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     口吸心久茎ちゅうしんぐら

 湯玉門酒玉茎
 入浴後の女陰、飲酒後の男根は、特に湯ぼぼ酒まらと称して最上の性器とされる

序文

情人いろとのみ、言えど浮世の情愛は 論に及ばぬ夫婦仲
離れ難なき添臥そいぶしに 憎らしいほど可愛さは
惚れて生中なまなか人前を 隔て岩手いはでのした躑躅つヽじ
とかく色づく花の顔 散る紅葉鳥もみじとり妻恋うて
悋気は鹿の角隠し 濡れぬ先なる露の身も
類を求めて身染みそめ来し 鴛鴦をしの浮寝の薄氷うすらい
割って言われぬ女気は 語る妹背の恋の山
夜着の谷間や床の海 譬え野末の草枕
連理に並ぶ比翼紋ひよくもん その心根をしら雪と
抓る肌えの紫は 眠たき空の明けの雲
馴染み重ねた恋仲も 楽は辛苦か辛苦が楽か
無理を言うのは男の癖と 嘘を誠に釣車
井戸の端辺の茶碗でさへも のせられてより危なさの
思いを知りて底深く 汲んだ心の胸一つ
約束したりせられたり またの逢瀬は灯火を
消して忍ぶの摺衣 二人が仲は神かけて
今宵は首尾の松の枝 領えりも翠の後ろ髪
手管は恋の姿とて 味な口舌くぜつの縺れ糸
探り当てたる仲々は 起請誓紙も偽らで
揺らぐ互いの玉の緒は 目に見ぬまヽの憂き思い
身は冴えやらぬ朧月 しんと更たる鐘毎に
えにしは他生たしょうの袖庇 独り寝る夜は惚れる身の
元の心ぞましならめ 堰き止められし濁り江の
澄む水色の浮気同士 京と難波と江戸と国々。
此の戯言、馬鹿口吐き散し、幸に四十八文字の読み次を序とする。

紅葉鳥=もみじとり=鹿
比翼紋=ひよくもん=情人と自分の紋を組合せた紋
摺衣=草の汁で模様を摺り付けて染め出した布
連理=一本の木の幹や枝同士連なって木目が通じている事
 [男女の深い契りに喩える]
首尾の松=隅田川の西岸、蔵前にあった名物の松の大樹、吉原遊郭へ舟で通う遊び客が目印にした
口舌=痴話喧嘩
起請誓紙=神仏に誓って互いに取り交わす堅い約束の文書

 「二段目」 芝居では桃井館の場 
 桃井若狭之助が高師直を、
討とうと決意して、本音を家老の加古川本蔵に打ち明ける。

若狭屋助次郎
「おかよがこねへそのうちに、ちょんの間を極める心算だ。
 なんでもいヽやな。俺次第になんな。誰がなんというものかな。どんなうめへ肴でも、この蛸の張煮ふらにが一番だ。
 子供じゃぁなし、いヽじゃぁんねへか。静かにしねへな。
 それ、もう仕方あるめへ。なんのこったろう」
お松
「アレサ助さん、およしなさいな。わたしの様な者に御構いなさるお前さんでも御座いますめへ。
 気休め程には、皆めにあいますから、油断なりません。
 おや、たくさんで御座りますョ。アヽヽヽヽヽ左様かね。
 アレアレ、アヽヽヽヽヽモゥだれぞくるとわるいから、あれされ手が痛い痛い、ひどい事をなさる、ヱヽヽヽヽヽ、モゥモゥどうしたらよかろう、あいたあいた此の手が痛い痛い。
 あれあれモゥモゥモゥ、だきしめてきつうくきつうく」と、大よがり、口を吸うやら、吸はせるやら、互いに秘術を尽し、思う儘に気をやり、がっかりして、「アヽ、暑かった」ト、互いにニッコリ、如何なる松の木の様なる堅き女でも、此の様な男に罹ると、忽ち枝も折れる也。

蛸の張煮=ふらに=女陰の暗喩

 「三段目」 芝居では、殿中刃傷。こっちは遊び。「主人抜く頃勘平は突いている」

おかる
「わたし故に、おまへもうちにへは帰られず、わたしの内は山崎町で、親達を褒めるでは無いが、真に頼もしい人達だから、マァマァわたしの内へおいでョ、如何か仕様もあるだろう、それに、アノ伴内の野郎に捕まって、大きに気を揉んで、癪が痛くってならないから、どうぞ押さえておくれョ、アレサ、其れ処ではないに、ヱヽ、も、如何するのだな、アレ、ヱヽ、モゥモゥモゥ、わるい事ばかり、いっそモゥモゥ、如何しよううのう、口をお吸はせよ、ヱヽヱヽ、ソレソレソレソレ、アヽ、フゥフゥフゥ、スゥスゥスゥスゥ」
かん平
「旦那の取込の所に居合せねへで、真に済まねへ、おめへは未だ深い様子は知るめえが、上方に居る番頭ふらの介さんが帰ったら、詳しい事話して、わび事をして見様、マァ仕方ねへ、こっちへよんねへ、今時分から何処へもいかれやぁしねへ、モゥ東が白んで来た、かヽあかヽあと鳴く烏より、是からおめへをかヽアと呼んで、二人暮らして、時節待とうス、アヽ寒い、侭よ、いヽじゃぁねへか、如何なるもんか、腐れ縁だ、コレサ、いヽというのに、此処でやっつけ様、構うもんか、もっと広げねへナ、誰も見るもんはねへ、ソレソレ、どうだどうだ、気が晴れてよかろうが、しっかり捉まんねへ、ソレソレソレそれ、いヽぞいヽぞいヽぞ、アヽアヽ、フゥフゥフゥフゥ、ムヽムヽ、スゥスゥスゥ」
おかる
「こうしている所を、伴内めに見せたら如何だろうねへ、さぞ悔しがるだろう、ソレソレソレ、いヽよいヽよいヽよいヽよ」
 縁の下にいる、心の内で、
伴内「確か此処ら来るだろうと待っていたに、ちげへねへ、よしよし今に見ていろ、うぬ、ヤヽヽヽヽやらかしてやァがる、こいつはたまらねへ、今に気を遣る時分に、脅かして遣ろう、〆た〆た」

 「四段目」芝居では、判官切腹の場、その後城明け渡しの場面。
 次郎=薬師寺次郎左衛門から取った 馬さん=石堂右馬之丞から取った

 此処では、廊下を歩く男達、「馬生」等噺家、幇間、女形、三味線箱に「茂登」と芸者の名がある、既に料理も届いている、
「此の間、柳屋のうちから、生薬屋の次郎さんと石屋の馬さんが、おいでなさいましたっけ」
「如何だ、おかよどん、何時も何時も冴えているのう、此の家のおめへは花だぜ、みんながおめへを目当てで来るから、ほんの花争いだぜ、好い加減に迷はせて置きねへよ」
馬「おくだどん、大分賑やかだの、今に来ねへな、亦、拳相撲で閉口させてやろう」
七「誰だ、豊後屋じゃァねへか、お株で都々逸を遣っているな、おいおい色男。又其の声で迷はせのだな」
菊「何処の客人だ、おや生さん・七さん・左平さん、よくいらっしゃいました、真に噂ばっかり、また、ヘボ拳は如何で御座りますね」
都々逸「嘘に泪が なにでるでるものか 冴えた月夜にゃ降りはせぬ」
「サァサァ、床入りしょ」

 「五段目」 芝居では、山崎街道の段、

 勘平は京に近いおかるの実家に身を寄せ、猟師となって武士に戻る日を待っている、と、家老の息、斧定九郎、此処では、早野屋かん平、と、おの屋おさだ、としての情事仕立て、
かん平「よい年増が、此の寂しい田圃道を、たったひとり、大胆千万な、連れに為ろうと、先刻から、付回していたに、幸な此の大雨、袖濡れ合うも他生の縁、有り難てへ有り難てへ、ソレソレ、コゥかコゥか、苦しいよぅ、ナニ、いヽかいヽかはいやいや、せつねへかせつねへか、ソレ、如何だ如何だ、いヽぞいヽぞ、アヽヽヽヽ、ソレソレ、二つ玉で遣ってくれよう、どうだ、こてへるかこてへるか、財布にあらぬ巾着ぼぼ、締り塩梅、どうもどうも」
おさだ「未だ、お前さんもお若いが、御奇特なよい年をして、一人歩きは嫌なれど、少し心願で、山崎稲荷へ参詣致して思はぬ夕立、思えば神のお引き合わせ、こんな嬉しい事は御座りません」
「アヽヽヽヽ、ソレソレソレ、其れは子つぼでは御座りません、後の方に在るのが、私自慢のぐりぐりだこ、娘の時は用心して、握りつびに致したせいか、さねがぴらぴら動きます、霍乱をせぬ様にと、和中散に反魂丹、長命丸も有りますから、其れを付けてして下さいまし、アヽヽヽヽヽそれそれそれ、こんなに動いては、身体へ撥ねがかヽるから、静かにしておくれよ、ソレソレソレ、肋へかけて背骨へこたえる、アヽモゥモゥモゥモゥソレソレソレソレ、イクイクイクイクいくぅぅぅ」
 其処へ猟師仲間の狸の角兵衛蓑を被って上手より走って来る、
「てんてれつく、てんてん、ハイ、うまうま、馬ではなくって、しヽだしヽだ」
地蔵「地蔵のつらも三番程しやァがった、いまいましい、あんまり地蔵ばかにした奴等だ、ヨシヨシ、俺も早く賽の河原へ行って、子供の尻でもして遣るべい、然し、俺が石まらに合うのがあればいヽが」

 「六段目」 芝居では、与市兵衛住家の段
 勘平ハおかるの父与一兵衛殺しの疑いを、懸けられ切腹、絶命の寸前疑いが晴れ、おかるの母に看取られて死ぬ。此処でハ、かん平・おかると母の三人が情交を繰り広げる。

かん平「渇しても盗泉の水は飲まずとは、義者の戒め、可ほどの弁えの無きオイラではなかったが、何故まァ、アヽ、善くなって来たはな、それそれ、堪り兼て来たから、奥へぐっと突きたて様、アヽヽヽ、いヽヽヽ、ソレソレソレ」
おかる母「よもやよもやよもや、ウヽうんとハ言うまいと思ったが、内証の孝は、是此のマラ、さっき、据風呂から揚る時、見て置いたモゥモゥモゥ、目が廻るようでようで、是ハも、ねへもんだ、是ほどオヤシて居るものをアヽヽヽヽ、モヽヽヽヽ、いヽヽヽヽ、それそれそれ」
おかる「是はしたり、かん平さん、非義非道の事をして、身の愉しみに仕様とは、あんまり、私を踏みつけな、親同然の姑をトボシわたしの見る前で、親子を一緒にトボスとハ、大大大の雁高・大槍で、芋田楽の古商い、かヽさんもかヽさんだ、あんまりじゃぁねへモヽヽヽヽヽ」

 「七段目」 芝居では、一力茶屋の場
 大星由良之助が京都祇園で、遊び続ける風を装い乍らも、師直を討つ準備、送られて来た密書の立読みを、おかると斧九大夫に盗み見される、見せ場。此処では、妙見様に参詣。

女「是、可内そちは、押上の一力へ参って、待っていやれ、今に御祈祷を終うと、私も直に参るから」
べく「へいへいへい、畏まりました」
御手洗馬の男「吉公見や、御代参だろう、いヽ女だ、コウ、気が悪りぃじゃぁねへか、妙見様の御蔭で、こう云う女を見るから、思い切って、御賽銭を三文斗り挙げ様、」
吉「何だ此の手拭には、女の名が書いてあるから、是で手を拭いて遣るべい、亀公其処へ銭を出して置いてくだっし」

 「七段目」其の二
 芝居では、おかるの兄・寺岡平右衛門が、一力茶屋に由良之助を尋ねて来るが、由良之助「死人も同然」と寝入ってしまう。此処では、御代参に来た内儀「大ぼし」と婚礼道具職人「寺岡屋吉五郎」

寺岡「ヘイヘイヘイ、憚り乍ら、寺岡屋吉五郎で御座ります、毎度御屋敷へ御出入で上がりましたが、段々、御取立、真に有難う御座ります、何はともあれ、此の度の御道具、御誂え下され、真に有り難く、其れ故、今日御代参と請け給り、御後を慕いまして、御礼に、態々推参仕りました、是は、したり、よう寝て御座るそうな、御風邪でも召しては悪い、ヱヽ、マァ、わたしが此の羽織でも、寝顔の美しさ、さてもさても、如何もはや、是は堪らぬ、堪らぬ、モゥモゥいっその事、破れかぶれの百年目、ぼぼでも見て遣るべい、待てよ、其れ此の足を、こう遣って、其処でこう広げて置いて、ヤヽヽヽヽ、見へるぞ見へるぞ、アノマァ、膨っくりとした塩梅は、如何も如何も、成る程ナァ、朝夕のしたい、したいが覚めねへ内の無分別、先ず先ずいじって見て遣ろう、はヽァ、疣の様な物があるはへ、こうもあろうか」
「手を出して、足を広げて、蛸女陰や、忝い忝い、洞庭の秋の月をさらば拝み奉ろうか」

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