2004/1/31 2/2 2/5 2/6 投稿者・ritonjp

     春曙奇談錦木草紙 一

 恋せずはと詠まれし大宮人、玉の杯底なしと書れし文の言の葉、げにうべなるかな。
 此処に鎌倉なる由比ガ浜の辺近き所に萬屋亀エ門と云う有徳に暮らす者在りけり。
 是が妻はお鶴とて三十の上を一つ二つばかり越して、盛りの花は過ぎたれども中肉にて、生れ付き美しく、夫婦仲睦ましく、恵方参りや鎌倉山の花見、鴫立つ沢の夕涼み、芝居の変り目も連れ立ちて行くほど、仲の良き夫婦にて鴛鴦の如く片時も離れたる事なかりしかど子種のなきにや子の出来ざれば、お鶴は隣家なる松竹屋梅右衛門が子梅次郎と言う今年十五歳なるを、幼少の頃から抱かかえ、吾子の如く萬ず世話して育てしかば梅次郎も真の母より慕ふて「伯母さま伯母さま」と言えば「梅坊、梅坊」と可愛がり亭主に隠しても梅次郎に種々の物を買って遣り何ぞする故、四辺にては「定めし色であろふ」等と、専ら評判せり。
 梅次郎も年をとれば、最早女の味はどんな物やらと、仇心付、世間にては「万屋の女房と色だいろだ」といわるるを聞きて味に思いけるが、ある日ぶらりと遊びに行けば、折しもお鶴は継物をして、一人二階座敷の日向につくねんとして居たりし所え、
梅「伯母さんへ、伯父さんは何処え御出でだ」
鶴「ヲヤ、梅坊か、伯父さんは今日、諏訪様え行ったから、晩迄帰えるまいよ」
梅「そうかへ、そんなら何ぞ奢りな」
鶴「又、ねだり事を言うよ、お前の事では亭主に叱られるよ、
 其れだから近所辺りでは色だ何ぞと云うそうだよ、そう思うも無理でも無い、おいらは何時迄も童子だと思って梅坊や梅坊やと言って居るけれど、梅坊どころでもあるめへ、モウ毛が生えたろう」と言われて流石年がゆかねば顔を赤くして
梅「ヲヤ、伯母さんが又あんな事を」と言うに、
鶴「ホンニ、おいらも今朝ッから仕事して居たら、ほっとした、
 一杯呑もう」と近所の割烹亭へ誂えて遣り、摘み肴に鍋焼を取寄せ、火鉢に掛けて食い乍ら
鶴「サァ、おめえもひとつ呑みな」
梅「わたしは、酒は嫌、おまんまを食べたい、酒を呑むと直に顔が赤く為って内のおっかさんに叱られるから、よしましょう」
鶴「何のこったな、一杯や二杯呑んだとって、そんなに顔が赤く成るもんか。おいらの云う事はきかなくって、おっかさんの云う事をきくがいいのさ。身で無き物は骨膾とやら、おいらがこんなに可愛がっても、何にも成らなへ。他人程不味いものはねへ」
梅「何だな、伯母さん、そんな事をお言いだと気に罹るはな、
 そんならお前の云う事を効いて酒でも何でも食べるよ、
 サァおくれな」
鶴「イェイェ、モウお前さんにはお頼み申しません、
 今に内の旦那が帰って来ます」
梅「アレサ、どうぞ堪忍しておくなさいましよ、食べますから」
鶴「食べて貰わなくても、よいよ」
梅「エェ食べると云うに」と、無理に引寄せて呑めば、お鶴笑いながら
鶴「何もそんなに、おいらが機嫌をとらなくっても、善いじゃァねへか、何のこったな、おいらが遣る杯だから、嫌だのおうだの言うのだろうが、女郎買いに行って女郎が呑めと言ってみなせへ、嫌と言う者は無い。ホンニおめえも、女郎買いにでも行くがいい、十五、十六に成って女の味を知らねえと云って済むものか、この道ばかりは誰でも教えては無いけれども自然と覚えるものさ、今に嫁だも取って、そんな事いわれるものか、マァ第一おめえが知っても知らねいでも、子息が了見しねえ、おいらも十五六の時はそんな事言ってた者よ、ドレ嘘か本か見てやろう」
梅「アレサ、伯母さん何をおしだよ」
鶴「何もしねへはな、この子は馬鹿な、大きな声をするもんじゃァねへ」と無理矢理手を遣って、一物を捻り廻せば、むくむくとおったっつに吃驚し
鶴「ヲヤヲヤ、何時の間にこんなになったか、こんな良い道具を持って居なら、知らないもすさまじい」ト、色々に弄り廻はされ陽物たちまちどきどきとほこり、火の如く成るに、お鶴も元来淫婦なれば、早鼻息「スゥスゥ」としながら、余念もなく梅次郎が陽物を弄り回し、手を持ち添えて、吾が股えやれば、梅次郎も陰門を始めてくじる事なれば、こわごわ額際からそろそろと撫で回し、実頭に当たれば、お鶴小声にて、
鶴「それ、其処を摘む様にしてくんな。そうするとどんなにいい心持だかしれなねえよ。其れからもちっと下が肝心の穴サ。ぐっと指を入れて上の方をこする様にするといいよ、いいよ、いいよ。ソレソレそふよ、そふよ、もっときつくよきつくよ。
 其れからもっと奥へ届かせてみな。其の奥にぐりぐりするのがこつぼといふ物だおめえがなかなか女郎買いに行ったとて、女郎がこんなにさせる事じゃァねへ、アレサ、中へ指を入れて、じっとしていては、よくもなんともないよ今云ったとふり、いじくってくんなよ、ソレソレソレそふよそうよ」ト、尻をよじらせ、もじもじしながら、
鶴「年にいかねえ時分にゃァ、善くも何とも無くっても、訳も判らず水が出るが上水で何にも成らねへ。ヲヤヲヤくじっているうち和らかになったよ。アレサ、もっときつくよ。フゥフゥスゥスゥ」ト、口を寄せ、舌をいだして梅次郎が口を吸い、目、眉寄せたり広げたりのおおよがりになりて取乱せば、梅次郎も始めて女のよがると云うをききて面白く、中指をぼぼの中へ深く入れ外の指でチョイチョイとさねのあたりを撫で廻せば其の度々に
『スゥスゥフゥフゥ』ト、いひてよがるにぞ、今はたまりかね上にぐっと乗り懸かって、ぬらぬらと押込めば
『ハァはっと』としがみ付き
鶴「アレサ、そんなに急くと悪いわな静かにしなよ」と確りいだきつきあい
『スゥスゥフゥフゥ』と、持ち上げれば梅次郎も何だか知れねど乙な心持になるにぞ
梅「おばさん、乙な心持に成って胸がドキドキしますよ」
鶴「ウゥ、其れが気のいくのだよ。ソレソレおいらもいっそいいよぉいいよ、アレサアレサソレソレソレィクゥイクイク」と、肩へ食ひ付かぬ斗りによがるにぞ、梅次郎も生まれて初めて見る女の狂態ぶりに
梅「おばさん、そんなにいいものかへ。あたしも、ハァハァソレソレハァハァハァ」と目をねぶりいっかりと抱き付き「ホッ」と互いに一息つき
鶴「なんの事だな、おめえは知るの知らねへと云って、おいらをこんなによがらしてからに、エェ、いっそ憎らしい」ト、云いながら、口移しに茶を飲み合い
鶴「コレサ、必ず如才も有るめへが、人に是な事云いなさんな。互いに身詰まりだよおいらは如何成ってもいいが、おめえは未だ年若なもんだから」と、云いつつ帯を締めているうちにに、梅次郎は事足らぬ様な心持ち故
梅「伯母さん、モゥ、これっきりで、わたしに逢わぬ気かへ」
鶴「何を云う、是きり逢わない気なら、こんな事する物か。おめえの心次第で鬼にも蛇にも成るが、亭主の人もあれでひどく焼餅焼だから決して悟られなさんな。留守になれば、おめえと如何でもするから、早く帰んなせえ。そして又いい折にはおれが呼びにやるよ。コレサ此処き来なよ」ト傍へ引寄せて口と口、チュウチュウ
「エエェ憎らしい」トいだき締め
鶴「サァサァ人の怪しまれねえうち、帰んせえ、帰んなせえ」
梅「ヲヤ、そんなにわたしが邪魔なら、帰りましょうよ」と 拗ねられて
鶴「何の事だな。サァサァ、そんな気に罹る事云われると譬えどんな事起ればとて家に置かなくってはならねえ、モゥ一辺、おれが自由に」と、又もや股の手を差入れて一物を捻り回せばむくんくとおえたつに
鶴「嬉しい此の達者な事はソレソレ、そんならおいらも」と手を持ち添え、熱く成った頬を梅次郎が頬におっつけ乍ら、本手に組付き足を絡めて、持ち上げ持ち上げ。
「アレサ、モゥモゥ、ドウにも、ソレソレ奥を」と鼻息荒くしている所え、台所方より
「旦那様がお帰りで御座います」と云う声に、梅次郎びっくりして一物はグンニャリ、お鶴はやけくそに成って
鶴「旦那が帰ろうが鬼が来ようが、こうなっては構うものか」と、しがみ付いて夢中なって居る所え、亭主の亀右衛門が帰ってきた
亀「如何したのだ」
鶴「ヲヤ、お前さんは諏訪様え御出でなされたと思いましたに」
亀「イヤ、諏訪様え往こうと思ったが、連れが間違ったから帰って来たのよ。それを、何のこった、梅坊と二人で」
鶴「アィ、色をして居りましたよホホヽヽヽ」
亀「馬鹿も大概の云うがいい。それだから世間は何のかんのと云うは」
鶴「何と云われても、此の子の事は思い切れませぬ」と云うに、梅次郎心の中ににて。
 陽物事は思い切れぬが聴いて呆れると、そこそこにて立ち帰る。
      (此の子)と陽物(へのこ)は洒落
 一回の終

 第二回は、お鶴の行状を怪しんだ亀右衛門が、昼間かっら同衾を強要する話と、梅次郎の母お春が大病で看病に来た、叔母の娘お花と出来てしまう話

 第三回は、梅次郎とお花の駆落ち、お花が暮らしの為田舎芸者に、お花が村の口利き達三人に輪姦される話、以上中巻割愛

 第四回は、お鶴梅次郎との艶書が見つかり、離縁となり、実家に戻され母親お爪の計らいで、二ヶ月縛り十二両と云う破格支度金にて、「好田治部右衛門」囲い者に。
 かくて約束の日にも成りければ、早朝より治部右衛門の来るに、お鶴は、初めてその人品を観るに、年は五十位赤ら顔にて、眉毛は証文の一の字を見る様に太く、鼻先の尖りたるてい、お道具もさぞかしと思いやらるる有様
 お鶴心内には喜ばねど詮方なく、先ず酒肴を取寄せて、差しつ差されつ呑む内に、治部右衛門は頻りに床を急げば、お鶴は治部右衛門を二階え連れて上がり
鶴「サァサァ、ちっとお休みなさいまし」と言うに治部右衛門はに莞爾としながら
治「イヤモゥ最善より、休みとうて何処もかしこも、とんと木の様に相成っタジャァ」と、いだき付かんとすれば、
鶴「アレサ、せわしない」と顔横え向ければ
治「そう嫌ってか」
鶴「エエ、いっそ酔って、熱くてなりませんのさぁ」ト、自身に二布をも解き着物羽織りて横になれば、治部右衛門真裸になりへの子をしゃっきりおやし
「どうじゃ、どうじゃ」と、お鶴の手を持ち添えて、何やらを握らせれば、お鶴も元来大の助印、忽ち男の悪い事も構わず鼻息荒くする。
 お鶴は何しろ久々の男の肌ゆえ、淫情盛んにして、尻をモジモジさせるので、逆にわざと治部右衛門は落ち着いて、紙入の中から錫の曲げ物を取り出だし、何やら香気の高い練薬を手の平えあけ、緩々と溶きながら、直を乳を舐り口を吸い、十分に気を持たせるので、お鶴は最早我慢するどころではない、治部右衛門も一生に無き男泣きに
治「アアァ、ソレソレ、拙者もとんと相果てるようじゃ」ト、夢中に成りてよがるに、お鶴も面白く、侭に成って居れば、上がったり、降りたり、手伝いの無い屋根葺きの如く更に余念なかりけり。
 お鶴、治部右衛門の世話に為ったが、その余りのしつこさに呆れ果て破談に、紆余曲折の末、亀右衛門に詫びを入れ、元木に勝る裏木なしと、許され、梅治郎お花も若気の過ちと許され夫婦に為る、お鶴亀右衛門・梅次郎お花の改めての新枕は略

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