3/29 3/30 3/31 投稿者・ritonjp

     「男壮里見八見傳」 巻之三

     第六回

「信乃、村雨を古雅に呈す 情漏閣の淫婦等一男を挑む」
 そもそも古雅の御所にハ後室於嬌の方、只管に淫欲を盛んになして、世に知られたる女悦の妙薬ハものかハ、稀代の蘭薬孫伸人の奇法、和気姓の良剤、丹家の秘方、全て嬌薬と名の付いたる品ハ、探り求めて集められしが、聞き伝う結城家に、往古一品の奇策あり、なずけて是村雨と謂う。
 此の薬を一度用いて、まじハりを為す時ハ、其の美快こと三年の間忘るヽことなく、男女共日毎に自然と快く、漏精して止時なけれバ、世に此の妙薬を結城三年の漏城とハ呼びなせり。
 されども此の村雨ハ、結城落城の節より世に絶えて、今何処にあるかを知る者更になかりしが、此度武蔵大塚の浪人犬塚信乃と謂える者、彼の村雨を伝来して、呈進なしたき由を訴えしかバ、於嬌の方の喜び大略ならず、直ちに信乃を召出され、つらつら是を見給うに、年頃漸く十八歳斗り、色いと白く美麗にして、是迄女子の姿にて、育ちし程の艶者なれバ、御前に並ぶ腰元達ハ、云うも今更なり。
 お次、お三の間の女中部屋がた衆に至る迄、看る者心動かさヾるハ一人もなかりしとぞ。
 於嬌の方ハ男振りより一物を、選び給う性質なれバ、先ず村雨の効能、且つ用いかたを問わせ給うに、犬塚是を承り、其の来歴を詳しく告げて、別に一通の能書を呈す。
 後室自ら此の能書を読み給うに、はや淫心の溢れかヽり、眼に泪を催して、頻りに情念の乱れけり。
 それ此の村雨ハ男女の淫水迸りて降り注ぐ事村雨の如く、また此の馨を鼻に嗅ぐ時ハ俄雨の降るに等しく其の席に春心発動なし、仇敵をも犯し犯さるヽ気になる和合の良剤なり。
 然りと謂えども、当座の交合にハ、用いる事勿れ、一度用いる時ハ、男女共死を恐れずして恋慕う故、中途に縁を切る事あれバ、恨む事甚だし。
 また真実に交合を為さんと思う時ハ、一粒を開中に入れて、線香を一本立て、終るを俟ちて交合るべし。
 其の線香の半分たつ頃より、女頻りにもがくとも決して取りかヽらず、唯陽物を長大に為して、ピクリピクリ脈を打たせ、態と女に見せて、折々玉門へ臨ませ、入れるかと思えバ後へ下がり、下がるかと思へバ、今度ハ一目散に突き入れる風情をなして猶入れず、玉門の蓋に成る様に為して、押付け此処にてズン〜ズン〜ト脈を打たせる事。
 やヽ暫く為る時ハ、女ハ既に気違いの如く乱れ騒ぐべし。
 然りと謂へども猶入れず、声を挙げて泣出す、時刻を測りて口を吸い、さねがしらの両方を指の腹にて撫で揚げ撫で揚げ為す事。
 されバ、油断なく頭を下げ玉門に指入れ序に後門にも唾にて濡らしたる指もいれなし、静かに舌にて実頭をねぶり廻すべし。
 指躍動して舌振るハし慰む、斯くの如く為す時ハ、いかなる慎ミ深き女も、恥かしき事打ち忘れ、淫水流れて大雨の一時に降りたる様に、夜具蒲団畳まで、濡れ通り、寝小用をせしかと思う程為るべけれバ、あらかじめ其の用心ある事肝要なり。
 是を半ばに読み給い、はや其座に絶へかねられ、於嬌の方ハ下女に伴なハれ、彼の信乃をも寝所へ召すべしとて、急ぎ帳台深く入り給いけるが、やがて犬塚も形を改め侍女に誘ハれて、閨中に至り看るに、待ち兼ね給う後室ハ、今年三十二才にして、色飽く迄白く、眉毛の跡、猶、青々として眼の内涼しく、程よく切りし、そぎ尼の黒髪乱れて顔に懸り、莞爾と笑ミを含みし其の美しさ、流石の信乃も恍惚として、酔いたる如く漸うに拝せバ、侍女ハ信乃の手を執り、錦の褥の上に押し遣り、早々次に退ぞけバ、後室ハ信乃をいだきよせ、ものもいハず、もがき給うを、此処ぞ一世の大事ぞと、心鎮め懐中より、彼の村雨を取いだし、後室の陰門へ塗り参らすれバ、こハそもいかに後室ハ
「アッ」ト一声苦しげに、叫び給うぞ怪しけれ。
 是ハ如何にとなれバ佐茂二郎、亀笹と図りて、密かに信乃の油断を見澄まし、薄荷練と摩り替へ置きたるを、信乃ハ夢にも知らずして、今此の処へ持ち来たり、此の禍いを引出せり。
 されども信乃ハ猶悟らず、後室に寄添んとするを、於嬌の方ハいよいよ苦しミ、開中腫上がりて痛み耐へ難けれバ、惚々としたる信乃をも今ハ面憎く、跳ね遁れて走りいで、
「腰元供ハおらざるか、あの男こそ敵方の間者にて在りけるぞ、ひっとらえて吟味せよ、トハ謂え一人の美少年、表役へ命ずるも如何なり、侍女のうちにて生捕るべし。其の褒美にハ生捕りし女へ信乃を遣ハして思いの儘によがらせん」と仰せを聞きて侍女等ハ、いと喜ばしく御請けなし、絡め執らん走せかヽるに、信乃ハ八方潜り抜け、間毎間毎を走りいで、情漏閣と名付けられたる淫楽亭の高殿へ漸うにして馳せ登れバ、腰元等も生捕りて抱かれ寝んと思い詰、数十人の美女、色を含ミ、恍惚として高殿へ、登り往くこそ楽しけれ。
 畢竟信乃が強淫の其の働きを知らんとならバ、二編を待ちて気を遣るべし。

男壮里見八見傳 巻之三 了

拾 遺
 種本、犬塚信乃と見へる好男子が濱路に戯れて居る。
男「コレサコレサ濱路さん、そんなに嫌がってくれることハめへ、これでも今日の芝居見物にお前を誘って、はかの者のこねへように、お前のうちでも案じないよふにするのハどのくらひ骨が折れたらふ」
女「ナニ、わたくしもお前さんをお慕い申して、少しも嫌とハ存じませんが、どふもこわくつて、そしてこヽのおうちでも何とか思やァしまひかと、それが気にかヽりますから」
男「ナニナニ、その気づかひハねへハナ。こヽのうちハ裏茶屋でハあるし、人ハ気ハつきハしないハな」ト押倒して割込むに、ぶるぶるふるへる可愛らしさ。
 白羽二重の如くすべすべと柔らかき腿を開かせれバ、まだやうやうにうすうすとひたい際に毛が生へたか生へぬといふ玉門。
 ミづべにのよふに少し色気あるをミれバ、男ハたまりかねて、へのこにつバをたつぷりとつけて、心をしづめてそろりそろりとあしらへバ、娘ハ顔を赤くして、スゥスゥスゥト息をころしいたりしが、年頃といひ、殊に惚れたる男、その嬉しさ云ハんかたなく、恥しきを忘れて息子にいだきついて、下より腰を持ち上げ持ちあげすれバ、こらへこらへし息子の一物、加減を忘れて根まで一度に押し込めバ、娘ハハット乗いだすを抱きすくめながら、
男「ヲヤ、痛かった、堪忍しな」トまた静かに腰つかひ、気長にそろそろ行なへバ、今ハまことに心よく、我を忘れて初音のよがり。
 息子も総身よりしぼる如くの淫水をいだし、
男「ヲヽモゥモゥいくよいくよ」
女「アレわちきも」
 ドクドクドクドクドク。      了

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