氛氳たる蘭麝體は芳滑、 容色玉耀きて眉は月の如し、 珠佩びたる婐㛂金闕に戲たはむる。 金闕に戲れ、紫庭に遊び、 飛閣に舞ひ、長生を歌ふ。 |
妾乘油壁車、
郞乘靑驄馬。 何處結同心? 西陵松柏下。 |
妾わらはは油壁の車に乘り、
郞きみは靑驄の馬に乘る。 何處いづこにか同心を結ばん? 西陵の松柏の下もと。 |
綠草蔓つる絲の如く、 雜樹紅英發く。 無論君歸らずとも、 君歸るとも芳かをり已すでに歇やむ。 |
南山の一桂樹、 上に雙の鴛鴦有り。 千年長とこしなへに頸を交らし、 歡愛相ひ忘れず。 |
留別妻一首 蘇武
結髮爲夫婦、恩愛兩不疑。 歡娯在今夕、 燕婉及良時。 征夫懷往路、 起視夜何其。 參辰皆已沒、 去去從此辭。 行役在戰場、 相見未有期。 握手一長歎、 涙爲生別滋。 努力愛春華、 莫忘歡樂時。 生當復來歸、 死當長相思。 |
結髮夫婦と爲なり、 恩愛兩ふたつながら疑はず。 歡娯今夕に在り、 燕婉えんゑん良時に及ぶ。 征夫往路を懷おもひ、 起ちて夜の何其いかんを視みる。 參辰皆な已すでに沒す、 去り去りて此れ從より辭せん。 行役して戰場に在らば、 相ひ見ること未だ期有らず。 手を握り一たび長歎すれば、 涙は生別の爲に滋しげし。 努力して春華を愛し、 歡樂の時を忘るる莫なかれ。 生きては當まさに復また來きたり歸るべく、 死しては當まさに長とこしへに相ひ思ふべし。 |
別れ罷やみて花枝共には攀のぼらず、 別れの後書信相あひ關かかはらず。 行きし人を 衣帶の潮水暝よるに應まさに還るべし。 |
朝日綺錢を照らし、 光風紈羅を動かす。 巧笑蒨たる兩犀、 美目雙蛾揚る。 |
靑き荷はすは綠水を蓋おほひ、 芙蓉は紅鮮かに發ひらく。 下に根を并せたる藕れんこん有りて、 上に心を同じうせる蓮はちす生ず。 |
綺羅日々に帶を減じ、 桃李顏色無し。 君を思へど君未だ歸らず、 君來れども豈いづくんぞ相ひ識しらんや。 |
憐む可し誰たが家の婦をんなぞ、 流れに縁そひて素しろき足を洗ふ。 明月雲間に在り、 迢迢てうてうとして得可べからず。 |
夕殿珠簾を下し、 流螢飛びて復た息いこふ。 長夜羅衣を縫ひ、 君を思ふこと此こに何ぞ極きはまらん。 |
渠碗きょわん佳人を送り、 玉杯上客を邀むかふ。 車馬一たび東西せば、 別後今夕を思はん。 |
佳期期未歸、
望望下鳴機。 徘徊東陌上、 月出行人稀。 |
佳期期すれども未だ歸らず、
望望として鳴機を下くだる。 徘徊す東陌の上、 月出でて行人稀まれなり。 |
新たに齊の紈素を裂けば、 皎潔にして霜雪の如し。 裁ちて合歡の扇と爲せば、 團團として明月に似たり。 君が懷袖に出入し、 動搖すれば微風發す。 常に恐らくは秋節の至りて、 涼風炎熱を奪ひ。 篋笥の中に棄捐せられ、 恩情中道に絶えんことを。 |
藁砧今何いづくにか在る、 山上復また山有り。 何ぞ當まさに大刀の頭かしらなるべき、 破鏡天に飛び上らん。 |
白頭吟 漢・卓文君
皚如山上雪、皎若雲間月。 聞君有兩意、 故來相決絶。 今日斗酒會、 明旦溝水頭。 躞蹀御溝上、 溝水東西流。 淒淒復淒淒、 嫁娶不須啼。 願得一心人、 白頭不相離。 竹竿何嫋嫋、 魚尾何簁簁。 男兒重意氣、 何用錢刀爲。 |
皚がいたること山上の雪の如く、 皎けうたること雲間の月の若ごとし。 聞く君兩意有りと、 故ことさらに來たりて相あひ決絶す。 今日斗酒の會、 明旦溝水の頭ほとり。 御溝の上に躞蹀せふてふすれば、 溝水は東西に流る。 淒淒せいせいとして復また淒淒たり、 嫁娶かしゅに啼なくを須もちゐんや。 願はくば一心の人を得て、 白頭まで相あひ離れざらん。 竹竿何ぞ嫋嫋でうでうたる、 魚尾何ぞ簁簁ししたる。 男兒は意氣を重んず、 何ぞ錢刀を用ゐるを爲なさんや。 |
七哀詩 曹植
明月照高樓、流光正徘徊。 上有愁思婦、 悲歎有餘哀。 借問歎者誰、 言是客子妻。 君行踰十年、 孤妾常獨棲。 君若淸路塵、 妾若濁水泥。 浮沈各異勢、 會合何時諧。 願爲西南風、 長逝入君懷。 君懷良不開、 賤妾當何依。 |
明月高樓を照らし、 流光正に徘徊す。 上に愁思の婦有り、 悲歎して餘哀有り。 借問す歎ずる者は誰ぞと、 言ふ是これ客子の妻と。 君行きて十年を踰こえ、 孤妾こせふ常に獨ひとり棲すむ。 君は淸路の塵の若ごとく、 妾は濁水の泥の若ごとし。 浮沈各ゝおのおの勢を異ことにし、 會合何いづれの時にか諧かなはん。 願はくば西南の風と爲なり、 長逝して君が懷ふところに入らんことを。 君が懷ふところ良まことに開かずんば、 賤妾せんせふ當まさに何いづれにか依るべき。 |
碧玉破瓜の時 碧玉へきぎょく破瓜はくゎの時、 相あひ爲ために情じゃう顛倒てんたうす。 郎に感じて羞難しうなんせず、 身を迴めぐらして郎に就つきて抱いだかる。 |