音勢を御覧の為、生憎留守でついになう、泊りと見えて未だ帰らず、思し召しが斯様で有ろうと、気を揉んで居りますョ」
光「ハテ往水と飛ぶ鳥は、何処へゆくか誰も知らず、居らぬものが何となろう。夫より其方傍へ来て、我の思いを晴らさして、くりやれ」ト、言いつつ引寄せられ、朝香は久しく男の傍を、遠ざかりつる事なれば、年は取っても何と無く、初々しさに気もときめき、自由になれば吉光は、やがて抱締め手を遣って、山繭の腰巻を、探り開きて内股へ、割込み給えば思いの外、肌触りさへすべすべし、毛はふっさりと房楊枝を並べていじる如くなる。
 段々奥へ差込む手先に、紅舌は触れど此の辺り、吐淫ぬらぬら溢れ出て、滑りて紅舌もつままれず、況して陰門の両淵は流るるばかりの有様に、吉光最早堪り兼ね、両手でぐっと内股を押し広げて足を割込み、鉄火に等しき一物を宛がいて、二腰三腰押せば、下より持上げる弾みにぬるぬる毛際まで、何の苦もなく押込めば、其の開中の温かさは云うにも更なり。
 忽ちに、小壺開けて鈴口を確り咥えて内へ引く。
 其の心地よさ気味のよさは、何に喩えんものも無く、吉光は目を細くしなし、口をすぱすぱ吸い乍ら、大腰小腰九浅一深、上を下へと突き立て給うに朝香は、子供を二三人産みたるぼぼにて、様々の道具だてさえ多ければ、雁首より胴中へひらひらした物巻き付いて、出し入れの度、玉茎をしごく様にて得も云われず。
 吉光数多の側室を抱え、色々楽しみたりと云えど、かかる稀代の上開はいまだ覚えぬばかりにて
「それ往く往くアァまたいく」ト朝香が背中へ手を廻し、力一杯抱締めて嬌り給えば、さらぬだに朝香は誠に久し振り、殊には太く逞しき一物に突きたてられ
「ヒィヒィフゥフゥムヽヽ」と声も立てず最初から、精を遣り続けて息もはずみ、正体もなき折からに
「アヽヽソレいくよまたいくよ」と男によがりたてられて、何かは以って堪るべき、五臓六腑を絞るばかり、陰水どろどろずるずると、限りも非ず流れ出て、昔を今に返り花楽しく其の夜を明かしたり。

      第四 中の巻「返り花の巻」  終わり

北嵯峨の巻 初寝の巻 室町の巻 返り花の巻 過去の巻

相生源氏-北嵯峨の巻 初寝の巻 室町の巻 返り花の巻 過去の巻 変詐の巻 地蔵堂の巻 古今伝授の巻 惚薬之巻 丑の時詣の巻 
開好記 男壮里見八見傳@ A B C D E 開談夜能殿 上   口吸心久茎 閨中大機関 錦木草紙 此の糸 
四季情歓語花暦-天之巻@ A  地之巻-前 人之巻 葉男婦舞喜上-中  愛-絆集 TOP頁