川柳秘語とバレ句 その二 2004/9/20 投稿者・aosagi123

角細工女がすれば恋となり

二つ文字牛の角文字娘しり
 徒然草六二段 延政門院
「二つ文字(こ)、牛の角文字(い)、すぐな文字(し)、
 ゆがみ文字(く)、とぞ君は覚ゆる。」
 門院が幼い頃に父君に送った謎掛けの歌。
牛の角文字午の日から覚え 牛と初午
あ筆があたるとのの字やたら書き
けつをする分は構わぬ庚申(ひのえうま)

地紙売り芳町はあとなどと云い

【蛇足】陰間上がりが売り歩いたという。
 「陰間あがりだが、その後はとんと」の句意だ。
  後ろの御用を効かせた句だ。
おやこの里に裏門はありません
 吉原は一方口

御殿ほど後家は出ないと陰間云い


【蛇足】ここは、後家でも尻の方だ。
 「お座敷も祝儀もそして水気も少ない」。
 使ったことないからワカラン人が多いな。さもありなん。
臼の主減らぬ杵をば貸し惜しみ

茶臼ではなく白酒臼のよう

ほかの見る人居ずはと写し絵で勃やし

初回には器を貸すとおもうなり
【蛇足】後は借りるか一物を?味覚えて。

辺乃古を握って鰻を釣った夢

化け物で度々乳母はりくつする

頭から呑もうと乳母追っかける

昔々あったとさと乳母よがり

鷹揚なお子だと乳母は二番させ

おじさんを負かしたと乳母茶臼なり

子心に乳母が負けたと思ってる

毛牛蒡へ乳母摺り鉢をおつかぶせ

なに馬なものだとたわけ者がいい

細工は流々牛の角馬となり

向こう見ず飛ばせた駕篭が馬になり 付け馬

引き馬で大門を出るとんだ客

紙花を散らして今は屑拾い

梅干しも花ぞむかしを思い出し

仕会わせ嫁梅干しを桶につめ

賀の祝い提灯で搗く餅をやり

姑はぼしてさえあると静かなり

狸婆々養子を入れておっかぶせ

うらやんで爺ィを起こす姑婆々

【牛の角文字】先に出た「バレ句」蛇足に書いた。
 江戸の寺子屋で手習いを始めるのは、男女児とも八歳。
 入学は六月六日、師につかせれば万事さわりなしと言い、この
 日、式物は白扇一対とか銭一朱を包んで師に贈る習慣だった。

【後ろ】秘語では、裏門、交接、後家に云われている。

【後ろの家】後家ということ。

【臼】情事秘語では、女の腰の廻りの偉大なのを例えて云うが、
 陰名としては「いしき」「オイド」など。
 男の「杵」に対する名として、女陰を意味する。

【写し絵】昔、「うつし絵」と言ったのは幻燈のことで、
 構造も簡単なもの。

【鰻】うつわは容器のこと。秘語では女陰異名に用いる。

【乳母】「めのと」として既婚者であるところから、「後家」と同様に経験者として扱われ、使える娘の恋の相談相手、幼児の場合は子供を騙して男と逢い引きする場面が、柳句にはしばしば登場する。

【馬】この名は、様々な異名や秘語として使われる。
 二二もあるそうだ。「午」として初午(初潮)、
 経帯のお馬(手綱の意から)、巨根の馬(馬並み)、
 遊女の異名に馬というのは、夜毎に人を乗せて過ごす意。
 遊里の客引きの牛に対して付け馬のうま、
 芝居の大根役者の馬の足。

【梅干し婆々】老婆、姑などに云う。
 「提灯婆々に唐傘爺々」との秘語もある。
2004/9/20
【裏】遊里語では二回目を「裏」を返すなどという。新人登場の時に二、三回来れば裏を返したのだから常連さんだという。
 第一回目が「初回」、再度の登楼が「うら」、第三回目から
 「馴染」と言うのを使っている。秘語では、後庭華を云う俗称異名で、または、男色を意味する称となっている。
 「裏門」は「前門」に対する「後門」の名。
 その他「菊座」「釜の座」「切り口の牛蒡」などの称もあり、
 「後ろ」と云われることもある。

    うらの夜は四五寸近く来て座り
【蛇足】都々逸に
”宵にゃ横、夜中まともで明け方頃は、うしろからさす窓の月”
 との文句あり、

【うら門】秘語では後庭華の異名。「菊の座」「釜の座」「後門」などの類称があり、又「けつ」「けつもどき」「一の谷」「窓の月」などは後接にちなんだ名とされている。

    弘法は裏親鸞は表門
【蛇足】
 真言宗は僧の女色禁止、浄土真宗親鸞は勢至菩薩?のなりかわりのお告げで妻帯実践。

月の夜は釜を抜く気になる亭主

馬鹿らしうありんす手をばのけ

本尊は蓮華和尚は菊座なり

【うろこ】鱗形と言い三角の連続模様を云う。
 秘語では、要するに「三角」陰名を意味し、
 陰三角、陽三角の称がある。

立膝のとき三角の口をあき

上反りの辺乃古は尺八のように勃え

【上わ反り】エレクト充分な陽茎の称。
 女陰の上付と同様に上級の物とされている、
 「尺八反り」「てんこ反り」「胴返し」などの類称名がある。
2004/9/21
【鳴き女】好色旅枕に「鳴き女」というのがある。床にて嬌声を発する女のことで、この泣きは、秘語では「夜泣き」と言い、遊里の手管には「泣きを入れる」と言うのもある。

駕篭の鳥夜泣きをするので尚流行り

傾城が泣くのは内の首尾がよし

悪いくせ女房喜び泣きをする

姑が死んで夜な夜な嫁は泣き
2004/9/21
【上突き】御法に言う秘語。「右一左二上三下五」。
 深浅法の一種。

一ノ谷上を上をと官女泣き

蛇の入る穴の出口に龍のひげ

小娘を頭ばかりと口説くなり

切り見世は青大将の匂いがし

【絵島生島】正徳四年、江戸大奥の老女絵島が、山村座の俳優生島信五郎と密通した事件。呉服屋の長持ちに入って大奥の局へ忍んで行ったとか、饅頭のせいろうに隠れてかつぎ込ましたとか言われているので、それの掛けている句がある。

饅頭になるは作者も知らぬ知恵

蒸し暑うござりましたと信五郎

【越前】越前藩の槍の鞘袋。越前家の皮かむり槍と呼ばれた。
 皮かむりの陰名。包茎の異名で「皮冠り」「きぬかつぎ」
 「すっぽん(スッポンの顔と口から)」「すぼけ」などの類語がある。

越前は一本もない長局

越前は致しにくいと小間物屋

越前は一生おさな顔うせず

越中が外れてとなりの国を出し

越中は足らず越前余りあり

【得手】「得手吉」は好物、好きな人の意に用いる。
 秘語では男女陰の異名。

得手吉が出て割れになる足角力
得手吉をお乳母昼寝にしてやられ
泣き出され夫婦角力が割れになり
 赤子が泣く
置き炬燵蝦蟇とおろちのにらみ合い
2004/9/25
【鰓を抜く】
 魚を調理するとき、顎の下から臓物を抜き取ることで、
 秘語では探春の俗称異名。
山伏へ夜な夜な見舞う大天狗

    くっきりと襟足見せる蛇娘
【蛇足】蛇使いといって、蛇を扱ってみせる見せ物があったが、明治5年の太政官布告で禁止された。蛇は這うのに、誰にも足を見せないとの俗信があるが、蛇娘は美しく化粧した襟足を見せるといった句である。此も実は蛇使いが蛇を頭から口に入れたり、さては女蕨(じょけつ)に入れたりしたので禁止されてしまったわけで、句の襟足も額際と同じ意味となる。

【縁切り寺】鎌倉松ヶ岡に東慶寺という尼寺があって江戸時代には女から離婚したいという女が、非常手段としてこの寺に駆け込み事情を訴えて三年間ここで生活すれば、離婚が出来たという。川柳では「松ヶ岡」とだけいってこの駆け込み寺を表す場合もある。

    山伏の断食をする松ヶ岡
【蛇足】山伏は兜布をいただく女陰名。

    地女の年明けを待つ松ヶ岡
【蛇足】女郎の年季明けに見立てた句

【猿猴】経水時の異称。
 サルの尻は赤いという意から出た名という。
 「御えん」「おこう」と分けた擬人名異名もある。
 又、サルが手をつなぎ合わせて水面の月をとろうとするとの話から、隠語では手長の意味の称に用いられ、秘語では「猿降を渡す」と云えば探春のこと。

七日さえ休みやせぬと女房出る 七日は馬

    いかぬ筈下女は猿降大師なり
【蛇足】お馬だからお宮の大師に門から入っていかなかっただけだよ。

月に猿降汚いと下女思い
なぜでもと鳥居の外におえん待ち
おえんとおこう鳥居際に待ち
2004/9/26
【素股】元々の股。幼童の足を打ち違えて、内股に行った事に始まると「阿奈遠加志」にある。これはもと衆道の偽交法として起こったことも書かれている。遊里では、手管のわけとして、好まぬ客のあしらい法とし、その他、巨根への対処、差し合いの折りの技巧などに行われた。

    素股にて大松たけをのがれたり
 初な客に尻の後ろから手を回して男根をしごいて遂情させる手もあった。

【立て膝】裾ながの着物生活では、
 立ち居振る舞いの便宜もあり、
 また、商売女は此を艶姿として用いた。
 賭場では、女勝負師が特にこの姿を好み、
 勝負に勝つまじないだともされていた。

立て膝で文を書くのも姿なり
立て膝の時三角の口を開き
立て膝を立てていびつな奥の院
股座をぱっくり開けて此が勝ち
2004/9/26
【おいど】お居所。尻の女言葉。「いしき」「臼」も類語。

【大味】盛りを過ぎた平凡な味。
 秘語では、妙陰などの快味を減じた意に云う。

【お馬】経帯の俗称異名。

【おえん】経行時のこと。「おこう」に同じ。

【勃える】エレクトする。発起する。生じる。気ざす。
 「おやらかす」とも云う。

浅黄うらおいどをせせり叱られる
冷や飯とおえるに困る独り者
不死身の辺乃古してもしても勃え
生勃えの内は辺乃古も照りが出ず
かなしさは昔は帯へはさんだり
みねうちを臍へ喰わして叱られる
酒まらも程があるよと女房じれ

【大腰】御法の秘語。深浅法における一連の御法。
 「大越小腰」抽送の状況。

【お開帳】厨子を開いて本尊を一般に拝ませること。

開帳をうらから湯番拝んでる
人寄せの工夫は別な開帳師
2004/9/26
【置き字】捨て仮名。意味に関係のない余り字。
よしなよの上のよの字は下女置き字

    いつそとは口舌の中の置き字なり
【蛇足】「アレサもうどうしようのう、いつそどうなとしておくれ」
 などという痴話

【起き起き】寝起きと言うこと。起き際。起きたて。

寝起きから機嫌のいいのは辺乃古なり

【沖の石】濡れるとの枕詞。二乗院隠岐の歌に
 「わが袖は汐干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわく間もなし」

あたらしいうち女房は沖の石
あきかわきするより早く出合しい

【お客】女子経行の異称。来訪の意の俗称。

お客が帰ると直ぐに出す火消し壺
すっぽりとお客の後を嫁掃除
薄く見るくらいではする若いうち

【お具足】秘具の「鎧形」「兜形」を総称して「具足」と言った。
 また、「武具」とも言った。
 この秘具は女悦具と言われて男の方が用いるものである。
 張り形を二分したような兜形と胴形とである。
 兜形は頭部に冠せて用いる。

夜軍には小兵はよろいかぶとなり
男へは武具を商う小間物屋
また蛸にひつたくられる兜形

【奥の院】拝殿または本堂のほかに、さらに奥にある建物で、
 本尊秘仏を納めてあるところを奥の院という。
 転じて秘語では「本尊」と同じ女陰異名。痴語には
 「濡れ仏」「開帳」「内陣」「幕の内」「本舞台」などの異称もある。

本尊は濡れ仏なり奥の院
片膝を立てていびつな奥の院
後ろから拝むと広い奥の院
かみ居ます女郎の開の奥の院 
郡でも豊島と云えば広いなり
2004/9/27
【お黒もの】お歯黒の女房言葉。俗秘語では黒いものとの意にて、
 デルタの陰影を言う場合があり、また、乳の黒いのは子持ちを
 意味するので、そのバレにも言われた。宮中言葉では鍋のこと。
お黒ものつん出しお乳母乳をのませ
お黒ものつん出している寝ごい下女

【おけし】お罌粟頭のことだと「川柳辞彙」は説明している。
 上を残して廻り下を刈り込んだ頭髪で、
 童女がよく結う形である。

    女郎はおけし惣髪は地物なり
【蛇足】女郎の「刈り込み」に例えた句である。

売り物は草をむしって洗う鉢
花の里芥子から育つ女郎花

【おご】俗に「うご」とも言い、
 刺身のツマなどに用いる糸状暗緑色の海草である。
 「海髪(おご)」と書き、「おごのり」とも言う。秘語では、
 多毛陰の形容詞となり、転じて、又これは年増女を意味する名ともなっている。

    おご盛ったようになるまで縁遠さ
【蛇足】晩婚の現代では街中に溢れているか?

    松茸でおごと剥き身をかき回し
【蛇足】「おご」が年増女なら、「剥き身」貝の剥き身かな?と想像するが、裸身の意味もあるしね。どうも年増女に掛けているから、蛤よりも年少の女陰と言った意味だ。結局芋田楽だ。

    蛸と麩を出してもてなす出合い茶屋 麩は男

【お香箱】俗語では女児のもてあそぶ小箱にも言われ、
 必ずしも香入れとは限らない。
 秘語では「箱」の縁語として少女陰名となる。

またぐらの枕詞はお香箱
香箱に火の気とどかぬ置炬燵
瓜田より炬燵の足が疑わし
おさしみの前に土手をばちょっと撫で
母の目が皿おさしみもチト遠慮

【おこわ】普通の意味では「強飯(こわめし)」のことである。
 遊里語では上妓を「(よね)」、下等な妓を「麦飯」と言うから、
 その縁語といえる。寛延三年(一七四九)頃、江戸に
 「御赤飯組」が出没していたことが『妬婦伝』に見えるが、『世間見聞録』には
 ”大岡越前守工夫にて、密通の男への過怠金一枚出させしという。金一枚は小判七両二分になる”とあり、此は間男の罰金と言うわけで、ところがこれ以後かえって密通事件が多くなったと言われている。罰金覚悟の女房泥棒が流行ったわけだ。
 名判官も目論見違いだ。
 女が色仕掛けで男を誘い、濡れ場の現場に、女の亭主とか情夫が現れ「オレの女をどうする気だ」と脅し、結局は金品を強要する悪徒が現れた。コレラの徒党を「おこわ組」(おお怖わの略称)と言ったのである。この手の類には「美人局」「筒もたせ」と言う。

   道中の胡麻はお強にかけられる
【蛇足】享保元年(一七一六)江戸幕府は道中奉行に命じて街道筋の「雲助」や「ごまのはい」などの悪徒を捕らえさせたらしい。

【おさしみ】遊里語では「おさしみ」は接吻の異名。
 そして魚のお刺身は、かえって「相惚れ」と称した。
 接吻の異称には「決まり」「手付け」「口々」「呂」など様々あって、古く我が国では「口を吸う」と言っていた。
2004/9/28
【お香箱】追補。
 ネコが四つ足を折り畳んで座った様を「香箱を作る」と書いた。
 おもちゃの置物箱に似ていたのか、あるいは、そのほかにも秘義意味を含んでいたのか不詳だが、昔、彫り物の展覧競技会に現れたもので、足の膝の外側にネコの絵を彫っていたのがあって、
 膝を折って座ると、それが女根の図となったのがあったともいう。
飯炊きの通り名男女共に三

【おさん】下女の通称。
 飯炊き女を「おさん」下女を「権助」「三助」と俗称している。
 この「さん」は「炊爨」の「爨」で飯炊きの意味なのだ。「餐」は食事をとる方の意味が強いので敢えて難しい字としたよ。風呂屋の流しの男衆も「三助」と呼んだが、本当は「爨助」なのだ。
 しかし、一説には、光明皇后の千人風呂の故事において、
 皇后の助手として奉仕した女官が三人だったので、
 三人の助手、助力との意味から「三助」の名が出たとも言う。
 更には、ある殿の病気平癒を祈願した三人の侍が、
 後に忠誠を賞せられて三人助け合って尽くしたから「三助」の称を賜ったとも言われている。
 江戸の湯女禁止の制限令が出たときに三人まで置くことを許されたのも、此にちなんでのことだろうか。

三助とお三でろくなことはせず 三と六
三助とお三そいねのむつまじさ

【お辞儀】秘語では頭を下げる意で、陰萎の俗称である。
 陰萎には「ぐずろ兵衛」「象の鼻」の異名がある。
 老陰萎には「小田原提灯」の俗称。更に、「中なえ」
 「中折れ」「立ち消え」の秘語も多い。ある秘画の詞書きには
 ”いつもかどにて、おじぎをすれば、妾「先生ごえんりょのう、
 ずっとおくへおくへ」と云う”とあり、その他、俗謡で
 ”倅どこへ行く中折れかぶり、生まれ在所へご年頭”とあるのも、中折れのお辞儀を云った文句であろうか。

門口でお辞儀奥へと女房云い
合わぬ道具は門外で埒をあけ
たまさかの祭りで提灯役をなし
ぐずろ兵衛をからんで〆つける

【おしし】加賀の山中、山代温泉には古く「獅子」と称する私娼が居た。後には湯女の私娼にもこの名が称せられ、山中節には、
 ”鉄砲かついで来た山中で、ししも撃たずに帰るのか”との文句もある。平家の落ち武者が住み付いて、やがて生計に困り、
 その妻や娘が一反風呂敷の浅黄地に唐草模様の布をカツギのように被り、浴客の袖を引き、稼いだ。
 その姿があたかも獅子舞の姿に似ていたというので、この売女を「獅子」と異名したと言う。
 また、『川柳辞彙』には、肉ししは女陰の類称とある。
 「猪」も男陰異称にあり、もう一つの「シシ」は小便の俗称として
 「小便組」「手水組」というのもあった。
 それらを「おしし組」とも称した。

    新造は中折れがして持て余し

太神楽終うと獅子を〆殺し

    しし喰った酬いで惜しい袖を留め
【蛇足】娘時代の長袖を短い留め袖にするようになったのを
 ”しし喰った酬い”との俗諺にきかせた句である。

愛宕山昔は(しし)の出たところ 富士の巻き狩り

    富士の裾野で猪は生け捕られ 富士=女、猪=男

泣き組へ小便組がケチをつけ 寵愛争い
2004/9/30
【おしな】信濃者を言う女言葉。江戸時代には冬期になると、
 雪で働けなくなる国々から出稼ぎ者が出郷してきた。
 多くは下男として季節労働についたり、また「米搗き」に
 雇われたりしたが、川柳などに言う「おしな」は、
 特に大飯くらいの代名詞にされていた。
おしなやと呼んだを見れば男なり

    八兵衛は女おしなは男なり
【蛇足】八兵衛=房総地方の私娼の称。
 呼び出しの蜜娼であったらしい。
 四兵衛四兵衛(しべいしべい)と云うのから起こったと言うな。

名を聞けば八兵衛という女郎也
旅日記この八兵衛は駕籠屋かえ

【おしゃらく】おしゃれの女の意。
 旅籠の飯盛り女の類をさす売女のなである。

十二三おしゃらく豆に花が咲き

【お末】江戸城大奥の下級女中「おはした」ともいう

はしたない事をいうので御末也
辺乃古屋がまいりましたとはした云い
 小間物屋

【お茶】秘語の「茶」は、女陰名または交会の称として古く上方に行われ、それにちなむ類称縁語も少なくない。
 茶臼、茶壺、茶釜、茶入れ、おちゃっぴい、お茶碗などもある。
 茶柱が立ったから縁起がいいというのも、男の一物が立つとの意味だ。

寝そびれたお伽にお茶を召されたり

口切りは誰じゃとお茶に御戯れ

茶ばかりさまつと寝ようと新所帯

ちぢれてる程あじのよい茶のはむき

女房に茶臼ひかせりゃおっぱずし

茂林寺にあるのはとんだ茶釜なり

茶釜のそばに寄りたがる浅黄裏

茶の時に女房にじり上がり也
 茶室のにじり口

乳母が勝ったよと茶臼嬉しがり

おじさんを負かしたと乳母茶臼なり

さて次なる芸当は女房うえ

旅立ちは二度目の別れ笠でする

女天狗は寝呆けて鼻へおっかぶせ

毛牛蒡へ乳母摺り鉢をおっかぶせ

子心に乳母が負けたと思って居

しゃんと勃やしなと女房のりかかり

川柳蒼鷺 @ A B C D E F G H I J 179 瓜奴 紅梅 pinaillage2000 歴代川柳 愛-絆集 TOP頁