2004/3/24 3/25 3/25 投稿者・ritonjp

     男壮里見八見傳巻之一(恋のやつふじ)

     第二回

「佐世姫富山に入りて八総と契りをなす」
 さても里見好実ハ夢に玉樟と契りを結ばんとなしける時、老臣が訴えを俄かに下知を伝えて助けんせられしに、老臣是れを争い諌め、終に死刑に行ハれしが、玉樟ハ好実の助けんと云いて助けざるを、大いに怨みて死にけるが、やがて畜生と性を換え、一旦好実物を思ハせ、また菩提心を起こしても淫乱の魂は離散して、八人の美女となり、八人の男子となり、同魂異体交合して淫楽を欲しい儘にする事とハなりぬ。
 かくて好実は暗妻の為に、城を囲まれ、士卒一粒の食もなく、既に死を待つの外なかりし時、術計尽きて、自ら誤り、八総と云う猛犬に戯れて、
「汝も主の難渋を知れりゃ、今若し敵将影面の首級をとり得て、諸卒を安堵なさしめバ、我が愛女佐世姫を与えなん如何に如何に」とのたまへバ、八総忽ち走り去り、やがて首級を執って、敵陣を乱走せしかバ、好実驚き悲しみ乍ら、詮方なけれバ姫君をバ、八総に賜りけれバ、犬ハ只管一向に歓びて、姫君を背に乗せ、安房国第一の高山、富山の奥へぞ分け入りぬ。
 是より好実は富山の麓に制札を立て国中に触れをなし、敢えて山路に入る事を留めらる。
 されば姫君ハ泣々も、法華経八部と料紙・硯を携えつゝ、八総に誘れ、深山の渓谷を渉り往き、さも綺麗なる岩窟在り。
 八総ハ此穴の裡に姫君を伴い下ろしけれバ、
姫君も詮方なく、埋もれたる落葉の、蒲団に等しき上に座し給い、やがて御経を取りいだし、岩の上に載せて讀誦し、若し八総が猥らがはしきに及びなバ直ちに刺し殺しして我も死なんと思い詰、懐剣を抜き傍に持ち給うに、八総ハ是を推して恐れツッ、左右なく逼りもせず、只姫君の御顔を眺め、余念なく身悶えして、吐淫を走らせける事日毎なり。
 また日々に木の実を啄み着たりて、姫君を養いけれるが、或る日近き山路に逍遥せられしに、一人の神童、牛に乗りて、瓢々然と笛を吹き鳴らし来たりて、佐世姫に向かい畜類の相在る事を説き、
「一度此の世にて其の因果を果し給ハねバ、来世も畜生道に堕し、永劫浮かぶ瀬在るべからず」と、呉々も進め
「悔しく思い給うとも、彼が情欲を遂げしめ給ハバ、行末永く里美家の幸を起こすべし。必ず必ず前因の業を果し給え」 と教えければ、姫君も漸くに悟り、父の為其の身を穢し、業を果さんと覚悟して岩穴に帰り給まえバ、八総はいで向かえ姫の裳裾に纏つハりて、嬉しげなれバ
佐「ノゥ八総よ、よっく聞けかし。人と畜生とまじハるべき道理なしと思いし故、是迄攣れなくしたれども、斯くまで慕う志の不憫なれば、今より汝の心に任せん。兎にも角にもせよかし」ト木の葉の上に仰向きて倒れ給う其の御姿、色ハ飽く迄白き御顔に、緑の黒髪ほつれかかり、白綾の小袖の衿にさらさらと成りたる風情、蜀江の錦の巻帯に浅黄綸子の湯文字を召したる、御股座を開かせ給うに、湯具のあハいより雪間をいずる若竹の、なよなよたるより猶柔らかき薄毛、数うる程見え、桃色のさねの美しきを惜しげもなく、八総の目先へ差いだし給いけるが、流石に深窓の内の錦の床におハせし身故、男の肌も知り給ハず、益してや此の犬斯くまで逸りおれバ、
「如何なる事をか為すらん」と、胸内騒ぎていハせしが、八総ハいと嬉しげに前足折て、姫を拝し身を振るハして高く吼え忽ち姿を隠しけるが、是即ち玉樟の淫心邪念の祟りにて、生まれいでたる犬なれば、元来好色艶容を宗としたれバ、好実・姫君に物思ハせんと犬にハなれど、今交合の期の臨んでハ、己が姿の愛なきを、我から厭うて業通の力を起こして、速やかに美少年とぞ変じける。
 姫ハ此時淫心頻りに兆して堪え難く、犬にも人にも厭いなくき、乱れ心に為りし所え、さも美しき色若衆と変じ
「八総なり」と申すにぞ、いよいよ浮かれて寄添い給へバ、八総ハ先ず姫君の、御股座へ顔を差入れ彼の麗しき御玉門を永き舌の先にて舐め廻し、次第に火の如く為る舌にて、さねがしらの左右を上の方へと舐め揚げ、舐め揚げ、舌先を折々玉門の縁より奥へと差入れて、いと温かなる息をこつぼを目当てに吹き懸けられる心地よさ。
 姫君ハ身を振るハし
「ノゥ八総よ、是ほど迄に好いものならバ、何故早くハして呉れぬ。アヽモゥモゥ気が遠くなる様なアレョァレョ」身を焦る。
 其の度毎に心水ドクドクドクと、湯文字へ伝って流れ落ち、八総ハスッパスッパと吸い乍ら、終に舌を永く出して、こつぼを絡み吸出す。
 其の心よさ、中々に、人間ならバ斯くの如く、妙なる事ハ為しえまじと思い給えバいと嬉しく、持ち上げ持ち上げし給うにぞ。
 八総も今ハ堪えかね、犬とハ云えど骨入りの馬よりも、太き真赤な得て物を玉門へ押し当て、ビクリビクリと脈を打たせ、入れそうにして入れざれバ、姫うえハ泣声に
「アレョアレョアヽモゥモゥどうもどうも」としがみ付く所を見澄まし八総ハ、彼の一物を可愛いらしき御玉門へヅブヅブヅブ。
 姫ハ今更正体なく
「アレアレ誠によい心地だよ、是が気の往くと謂うのかへヲヽいくよいくよいくよ」ト、しがみつ付いたる初音のよがり、果てしもあらず取乱し、人目なけれバ憚りなく、絶入る様と見えにける。

男壮里見八見傳 巻之一 了

第一回 第二回 第三回巻之二

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