「淫書開好記」
登場人物
蜂巣のお六=蜂巣加小六
松の下の通路=松下嘉平次
平五郎=平手中務少輔 芝の群六=柴田勝家
上総屋信次郎=織田信長
三毛田山三=池田勝三郎信輝
上嶋のお紋=植島主水
「其の一」
「アァ、今の世の男の情けなや、女の尻に敷かれ放しでハないかいな」
此処は都の辺、五十位の男が一人、道行く男女の姿を見乍ら、矢鱈と腹を立てヽいた、
名は儘贅と謂う、
此奴若年の折から、色の道に入り、源氏狭衣の巻は勿論、種々の春画、本を見尽くし、人情本も読み飽きて、千人万人の女を犯しきしに、年老いて廻り見回すと、今の女ハ、自惚れ強く、男を馬鹿にし、顔がいい加減の癖に、淫門の乾く暇がない程だと、威張り腐って居るのが目につき、其れに反して、男共の堕しなさ、女を嬌がらせる術も知らず、手取り足取り、男根取られて、教えて貰はねば、満足に女も抱けぬ、
是では、女の好き勝手、仕放題の事されても文句がねへ、
儘贅は、腹が立っても己が物は不如意なれば、女の性質変える事叶わずと、せめて、子孫の中に、其の様な男子生ずるを祈願した、
天下の女共を掌握する程の色男こそ、女共を屈服させ、心優しい女達にする事が出来る、
一念発起した儘贅は、毎日、本朝一の色男と謂われた、在原業平の霊前に祈り、道鏡の社に詣でたり、儘贅の願いは、其の子には叶わず、やがて、其の孫の茎高に其の兆しが現れ、更に其の子、茎吉の代に為ると、其の一物は人に優れ、太く長く雁高で、其の上、女淫に這入ると、膨れる事十層倍、麩マラと称し、女を嬌喜させる事、此の上なき物と為った、
処が好事魔多しの喩え、茎吉を天晴れ天下一の色豪に仕様とて、
茎高が繁華の鎌倉え送った処、餓えた下女二人にしがみ付かれ、
腎虚に近い、腰抜け同様と為って戻って来た、
然し腰は立たないが、未だ陰茎は立つ茎吉は、近くのおなねと謂う娘を孕ませた、
おかねは何とか男子を産みたくて、土地神の色師権現に願をかけ、祈った処、在る夜の夢に、玉門に琳の珠が這入るのをみた、
そして、淫門護年、辰の元旦、玉の様な男子を産み落とした、
其の夜から、此の家の上に、陰陽和合の比翼星が淫々として光輝き始め奇跡を現す様に為った、
此の子供成長してから、モシ強淫の女に逢って腎虚の恐れ在る時、
必ず此の淫星顕れて、男根を助け相手を参らせると言うお告げがあった、
茎吉、大いに悦びて、此の子は色師権現の申し子に違いないと、色師丸と名付けた、
色師丸は成長するに従って、才知人に勝れ、美男という顔立ちではないけれど、愛嬌があり、特に女ハ色師丸を見ると、何と無く可愛らしく感じてしまう、艶相をしていた、
しかも一物は、子供乍らも秋の松茸の様な形をしており、成長してからの形がしのばれた、
やがて色師丸も八歳になり、近くの寺に読み書きの手習いに出掛ける様に為ったが、読み書きするより、女子に悪戯する事が多く、
前を捲くっては、ぼぼに墨を塗ったり、指でいじくり廻したり、
毛のないぼぼに毛を書いたりして、遂に寺から断られる始末、
その後、奉公に出されたが、此処でも色師丸は、傍若無人の有様、年に似合わず夜這いを仕掛け、女房娘の差別なく、不意に股へ手を入れて女淫に触り、下女が雪隠に行くのを見ると、其の隙間から覗き見したりする、
其の三 欠
そして、物差の平らな竹の棒の先端に、胡椒の粉を載せると、そっと障子の隙間から、部屋の中へ突き出した、
二人は何も気づかず、フゥフゥ、ハァハァ、ブスブスッと、淫液を女淫の淵に溢れ出させている、
丁度亭主が大腰遣って、引き抜き掛けた
瞬間、色師丸は、時を外さず、竹を返して、サネの淵、空割れの尻の割目などに胡椒を振掛けた、
胡椒の粉は、ぼぼ、男根の間は勿論、睾丸から尻迄パラパラと散乱する、
「アァモゥイヽ、息が切れそうだョ、ソコソコッアッモゥ、いくいく・・・」女房は、気がいく下地と見えて、夫をぐっと抱締め、下から持上げ、身をくねらせた、
其の拍子に胡椒の粉は、ぼぼにくっつき、淫水に混じり、にちゃにちゃと男根にもひりついて、ぼぼの奥にも入り込む、
「アッ、なんだか痛いよう」
「うむ、オレも、如何した事だ」
ぼぼも男根もぴりぴりしだした、
「アッ、いやッ、抜いて」よがっている処ではなかった、
亭主も既にぐんにゃりしている、
行灯の火を掻き立て、二人で見ると、濡れぼぼ、濡れ男根のぬら付く処に、ずるずると触る物が在った、
胡椒の粉と、淫水とが混じった有様は、漬松茸と赤貝の味噌和えの様な物、気持ち悪いし、ヒリつくし、二人共下女を呼ぶ訳にも往かず、お互いに紙で拭きあった、
しかし、其の物がなんなのか二人にハ分からない、
如何してこう為ったかも、分からない、
顔見合わせて、辺りを見回した、
色師丸は、其の余りの可笑しさに、思わず、ぷっと吹き出してしまった、
「だれだ・・・」其の声に気づいた亭主が、障子を開けると、色師丸が立っている、
こいつの仕業か、と直ぐに分かったけれど、大声あげて叱りつける事も出来ない、
何しろ叱っているのを、他の者に気づかれ、其の理由を訊かれでもしたら、説明の仕様がない、
仕方無く、ブツブツとぼやくのみで、其の夜は色師丸を部屋に帰したが、翌日直ぐに暇を出した、
兎も角、行く先々で、淫らな悪戯をし追い帰された処だけで、三十六軒、逃げ出したのを入れればどの位に成るだろう、両親も持余し気味だった、
此の上は、十分に厳しい処え頼もうと、「長秋」と謂う茶碗師の許に預けたが、此処も最初のうちは大人しく、陶器の仕事に精を出したけれど、馴れて来るに随って、また、女共に悪戯を仕掛け出した、
長秋は、一度や二度の悪戯は見逃したが、三度四度と重なると許す訳には往かず、懲らしめの為に仕事場へは入れず、子守を命じた、
色師丸は、子守をさせられても、悪びれる事もなく、逆に、近所の子守の乳母や下女等を集め、餓鬼大将と成り遊び廻る斗り、
此の時、色師丸十二歳になっていた、
何しろ、業平卿や道鏡が守護する奇童である、
既に一物は大人顔負けの大きさで、雁首は厳しく、上反りの立派な物、其の上に、処々方々で淫らな悪戯斗りして来たので、其の方の噺に詳しく、
忽ち乳母や下女達の人気者と成った、
中にハ、色師丸の話を聴いて、股座を濡らす者もいた、
色師丸は、取巻く女達の中で、他の子守よりも、眉目姿形の勝れた子守に目をつけ、何時かハ物にしたいと狙っていた、
そんな折、丁度他に誰も居ない、淋しい夕暮れ時に、彼女が子守をしている所に出会った、
是幸いと斗りに、遊びに事寄せ、人気のない処え誘い込むと、背負っていた子を、傍の井戸端に括り付け、隠れん坊仕様と云い乍ら、彼女を引寄せた、
「アッ、何をするの」と言うを構わず、無理無体に押倒し、力任せに内股を開いて、手を入れた、
子守娘は、十四五歳か、薄毛が少し生えており、むっくりとした、女淫の持主だった、
色師丸は、見た事は有っても、未だした事ハない、其れでも、いきり立ったマラに唾をどろりと塗付けるえと、ぼぼに押し込んだ、
「イヤッ、誰か来て・・・・」
痛さに堪らず叫ぶ女の口に、色師丸は片袖を被せ、構わず突き立てたが、何しろ大巨根である、半分程がやっと入った、
娘の方も、痛さが薄れると、気持ちが善く成って来たらしく、色師丸にしがみ付いて来た、
色師丸は、千摺よがりの味は知って居たけれど、
本物の女陰に入れたのは、初めての事、其の味のよさに、我を忘れ、ドッキンドッキン、ドクドクと、
忽ち気を遣ってしまった、
続け様に、子壺に向かって、熱い淫液を浴びせられ、娘の方も、芯から嬌がり出し、是亦ぬらぬらと淫水を洩らし出した、
一度出しても、其の勢いは未だある色師丸は、更に夢中に成って、入れた物をぐいぐいいと押し込み、引上げして抜差し始めた、
娘ハ堪らず、身を捩り、腰を持上げ、尻をくねらせて、嬌がりだすに、
「アレ、いヽョいヽョ、なんだか目が回る、ヒィヒィッ堪んない」
ところが二人の傍で、子供がヒィヒィ泣いていた、其の声を聞き付けたらしく、辺りの人が、何事かと戸を開け出した、
其の音に気付いた色師丸は、逸早く娘から飛退き、寝れたマラをぶら下げて、泣く子は其の儘逃げ出した、
そしてもう、主人の許へも、両親の処へも戻らず、何処へともなく、姿を消した、
あて此処に、蜂巣のお六と謂う、年の頃三十二、三、色白で肉ぽってりと艶かしく、美人と云う程では無いけれど、仇と粋とで練り上げられた、稀代の淫婦がいた、
此の女に、鳥渡流し目されれば、どんな男も蕩けてしまう、富貴の息子、商家の手代等、多くの男が此の女の玉門に、金銀を吸い取られ、家を失い、身をしくじる者、跡を絶たない有様だった、
何しろ、させ上手で、古今無双の上品の持主で、髪結床でも湯屋でも、噂の出ない日はなかった、
此の近辺の助平娘や浮気女房は、みんなお六の、風姿を真似、彼女の取巻きと成った、
蜂巣の異名は、彼女にアバタと謂う程ではないけれど、顔に少し疱瘡の跡が在る処から来ているとも、また、彼女に近寄ると、直ぐに交合させられ、後悔する処から来ているとも謂うが、定かではない、
此の夜もお六は、浮気女達四、五人連れて、神社参りの小息子や、揚弓凝りの手代などひっかけ、どっさりお金を巻揚げ様と、雪より白い素顔の上に、仙女香の薄化粧、洗い髪をくるくると手巻きにして、本玉の根差しのみと謂う婀娜な拵えをし、こっくりとした、縞柄の御召の半纏、長襟かけ、浅黄縮緬の下湯文字を引きずる様な裾に見せ掛け、鹿笛ならず、男を呼ぶ日和下駄の音高く、流し歩いていた、
そして、其の帰り道、柳の橋の途中まで来懸かった時、お六は、何かに足を取られて、躓いた、
「なんだい、危ねへねぇ」
立ち止まって見ると、薄汚い少年が、横に成っていた、色師丸である、
色師丸は、師匠の家を出てから、あちらこちらと、物乞いして歩き、野宿をしては旅をしていた、
丁度其の日は、日も暮れ、草臥れ果てて、橋の上に横に為ってしまったのだった、
しかし、蹴飛ばされて、眼を覚まし、見上げると、婀娜な姿の女連れである、
是はいい相手に出会ったと斗り、起き上がると、
「折角寝て居た処を汚い足で蹴飛ばし、臭いぼぼを嗅がせるとは、此の儘で済むと思ってるのか」と開き直った、
「開好記」欠
お六の息使いで、成功した事を悟ると、
「姐さん、どうせ食い足りねへでしょうが、我慢して、ひとつ抓まんで見てはどうです」
彼自身も隣の声に誘われて、股間の物はピンしゃんと、鈴口が今にも張り裂けん斗りに怒張していた、
お六の手を取って、火の如く熱気を孕んだ一物を握らせた、
お六は馬鹿らしいと思い乍らも、ひもじい時に不味いものなし、と色師丸のものを握って見て、呆れかへった、
少年とは思えぬ程の上反り雁高で、大人の中でも珍しい程節くれ立った上物である、
「体は未だ子供だけれど、何とマァ、お前の物は本物だ、こんな事を知っててれば、早くさせてみたのに」
嬉しく成って、〆たり緩めたり、いじくり廻し始めた、
色師丸は心得たりと斗りに、女の乳をグリグリと撫で廻し、口を寄せて吸い付き、右手を内股に入れて、毛際から空割れの辺りを、ぬらぬらと撫で降ろし、陰核の上下を指の腹で、何度も擦り揚げた、
お六は早くも、もじもじと身悶え始め、鼻息を乱しだした、
頃はよしと色師丸は、高々指と紅差し指との二本を揃えて、グイと奥に押し込み子壺の廻りを掻き回し、左右のべらべらを摘まみ、小さな指を小回りさせて、お尻の穴をも描き回し擦り立てた、
其の奇妙々の働きにお六は堪らず、しがみ付き、其の儘横に寝転んで、色師丸を上に載せ様とした、
色師丸は、直も落着いて、直ぐには入れず、片手に女の肩を抱き、片手は女陰玉門をいじりまわして、上下左右、ぐりぐりこすりたて、口を吸って乳を吸い、片時も攻める手を緩めなかった、
何時しかお六も正体なくなり、陰門の奥からぬらぬらと淫水を溢れさせた、
早く入れナョと身をもがく、
モゥ頃はよしと、色師丸は身体を起こして、
お六の足を左右の開き、怒り狂っている一物を、情け容赦なく、其の中心のズボッと突っ込み、ぐぐぐっと一気に根元まで、押し込んだ、
「あっ、ああ・・・」
お六のヨガル処をずずずっと引き抜くと、亀頭の裏で、サネの上下をチョコチョコチョコとこするなどして、
焦らし、やわやわとあしらい始める、
「アレ、何をするんだい、モゥ、いいから、ぐっと奥までいれておくれよ」
イヨイヨ堪らなく成って、お六は腰を持上げ、色師丸のものを求めた、
色師丸は心得たりと斗りに、覆い被さり、子壺目掛けて、大腰にスカリスカリ、スカスカと我武者羅の滅多突き、此処を先途と突きたてた、
「ああ、もう、そう、其処だよ、なんて子だろう、こんなに好い目に合せるなんて、ハァハァ、スゥスゥ、其処を、其の様にされると、もうもう、死にそうだよ、ああもっと、ソレ、今の所をグイグイと、ああ、いい、いいよ」
お六は鼻息荒く、啜りあげ、身を震わせて、、ウンウン、フウフウと腰を持上げる度に、玉門の奥から、だらだらと淫水を垂れ流す、
太股、陰嚢、尻こぶたもズルズル、ヌルヌルに為って来た、
色師丸は、猶も気強く突立て、片手で陰核の上っ面を擦り、乳に吸い付いて、乳首を咬んだ、女ハ更に正体を失くして、よがりだす、
此処で、色師丸は、実は先刻、お六の留守を狙って盗み出して置いた、
あの張形を、お六に気付かれぬ様に取り出し、他愛なくよがった時を、見計らって、ぬっと入れていた男根を引抜き、手早くずっぽりと被せ、其の儘再び、ズブズブと突っ込んだ、
そんな事と知らぬお六は、色師丸にしがみ付き、腰を振り廻して、大よがり、
あの薬精が、たちまち玉門中に広がる、
持前の大巨茎に、大まら形の名作物を、嵌めたのだから堪らない、
流石のお六も狂気の如く悶え、色師丸にしがみ付く、
「ああ、もう、どうしよう、わたしゃ死ぬよ、なんでこんなにいいのだろう、往き続けだよ、あッ、ああ、もう、堪らないッ、よっぽど、あの張形なんぞより、お前の方が・・・いいッ」
うわ言を喋り、よがり散して、髪は乱れ、湯文字布団も濡らし、前後も分からぬ大混乱、続けて、五つ六つ気を遣った様だった、
ぼうっとし、朦朧としているお六を視て、色師丸は、そろそろいいだろうと突っ込んでいた物を引抜いた、
お六はピクリとも動かない、よがり抜いて疲れ果ててしまったのだろう、
スヤスヤ快さそうな、寝息すらたてている、
「其れでは、此のヌラタマ、戴いてゆきますよ」
色師丸は、男根に被せていた物を取り外し、丁寧に拭いて、二重箱に納めた、
そして、目を覚ませば、どうせ取り戻されるに決まっているので、其の儘姿を消す事にした、
お六は、翌朝起きて、色師丸と共に、張形が消えてしまったのに気付いたが、張形よりも、
色師丸が消えた事の方が、よっぽど口惜しかった、
「蜂巣のお六」の巻 了
蜂巣のお六の家を飛び出した、色師丸は、稀代の淫婦を抱いてよがらせ、其の上に古今に二つとない張形を手に入れて、一段と自信をつけた、
とはいっても世間は広く、色師丸未だ年少の事でもあり、是より先、両親そして曾祖父の祈願を達成する為には、猶一層腕に磨きを掛けなければならない、
其処は才知に長けた色師丸、自信はあっても、奢る事なく、鎌倉の街目指していった、
途中で、色師丸が出産の折、取上げて呉れた婆に会い、既に五十に手が届く女だけれど、色師丸は、さねの皺延ばしに、己の手腕を試してみた、
見事によがらせ、色師丸も、淫水弾き出して満足したが、此の話、余り艶っぽくないので、先へ行く、
やがて、日数重ねて往くうちに、武蔵なる鎌倉の地に着いた、
色師丸は、其の八百八町を見て歩くうちに、噂に聞くよりも百倍も勝る賑わいに、吃驚した、
「男と生まれたからには、こうゆう処で名を挙げて、天下の通と呼ばれたい」
肝を潰したけれど、色師丸は、一層強く心に決め、何時かはきっと、満天下の女を靡かせて遣るんだ、と、唇を噛締めた、
何はさて置き、先ずは良い主人に仕える事から始めなければならない、
幸い、北山が谷の、艶交房と謂う道心者に、以前会った事があるので、訪ねていった、
そして、艶交房の口利きで、松の下の通路という通人の所に、丁稚がわりの小者として仕える事と成った、
通路は、廓中でも並ぶ者の無い程の、通人で、屋敷では昼となく夜となく、娼婦、芸者が寄り集い、好色話や手練手管の話、客の出入の噂、廓の中の極まり事等の話に花が咲いていた、
色師丸は、何を聞いても面白く、身の為に為る事斗りなので、此の様な主人の許に仕える事が出来た仕合せを悦んだ、
其の為に、何事にも骨惜しみする事なく、立働く事となり、其れがまた、通路の目に止める所なった、
通路は、色師丸を可愛がり、明け暮れ労り使い乍らも、風俗の事は許より、遊芸音曲の関する事一切を教えた、
元々才知に勝れて、一を聞いて十を知る、
色師丸の事、粋骨頂の色里で、通の通たる通路に教えられ、僅かの間に全ての事を心得た、
やがて、色師丸も十八と成ったので、元服させ、名をなんとつけようだと、通路が考えていた時、新造娼妓が
「色師丸は男前になったよ、当世一の色男だよ」と褒めそやすのを聞き、名を當一郎とした、そして着物は許より懐中物まで、当世流行物を揃えて贈った、
當一郎は大悦び、天晴好男子にならんとと勇みたった、もっとも、美男と謂う程ではない、
そうかといって醜男ともいえない、愛嬌ある顔と云ったらいいのだろう、
其の点だは当人も十分に心得ていて、才知を働かせ、人の気を惹きつける事に心掛けた、
ともあれ、通人の達人に手執り足取り教えられたのであるから、色の道については詳しく、また洒落を尽くす事に懸けても、飛び抜けた太鼓持も及ばず、茶利面の當一といえば、廓では知らぬ者のない程の男となった、
茶利と謂うのは、滑稽な、可笑しみのあると云う事であり、愛嬌にも通じる所があるのだろう、
さて、當一郎は、通路の許に来てからは、身を慎み、千摺りはしても、ぼぼ恋しさを、抑えてきたので、そろそろ、本物の味を味わいたくなってきた、
其の頃、通路の処え来る女の中で、川島屋の抱えのお市という芸者がいた、
お市は、年の頃二十四、五で、色白く、肉肥のぽってりとした女であり、音曲は常磐津の達人で、色に関する事に掛けても、並ぶ者なく、みんなから、姐さん姐さんと持て囃されるので、いよいよ自惚れ、人もなげな振る舞いをするので、嫌われていた、
當一郎も何時かは、ひと泡吹かせて遣ろうと、機会を狙っている者の一人だった、
當一郎が元服して、まだ間の無い頃、ふらりとお市が遣って来た、其の日通路は留守でまだ誰も遊びに来ていなかった、お市は、當一郎を見ると、髪から足元までじろりと見て、
「オヤ、色男になったねへ、此の廓じゃムリだけど、田舎じゃ光源氏様だよ、ほほほ、でも惜しい事に背が低い」と褒めるより、嘲笑うのを楽しむ様子、
「其れで、お前、もう幾らも水揚げしただろうねぇ」
當一郎は、腹が立ったが、そしらぬ顔で、
「いえ、まだ、そんな事は知りません」
「うそをお云いい、知らぬ分けがねへ」
「ほんとで御座います、わたしの様な田舎者に、如何して相手をして呉れる者が」
わざと、気真面目に答えた、お市は其れを聞くと、よい慰み者が出来たと身を摺り寄せる、
忽ち気の遠くなる程によがりだし、額に八の字の皺寄せ、鼻息荒く、ハァハァ、スゥスゥ
「ああ、どうした事・・・アハッ」
腰を振り出し、しゃくりだし、取乱しての大よがり、
蚯蚓千匹のぼぼの奥から吐淫が溢れ、竿から金玉に懸け、弥生の末の富士山の雪解けの様に、白くだらだらと流れ出し、當一郎もずっと千摺で済ませていたので、久振りの女陰は、快い事此の上もない、今ハもう、遠慮する事もなく、早腰にスカリスカリと突き上げた、
「ああ、いい、・・モゥ、どうも」
ドロドロ、ダラダラ、ドックドックと、男と女は一緒に気を遣った、
「全く油断のならねへ子だよ・・・こんなになってしまった」
余りの良さに、お市は呆然といs、ぐったりとして、直ぐには立上れなかった、
やっとの思いで起き上がると、にやにやしている當一郎の濡れた男根を丁寧に拭き自分のものを自分で始末する、
「お前に負けた事は、誰にもいわねへでおくれ・・・」
その後お市は、當一郎の前では、大きな顔をしなく為った斗りか、なにかと面倒もみてくれた。
「蚯蚓を大蛇に変えて」 了
「其の一」
當一郎が通路の許で、色道修業に励み、将来は天下取りの色男に成ろうと心掛けている頃、鎌倉で通客大尽と言われて居たのは、尾張町上総屋の信七で、上州衣の織問屋であり、上総一国で織だす衣類全てを一手に扱っていた、
年老いてからは、家業は倅の信次郎に渡し、小田町に隠居して、本妻妾と床遊びし乍ら、何不自由なく暮らす様になっていた、
此の倅の信次郎また、親にも勝る放蕩児であり、才知万人に秀れ、読み書き算盤はもとより、詩歌連俳句音曲まで、全てを心得ており、しかも美男で、玉茎は太く、粋で、貧相なところがなく、女好きのする風姿で、街中の女が慕い寄ると云う伊達男だった、
此の信次郎が十九の時、信七まだ先のある身であり乍ら、交合の遣り過ぎか、腎水は枯れ、重い病の床について、日ならずして、此の世を去った、
処が、親が亡くなって、まだ初七日が過ぎない内から、信次郎は、何を考えたのか、飯炊き女に夜這いをしかけ、隣の乳母を口説き、出入の按摩婆の六十近いぼぼをくじり、安物女を摘まみ食いするなど、手当たり次第に女であれば誰とでも、遣り捲りだした、
信次郎に仕える、平五郎、群六、佐久蔵などが、余りの所業に口々に意見をしたが、唯にこにこと笑う斗りで相手にしない、
「旦那様、一体如何した事なのです、遊里に行けば、一流の芸者でも向うから持ち掛け、街の女は選り取り見どりの美男子で、其の上お金持ち、貴方の名前を知らない娘は居ない位の身であり乍ら、泥ぼぼや夜鷹の類を抱いたり、浅ましい女を抱いて、うつつを抜かすとは、見っとも無いじゃ御座いませんか、どうぞ心を改めて、本当の色男に成って下さいまし」
平五郎は、泪を流して、信次郎の所業を諌めた、
うんそうかと、一時は平五郎の意見を入れて、遊里に行くが、何時の間にか、門付け女に金を与えて小料理屋に連れ込んで犯したり、酷い時は、アバタ顔の十二、三の小娘の新鉢割って、疵を負わせ、親に多額の薬代をねだられたりした、
ほとほと困り果てた平五郎は、其れでも意見をしない分けにわはいかず、丁度、先の主人の七七日が近く為っていたので、身持ち慎んで、亡父の追福を営む様にと、提案した。
「そうしよう、是から身を慎んで、追善供養をする」
信次郎は、素直に受け入れ、生前の亡父は大の女好き、供養も、尼僧が良かろうと、小僧達に、
「何処の尼僧でもいい、見掛け次第連れ帰り、奥の一間に泊めて置く様に」と命じた。
小僧達は其の日から、尼は許より、托鉢比丘や庵主尼、女僧と見れば供養の為と、連れ帰って来た、
四五日する内に其の数は三十人余となる、
誰もが初めは、仏前で、読経念仏を読誦するものと思って、此の家に留ったが、何の沙汰も無く、唯三度の食事は丁寧で、決して悪くは扱はないのだけれども、次第に薄気味悪く為ってきた。
「此の家の主人は、乱心者だという話だよ、今に、私達を嬲り殺すか、干蛸にでもするんじゃぁないのかね」と、とんでもない事を言い出す尼僧もいた、
「大変お待たせ致しました、本日が、七七日で御座いますで、どうぞ皆様、仏間の方に、お一人ずつ御越し下さい、主人信次郎が、お待ち申し上げて居りますので」
心配しだし、尻の落着かなく為って来た時、手代が入ってきた、
ほっとした尼僧達は、連れて来られた順に行く事に決めたが、先ず第一番目は、年の頃二十一、二だけれども、片頬に大痣のある尼だった、
尼は、仏間に向かい、そっと障子を開けて見て、吃驚した、
正面に極彩色の淫らな春画が懸けられており、側に、兜形、鎧形、輪の玉、肥後芋茎に至るまで、女悦の珍器が並べてあり、屏風を引廻して、ビロウドの夜着、錦の夜具、枕二つに延紙が用意され、部屋の中には、蘭麝の馨が満ち溢れている、
信次郎は御召縮緬の閨着の儘、布団の上に座っていて、其の傍らの机には、うず高く、百両包みが積み重ねてあり、恵交料と書いてあった、
尼が入って来ると、信次郎は、にっことして其の手をとり、引寄せた、
尼は胆を潰したが、側の金包みが目に入り、あれが懐中に一つ入るならと、力を抜いた、
しかも不思議に、蘭麝の馨を嗅いでいると、身が蕩ける様になって来た、
信次郎は、尼の股に手を入れ、ぼぼをソロソロいじりだした、
年はとってはいても、未だ新鉢で、口は小さく狭まっている、
十分に唾を塗って、其の入口に、雁高まらを宛がった、信次郎は、ずぶりと突き刺した、
「あっ・・・」と声を挙げたが、欲に引かれた尼は、我慢している内に、淫欲そそる蘭麝の香りと、信次郎の仕上手に、やがて鼻息荒く為り、ドクドクっと気を遣った、
信次郎は、女が往ったと見ると、玉茎を抜き紙で始末すて、金包みを与える、
続いて入って来たのは、三十四、五の尼僧で、色が黒く、見るからに剛淫そうな、感じだったが、彼女は廊下で待つ内、部屋の中のよがり声に、既に十分萌して、自分の指で女陰をいじり廻していた、
入ると同時に、信次郎の玉茎を捻くり廻し舌を出して舐めると、いきなり上に乗って茶臼の形と為った、
ズブズブズブと、滑りのある玉門は、簡単に玉茎を飲み込む、鼻息荒く、腰を使い、忽ち大声挙げてよがりだした、
「オオッ、是ハ是ハ・・・いい、モゥいくいくいくッ」
上で腰をブンブン振り回し、気を遣った途端に、まるで白酒を引っ繰り返した様に、ヌルヌルベタベタと、睾丸から尻こぶたまで、淫液を垂れ流した
其の上、彼女は抜こうとせずに、二番仕込み、陰核や子宮にぶつける様に、傍度大腰、ヅックヅックと上下動、
「もう、堪らない、アレアレ、マタ往く、いきますよ」
上向きに反りかえった、
続いて、三番、四番と、入れ替わり立ち代り、部屋に引き入れ、信次郎は、相手をした、
毛深、核長、茄子ぼぼ、巾着、蛸陰戸、上品、下品、異類、異形など様々にあり、下は十三、四から、上は六十有余の皺ぼぼまで、残る事なく遣り尽した、
そして、何れの尼僧にも、金包みを与えた、淫婦比丘は喜びに悦びを重ねた事になる、
信次郎は此の日、明け方まで懸かって、三十人余りを相手にした訳だが、最後の大年増の尼僧までは、一度も気を遣る事なく、相手に十分によがらせ、いかせたそして、止めに、大年増の中えダクダクダクと噴出した、
流石に疲れ、尼僧の全て帰らせると、其の儘ぐっすり眠り込む、
此の事を、後で知った平五郎は、此処無法の女陰狂いする様では、とても行く末大通人には為れないと、がっかりし、遂に病の床に臥してしまった、
「監助、私はもう永く無い命、呉々も旦那様の事を宜しく頼む、其れから是は遺言だが、私の最後の旦那様に対する意見だ、死んだら、是を渡してくれ」
平五郎は、息子の監助に、遺書を渡すと、其の儘目を閉じ、二度と開かなかった、
監助は、平五郎の野辺の送りを済ませると、相変わらず女陰狂いをしている信次郎に遺書を見せた。
信次郎は、平五郎の遺書を読む内に、はらはらと涙を落し、
「ああ、こんな事なら、平五郎にだけは、俺の本心を打明けて置くのだった」
と残念がった、
「俺が意見されても、放蕩無頼の安物買いをしたり、年も構わず女と見れば犯したのも、決して狂気乱心した訳ではない、何時かは必ず天下一の好色師通人となって見せる為だった」
「今、世間の女を見ると、何れの女も自惚れ強く、男を男と思わず、陥れ、腎虚にする者斗りだ、是等の女共を、全て俺に靡かせるには、あらゆる女を試し、交合の鍛錬をして、魔羅を鍛えて置かなければ為らない、、どんな相手にぶつかるか、分からないからな、其れから又、貴賎美醜を問わず女陰狂いする信次郎と、噂されれば、俺を陥れ様とする者も居なくなるだろう、其の油断を見透かして、淫婦どもを、意の儘に随わせ様と、とも考えたのだ」
初めて信次郎は本心を明らかにした、
此の事を聞いた監助をはじめとして、群六や佐久蔵等、信次郎に仕える、奉公人や、出入の男女は全て感心した、
「誠に、我等が主人こそ、天晴天下の色事師、通人中の通人に成る事間違いない、行末頼もしいお方である」と、期待する様になった、
信次郎は是からとは、平五郎の意見の儘に賤しい女ハ犯さず、専ら色道に励む様になった。
三十人余の・・・ 了
「通人達の玉茎比べ」の巻
(その一)
一方、當一郎は、通路の許で、更に色の道を究めて居たが、廓で、尾張町の上総屋信次郎の評判を訊くにつけ、自分の主人と頼むのは、此の人の他にないと、思う様になった、
将来、万婦を靡かせ、其の名を挙げる為には、何としても先ずは、大通家に身を寄せて、弁慶幇間になるのが早道である。
信次郎は、大金持ちであり、美男であり、粋な処は並ぶ者のない程で、上方では、兎も角も、今、鎌倉では、第一の通人といえるだろう、
其の上、仕え従う手代、幇間、送者に至る迄、通人を揃えているという噂である。
當一郎は、信次郎に出会い、其のお供にでも加えて欲しいもの、と機会を窺っていた、
そんな或る日、信次郎が隈喜山の別荘で、腎張玉茎比べをすると謂う噂を聞いた、
何しろ大通人の信次郎には、従う随員が多いので、中々会う訳にはいかず、そうかと云って、伝手がある訳でも無い為に、徒に日は過ぎていた。
當一郎は、こんな時こそ、なにかの機会が在るに違いないと考え、其の日、急いで別荘に向かった、
玉茎比べは、監助が言い出した事で、酒宴の最中の、色々と色話が出た時、
「男前より、金持ちより、玉茎味に惚れさせるのが一番、例えば業平の様な美男子でも、皮冠りの先細マラでは、一回で愛想を尽かされる、男は玉茎骨の達者なのが、肝腎な事、どうです、みんなで、相手を選ばず、女を侍らせ、数を続ける、玉茎比べをして見様ではありませんか」といった、
信次郎を始めとして、此の可笑しな趣向に反対する者はなく、早速実現させる事になったのである、
別荘には、玄人素人を問わず、淫乱女を、二十四、五人集めた、
景品としては、夫々に十両づつ与え、更に、第一の者と決まれば百両与える事に為っている、
狒々女、豪傑芸者、させ後家、助平娘、やけかかあ、好き女、剛淫下女など、集まった女達は、何れも腕に自信、いや、ぼぼに自信のある者揃いだった。
其処え信次郎以下、芝の群六、監助、佐久蔵、幇間医者の三毛田山三に堀舟太、出入衆では、冴田屋の手代喜代七、藤井肌衛門等の他、血気の若者が、酒気十分にドヤドヤと遣って来て、女達が先に、座敷座敷に屏風を立てた中へ入る。
続いて男ども、酒玉茎立てて、女の所え忍び込んだ、
まづ芝の群六、大座敷の屏風の中に入ると、二十四、五の色黒く肥え太った芸者熊吉が待っていた、
群六はいきなり、股を開かせると、節くれたった逸物を、つばもつけずに、女陰に宛がいぐぐッと突き出した、
受手が受手で仕手が仕手、大物を根元迄、押込んで、グイグイ腰を遣えば咥えた物を締め付ける、
其の隣では、金玉茎と呼ばれる剛毅の佐久蔵、廓中では一番の大穴と云われる、荒田屋のお鹿と謂う女郎と出会い、腹の上に抱き載せての茶臼に絡み、臍の上迄、雁先が届けと斗りに、ブスブスと持上げ突き立てた、
流石のお鹿も、佐久蔵の首にしがみ付き、尻を振るやら身悶えして、
「あれ、もう、いくいく、またいく」と叫び、淫水ヌルヌル垂れ流し、
「もう、死にそうだよ、あッ、そこ、もう、どうしょうッ、あッハッ、ダメッ!」とよがり散らして、正体もなく、今にも息が絶えそうな有様である。
監助は、十八、九の娘にぶつかり、ぼぼを先ず、指で十分にくじり立ててから、玉茎を望ませ、半分斗り入れて、二腰、三腰使い出す、
娘は巧みな監助の、指でのあしらいに、気が往った処え、大マラをヌルリと押込まれこすり出されて、堪らずに、淫水ダクダクと吐き出した、
ほんの短い時間で、三度も四度も続けて往かされると、白い眼を剥き出して、伸びてしまった。
続いては、三毛田山三と後家のお猪である、二人は、丸裸に為って抱き合った、
お猪は中々の強か者であり、山三に五、六度往かされたが、少しも弱った様子は見せず、逆に、山三の男根を握って、口を寄せ雁先をチョロチョロ舐めたり、ねぶったり、
山三は仰向けに為って、お猪のぼぼを、足の指でいじくり廻す、
そうして置いて今度は女をうつ伏せにし、後の方から、挿し込んだ、
「それ、いくぞ・・」と斗りに、大腰でブスブス抜差しすると、後家は、ハァハァ、フゥフゥとまさに猪が猛り狂った様な鼻息で、よがりだした、
其処で山三は、お猪を四つん這いにし、毛際を尻の穴にこすりつけ、滅多矢鱈突きに突きたてる、
「ああ、もう、是ハ是ハ・・・それ、いくいくいく・・・」
さしものお猪も堪らずに、ドックドックと夥しく淫水を洩らし、手足の力が抜けて、再びべたっとうつ伏せに為ってしまった。
兎も角、二階屋敷から、離れ迄、フンスゥ、ハァハァ、いくいくと、よがり声やら、ぼぼの音、ピチャピチャゴボゴボ、スッパスッパと口を吸う音、枕の軋みの騒がしいさ、譬え淫乱国の女郎屋でも、是ほどでは無いだろう。
男は、茎骨比べだから、頑張れるだけ頑張り、女ハ、悦ばされた上に、百両と云う金が入るのだから、欲と好きとが一緒に為って男を離さない、
今や、広い隈喜山の別荘の中は、淫水の磯臭い匂いに満ち溢れ、何もしなくても、淫らな気に為って来るような有様だった。