尊前集 竹枝詞 [索引] [書架]

 竹枝
唐・劉禹錫
白帝城頭春草生、
折鹽山下蜀江淸。
南人上來歌一曲、
北人莫上動鄕情。



白帝城頭春草生え、
折鹽山下蜀江淸し。
南人上うたひ來る歌一曲、
北人上おこし動かす莫なかれ鄕の情おもひを。

 竹枝
唐・劉禹錫
山桃紅花滿上頭、
蜀江春水拍山流。
花紅易衰似郞意、
水流無限似儂愁。



山桃の紅き花は上頭に滿ち、
蜀江の春水は山を拍ちて流る。
花の紅きは衰へ易きこと郞きみの意に似て、
水流の無限なるは儂が愁ひに似たり。

 竹枝
唐・劉禹錫
江上春來新雨晴、
瀼西春水縠紋生。
橋東橋西好楊柳、
人來人去唱歌行。



江上春來りて新雨晴れ、
瀼西の春水に縠紋生ず。
橋東橋西好き楊柳、
人來たり人去りて歌行を唱ふ。

 竹枝
唐・劉禹錫
日出三竿春霧消、
江頭蜀客駐蘭橈。
憑寄狂夫書一紙、
住在成都萬里橋。



日は三竿を出で春霧消え、
江頭の蜀客蘭橈を駐とどむ。
狂夫に憑りて寄す書ふみ一紙、
成都萬里橋に住みて在り。

 竹枝
唐・劉禹錫
兩岸山花似雪開、
家家春酒滿銀杯。
昭君坊中多女伴、
永安宮外踏靑來。



兩岸の山花雪の似ごとく開き、
家家春酒銀杯に滿つ。
昭君坊中女伴多く、
永安宮外に靑くさを踏みて來たる。

 竹枝
唐・劉禹錫
瞿塘嘈嘈十二灘、
人言道路古來難。
長恨人心不如水、
等閑平地起波瀾。



瞿塘嘈嘈さうさうたる十二灘、
人は言ふ道路古來難かたし。
とこしへに恨む人心水に如かず、
等閑ゆゑなく平地に波瀾を起こす。

 竹枝詞
唐・劉禹錫
巫峽蒼蒼煙雨時、
淸猿啼在最高枝。
箇裏愁人腸自斷、
由來不是此聲悲。



巫峽蒼蒼たり煙雨の時、
淸猿啼きて在るは最高の枝。
箇裏ここの愁人腸自ら斷つは、
由來は是れ此の聲の悲しきにあらず。

 竹枝
唐・劉禹錫
城西門前灧澦堆、
年年波浪不能摧。
懊惱人心不如石、
少時東去復西來。



城西門前の灧澦堆、
年年の波浪摧く能あたはず。
人心を懊惱さすは石に如しかず、
少時は東去し復た西來す。

 竹枝
唐・劉禹錫
楊柳靑靑江水平、
聞郞江上唱歌聲。
東邊日出西邊雨、
道是無晴却有晴。



楊柳靑靑として江水平く、
郞の江上に歌を唱ふ聲を聞く。
東邊日出でて西邊雨ふる、
道ふは是れ晴無きは却て晴有りと。

 竹枝詞
唐・劉禹錫
楚水巴山江雨多、
巴人能唱本鄕歌。
今朝北客思歸去、
回入紇那披綠羅。



楚水巴山は江雨多く、
巴人能く唱ふ本鄕の歌。
今朝北客歸去せんことを思ひ、
かへりて紇那に入らんとして綠羅を披まとふ。

 竹枝詞
唐・劉禹錫
山上層層桃李花、
雲間煙火是人家。
銀釧金釵來負水、
長刀短笠去燒畬。



山上層層たる桃李の花、
雲間の煙火は是れ人家。
銀釧金釵來りて水を負ひ、
長刀短笠燒畬に去く。

 竹枝
唐・白居易
瞿塘峽口水煙低、
白帝城頭月向西。
唱到竹枝聲咽處、
寒猿閑鳥一時啼。



瞿塘峽口水煙低く、
白帝城頭月西に向く。
唱ひ到る竹枝の聲咽ぶ處とき
寒猿閑鳥一時に啼く。

 竹枝
唐・白居易
竹枝苦怨怨何人、
夜静山空歇又聞。
蠻兒巴女齊聲唱、
愁殺江南病使君。



竹枝苦ひどく怨む何人なんぴとを怨むや、
夜静かに山空しくして歇みて又た聞こゆ。
蠻兒巴女聲を齊ひとしくして唱ふ、
江南に愁殺して使君を病ません。

 竹枝
唐・白居易
巴東船舫上巴西、
波面風生雨脚齊。
水蓼冷花紅簌簌、
江蓠濕葉碧凄凄。



巴東の船舫巴西に上り、
波面に風生じて雨脚齊ひとし。
水蓼花を冷して紅簌簌として、
江蓠葉を濕して碧凄凄たり。

 竹枝
唐・白居易
江畔誰家唱竹枝、
前聲斷咽後聲遲。
怪來調苦縁詞苦、
多是通州司馬詩。



江畔の誰が家ぞ竹枝を唱ふ、
前聲斷ち咽むせびて後聲遲し。
いぶかしみ來たれば調べの苦しきは詞の苦しきに縁る、
多くは是れ通州司馬の詩ならん。

 竹枝詞
唐・皇甫松
檳榔花發鷓鴣啼、
雄飛煙瘴雌亦飛。



檳榔花發きて鷓鴣啼き、
雄は煙瘴に飛びて雌亦た飛ぶ。

 竹枝詞
唐・皇甫松
木棉花盡茘枝垂、
千花萬花待郞歸。



木棉の花盡き茘枝垂れ、
千花萬花郞の歸るを待つ。

 竹枝詞
唐・皇甫松
芙蓉並蔕一心連、
花侵隔子眼應穿。



芙蓉蔕を並べて一心に連なり、
花は隔子を侵すを眼應まさに穿つべし。

 竹枝詞
唐・皇甫松
筵中蝋燭涙珠紅、
合歡桃核兩人同。



筵中蝋燭は涙珠紅く、
合歡よろこびの桃の核は兩人同じ。

 竹枝詞
唐・皇甫松
斜江風起動横波、
劈開蓮子苦心多。



斜めの江風起こりて横波を動おこし、
蓮の子を劈き開かば苦き心多し。

 竹枝詞
唐・皇甫松
山頭桃花谷底杏、
兩花窈窕遙相映。



山頭の桃花谷底の杏、
兩花窈窕として遙かに相ひ映ず。

 竹枝詞
唐五代・孫光憲
門前春水白蘋花、
岸上無人小艇斜。
商女經過江欲暮、
散抛殘食飼神鴉。



門前の春水白蘋の花、
岸上は無人にして小艇は斜す。
商女經過ぎて江暮れんと欲し、
殘食を散き抛て神鴉に飼ふ。

 竹枝詞
唐五代・孫光憲
亂繩千結絆人深、
越羅萬丈表長尋。
楊柳在身垂意緒、
藕花落盡見蓮心。



亂れし繩千結すれば人を絆むすぶこと深く、
越の羅萬丈なれど表おもての長たけは尋一ひろ
楊柳身に在りて意緒を垂らし、
藕花落り盡して蓮心見あらはる。

 竹枝詞
唐・顧况
帝子蒼梧不復歸、
洞庭葉下荊雲飛。
巴人夜唱竹枝後、
腸斷曉猿聲漸稀。



帝子蒼梧に復た歸らず、
洞庭に葉下ちて荊雲飛ぶ。
巴人夜竹枝を唱ひし後、
腸斷つ曉猿聲漸く稀なり。

[索引]
白帝城頭春草生山桃紅花滿上頭江上春來新雨晴
日出三竿春霧消兩岸山花似雪開瞿塘嘈嘈十二灘
巫峽蒼蒼煙雨時城西門前灧澦堆楊柳靑靑江水平
楚水巴山江雨多山上層層桃李花瞿塘峽口水煙低
竹枝苦怨怨何人巴東船舫上巴西江畔誰家唱竹枝
檳榔花發鷓鴣啼木棉花盡茘枝垂芙蓉並蔕一心蓮
筵中蝋燭涙珠紅斜江風起動横波山頭桃花谷底杏
門前春水白蘋花亂繩千結絆人深帝子蒼梧不復歸

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