2004/3/27 3/27 投稿者・ritonjp

     「男壮里見八見傳 巻之二」

     第四回

 小夜更け渡りて物寂しく、往来も稀なる円塚山、此処に美麗の少年を率いたる、一人の武士
「是さ是さ濱次郎、是程迄に辛苦して、兄弟分に成ろう謂う、此の佐茂二郎を嫌うと云うハ恨ミだぜ」
濱「アアレマア無理な事斗り。私ハ於信乃さんと云う妹分が在りますのに、またお前さんと兄弟分に成りましてハ」
佐「ヲットヲット其れハ承知だ。其の於信乃とハ、今に夫婦に成るおめへ、男同士の色事ハ、女への義理の立たねへと云う別けも在るめへ」ト既に濱次郎を押倒し、女の本手にする如く仰向けにして乗り斯かる。
 是男色に事馴れたる、佐茂二郎にて在りける故なり。
 是ハさて置き此処にまた、若輩道人根龍とて有髪の導師在りけるが、彼何処より出たるかハ知らねども、其の男根の強くして、龍の如き勢い在れバ、根龍と自ら名乗り、よく男女の縁を占い、深く信心をなす時ハ、結び難き縁も結バしめ、叶い難き恋も叶えさす、殊に世継ぎを願う者あれバ、即座に子種をあたへらる。
 誠に稀なる神人為りとて、道徳を慕いけるが此頃円塚山の辺りに草庵を営み、衆生に腎元を補うの府を授け、子孫繁茂の加持を為すとぞ聞こえしが、貴となく賎となく、女子たる者ハ取乱して還らずと謂う事なし。
 今日ぞ当所結縁の終なりとて、百人の女を御し、百人目の娼妓の腹の上にて、走陽と云う病の如く、吐淫を迸りて止まらず、矯声ハァハァスゥスゥと、美快の中に遷化なしけれバ、道俗男女奇異なる事に思いしが、遺言なりと根龍を古井戸に投じつヽ、上に一束の茅を覆い、皆散り散りに去りにける。
 さて佐茂二郎ハ濱次郎の後門へ、仁王の腕に勝るべき、大雁高の一物を、無二無三に押付けしが、濱次郎ハさせじと争う裡、月の光りよく見れバ、濱次郎の前に男根なく、産毛に等しき毛薄々と生え、白練にて拵えたる饅頭を二つ合せし様の開形なりけれバ、佐二郎ハ大いに驚き、歓びて言いける。
佐「イヤこりゃァ不思議な事も在るものだ。変生女子の此姿、実をいハバ男色より、百倍勝る女との交合、幸い好六が頼みによって、於信乃が所持の嬌薬、村雨と謂う此の丸薬」
濱「ヱヽ此方がアノ村雨を」
佐「於信乃が古雅の御所へ差上げ、出世しようと云う噂、摩り替えてやった発声丹、アノ運尽しも今頃ハ途中で如何かしおったろう。うぬが常々恋しがったハ確か信乃ハ男だハへ、そうして見れば新鉢ハ信乃に割られてしっまたナ、ヱヽ業腹な、サァ佐茂二郎が甘露の味食べて見やれ」と濱次の玉門、既に首を押入れんとなしたる折から、古井戸より、顕ハれ伺う、根龍道人、手裏剣飛ばして佐茂二郎のへのこの只中縫通し、陰袋までも打ち込みたり。
「アッ」ト苦しむ佐茂二郎、濱次ハ嬉しく身を遁るヽ、所へ近付く根龍道人、肌ハ鼈甲の鎧を着し、白く晒せし肥後ずいきの綴合せし行衣を纏い、張形仕立の篭手脛当て、右手にハ惚線香に火を灯し、左手に輪の玉を握り、口に女悦丸を噛み溶き乍ら、濱次の傍に進みより、
根「如何にや濱次、其方ハ練馬の生まれにて、此の根龍とハ腹がハリの兄弟なり、我故あって汝が養母亀笹を庵にとぼせし時、其の来歴を聞き置きたり。幸なるかな予ねて聞く・蘭方秘方の嬌薬、村雨と謂う妙薬、今手に入るぞ有難し、是を持って鎌倉へ立越えて、亡主の仇たる、好町御前を妃殺し、練馬殿を腎虚させし恨みを晴らさんと思う為り。
 つらつら過ぎたる事を考えに、主君練馬殿、地黄も利かぬ陰虚となりしハ、大根の名所に育ちし故か、今更還らぬ事乍ら、いといと悔しき腎虚の最後、其方ハ男の姿にて、在るこそ願う所なれ、好町殿へ入込むにハ、屈強の事なれバ、我と共に鎌倉へ至るべし。
 左もなき時ハ大塚にて災いを蒙る、黒色の相表ハしたり。必ずしも違ハず、いざいざ伴い参れかし」と言うに濱次泪の眼元
濱「アィ行く事ハ行くけれど、未だ」
根「凝れハしたり差し合いな、そんなら佐茂にも行く所か」
濱「アレ兄さんの否な事ばっかり。未だと言うのハ於信乃さんが、未だ古雅とやらへ往せねバ其の村雨を少しも分けて」
根「イヤイヤ其れハ其方の勝手、父と主との腎虚の仇、好町御前をとぼせし上にて、信乃に返して遣ハす共、遅くハあらぬ此の村雨、其方ハ幼年の時故に知らねバ悔しと思ハずや、過つる交合元年淫乱に、天下一日とぼさざる事もなく、此処や彼処の腎張の、互いに威を振る其の中に、鎌倉殿の催促にて、諸国大淫を召し集め、挑ませられし長枕、褥合戦のいと激しき、其の交合の心地よさ、語って聴かせんよっく聴け」と既に古き事物語らんと為したる折しも、濱次が家の小者なりける作蔵が、木陰よりして忽然と、名に知られたる一物に、反りを打ってぞいでたりける。

男壮里見八見傳 巻之二 了


 (肥後ずいき)男性が陰茎に巻く性具)
 (張形)女性同士の性交に男役が用いた陰茎形の性具
 (惚線香)くゆらせて淫情を催させる淫薬
 (輪の玉)性交時に女性器に入れて快美感を与える金属の玉

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