2004/9/6 投稿者・aosagi123

       幕末の川柳風狂句
嘉永六年(一八五三)ペリー来航 絵本「俳風可和家内喜」
              「柳多留末摘花余興 紅の花」出版か
安政元年(一八五四) 日米和親条約締結
安政二年(一八五五) 「燕斎叶の手記」 安政の大地震
安政五年(一八五八) 五代川柳没・六代川柳襲名
万延元年(一八六〇) 大老井伊直弼、水戸藩浪士に暗殺される。
明治元年(一八六八) 明治政府成立

   弐歩一本持参で這入るはだか婿
 「弐歩一本」は、睾丸二個と陰茎一本と言うことから男性器の異称。

   卵の肌を割ったので君がとけ
 「卵」「割る」「黄身」「とけ」の縁語仕立て。

      太棹の新揆皮の破れそう
 三味線も激しく演奏。太い一物で新鉢を。

   お祭りの跡おひねりの紙だらけ
 祭壇に御賽銭の紙包みが散らばる。本意は事後の紙。

   突き出した鑓先馬に辟易し
 勢い込んだが、経行中とは。

   むやむやを越えてぐっとの奥に壺
 出羽と陸奥の境にある「無也無也の関」女陰の別称。

   緋縅に鎧を染めるお役中
 甲冑尽くし。経行中の女。鎧は当て紙。深紅に染まる。

   初花に姫は折々下屋敷
 初潮で外出もママならず、下屋敷で蟄居。

   提灯の突張りになる山鯨
 提灯の張り材は鯨骨。陰萎の補強には猪肉。
 山鯨は猪肉の別称。

   赤貝は湯がき二度目の客へ出し
 切り店などの廻し床。

2004/9/6

   焙烙は船でも豆の用にたち
 「焙烙」素焼きの平たい土鍋。豆煎りにに使うが、
 ここでは女用の尿器。

   相合傘の道連れは濡れた同士

   新田を開発されてる村の嫁

   その当座朱にも交わる若夫婦
 取り組みは経行中。

   もう行くと涙を流す宿下がり

   草深い近所なめくじ這った跡

   明日は湯へ入られませよあれさまぁ
 経行中に実践。

   ひだるさを湯漬けでしのぐ奥勤め
 張形に湯を注入して独楽する御殿女中。

   太い後家七日も立たぬうちに泣き
 初七日も経たないのに。

   尻で書くのの字そこらが白うるし

   もう月のあがったも出る夜の君
 老齢の辻君。「京で辻君、大阪で惣嫁、
 江戸の夜鷹は吉田町」という。京都は鴨川橋辺の川原に小屋を
 造りムシロを敷いて戸口に立ち、客を待つ。
 大阪は玉造辺または長町に住む。大阪は小屋を造らず、
 諸川岸土蔵の間、あるいは材木の間に立たずみて客を待つ。

   @ 京は君嫁大阪江戸は鷹

   A 当百は総嫁仲間で浜小判
  当百は天保銭のこと、天保六年から使われた小判形真鍮銭。
 百文に通用させたが、一般にこの通貨は嫌われていた。
 どうやら百文に通用しない安物で、四角な穴があいている形が総嫁に似ているとの意らしい。
夜鷹→江戸の街娼。
 本所夜鷹の始まりは元禄十一年寅九月六日、数寄屋橋より出火し風により千住迄焼亡する。その焼け跡に小屋がけして、折節本所より夜に女来たりて小屋に泊まる。
 後年には本所の吉田町、吉岡町が夜鷹の巣窟のようになった。
 厚化粧をして、手ぬぐいを姉さんかぶりにし、ムシロなどを抱えて出かけていった。若いのもあれば、四十を越した女もあり、おしろいを濃く塗っているので宵闇には年齢も見分け難く作り声などしているが、
 「二十四になるは四六の割りあまし」などと言われている。
 客は中間小者などが多く、価は一交ちょんの間二四文だった。

   @ わっちらも武士づき合いと夜鷹云い

   A 脇差しを抜きなとよたか初会なり

   B 夜鷹の道中波銭の六文字
 四文銭六枚
 柳原土手を夜鷹が尻まで見えそうに裾をはしょって通るのを
 見て若者が「その姿ではさぞ仙人も落ちるだろう」といえば
 夜鷹振り向いて「ナニ、今日はまだ百人」

   覚悟のうしろ痛みいる新小姓
 衒小姓。「覚悟の前」を利かせる。

2004/9/7

   @ おまつりの前が太鼓のさわぎなり

   A 祭りの前気ばかりせき込む提灯屋

   B 人形の所作はお祭り前のこと

   C 山の神荒れてお祭り延びる也

   D お祭りが済んで鎮まる山の神

   E お祭りに泣くのは機嫌のよいのなり

   F ああいいの祭り氏子を増やす種

   G 賑やかさかんこのわたる御祭礼

   H 木遣りが聞こえてお祭りを子に見られ

   I 雑魚寝では氏子を増やす御ン祭り

   J 外科を祭りの形で呼びに行き

   K かくらんもどうか祭りのばち当たり

   L めいわくな顔は祭りで牛ばかり

   @ 神楽堂笛や太鼓で味を付け

   A 組み打ちに太鼓をたたく居候

   B たまさかの祭りで提灯役をなし

   C おさしみの前に土手をばちょっと撫で

   D つれだした相手にたたる山の神

   E 女房が泣くたびにいる福の神

   F あれをしてこれをさせてと大社

2004/9/7

   交代の勤番千住で続け玉
 非番の武士が、安価な岡場所で。

   小田原提灯急ぎの間に合わず

   蛤も味が出るのは月見過ぎ
 名月に蛤を供え物にする。本意は初花が済んだ娘

   もうよかろうと庚申の明けの鐘
 庚申の日は交合禁止

   @ 庚申はせざるを入れて四猿なり
  見ざる、云わざる、聞かざる

   A 庚申を嫁の聞くのは目立つなり

   B 今日は庚申だと姑いらぬ世話

   四海浪済むと枕を二つ出し
 婚礼の謡が済むと、いよいよ同衾

   間の悪さ花嫁その日ちょうど咲き
 婚礼の日に来潮。

   関守の非番女房に捲らせる
 男女改め仕事の関守が、非番の時には女房を

   好きは元より嫌でも女篇
 すべて女に関したことばかり。

   まだ恋はいろはのの字も書かぬ尻

   茶臼では男の方が廻す役

   鰻が効いて褌が裂けるよう

   意気なお刺身擂り芋を跡で出し
 オーラル

   夜角力に赤褌を嫁外し
 緋縮緬の腰巻き。角力は褌を締めるはずなのに。

   妻あらばと思い出しかきつばた
 「伊勢物語」東下りの段、
 『ら衣つつなれにしましあればるばるきにしびをしぞ思ふ』
 (在原業平)。かきつばたを頭に置いた折り句。一人寂しく手淫。

   はじき豆頃は芋茎の味知らず
 「芋茎」「随喜」の掛詞。
 まだ未成熟の頃は旨みを予想だにせず。

   腰巾着が下紐を解くに邪魔
 付き添いの下女などがいると、男との逢い引きもままならぬ。

   すは土俵入りふんどしは脇へ寄り
 いざというときに褌をずらして。

   抱いてよい頃桐の木も一抱え
 娘生誕に植えた桐の木も。

2004/9/7

   「俳風可和家内喜」

   海女の開水貝の気で亭主舐め
男「あわびを取るのは商売だから、喰い飽きをしているが、毎晩毎晩喰っても飽きねへのは、この生貝だ。どうも言へねへ、アアうめへ、それに年中海へ入っているから、○○に塩気があって、一入いいあんべだ」
女「マア、どうでもいいから、おまえのなまこのような、いぼいぼだらけな物で、はやくいかせてくんな」

   蛸壺を持参奇妙な須磨の嫁

   きくらげも銀杏もある旨い壺
 「きくらげ」「銀杏」は部位の巧妙な見立て、

   椎茸をあんかけにするうまい事
 「椎茸」は女の髷であるが、局所の暗示。

   むつまじく角突き合いの奥女中
 御殿女中が互いに入れ替わって張り形を使う。

   @ はした金で張形は買えぬなり

   A 張形がないと中条まだはやり

   B 張形の愚を聞いている君子後家

   C 張形は見るも嫌だとずるい奥

   D 牛若と名付けて局秘蔵する

   E 商売屋御影買ってくる

   お隣は地震こっちは神が鳴り
 遊郭の隣部屋同士。地震と雷。

2004/9/8

   間男は抜き身亭主は出刃を持ち
 「抜き身」「出刃」の取り合わせ。
 間男発覚は重ねて四つに斬られる。

   @ 間男をせぬを女房鼻にかけ

   A 間男をせぬは手前の妻ばかり

   B 留守中を知らぬが仏礼を云い

   C 入り婿と間男までに侮られ
  穴取られ

   D 怖い知恵間男をして縁を切り

   E 浪がり泣きすると間男してはなし

   びいどろが割れてどくどく白い水

   四つ目を合わせてよがる女悦丸

   お茶壺だ下に下にと女房うへ

   丑三つの頃によだれを流しあひ

2004/9/8

   「バレ」絵本「紅の花」

   門口に医者と親子が待っている

   初陣は鑓の深手をこらへかね
 新鉢の疼痛。

   湯汲み口からしなという身振り
 湯谷の洗い場の湯汲み口。
 前屈みになって湯を汲んでいる裸婦が見える。

   蛤に泡を吹かせるどら和尚

   和歌後家のぜんこんくどく人にさせ

   二人していくのの道で汗になり

2004/9/9

   しげしげと開を見られる絵師の妻

   四つ目屋の女房たびたび試される

   股ぐらでべろべろをするぼぼんのう

   掃き溜めを止木にして下女出合
 長屋の塵捨場の棚に掴まりながら、立位で取り組む。

   肥後芋茎解けて二見浦のよう

   どっちらのためになるのかりんの玉

2004/9/9

「雑俳吐溜抄」は、明治に入る六年前の文久二(1862)年に編まれている。

   松藻を分けて泥亀すっぽんは潜り込み
 茂みを押し分けて潜り込むというイメージ。

   いっそもふよい君が代の姫始め

   後架でせんずり下女とした心持ち 臭い中で

   太さが灰吹き唾を付けやっとはめ
 灰吹きの竹筒くらいの太さ。

   月番へ出仕へのこが赤坊主
 町内の詰め所で事務を執るのが月番。ここでは経行中に実践。

   有っても売れぬ四つ目屋のすぼけ形
 包茎の張形では。素呆け、生まれつきの頬かむり。

   @ 切見世は立消のする頬冠り

   A 越前は一生幼顔消えず
 越前→包茎・皮冠・きぬかつぎ・すっぽん・頬かむり・すぼけ

   B すっぽんの度々騙される拭い紙

   C ぐずろ兵衛婿の不足の起なり

   御菜にせかれ出合ぼぼ今いくよ
 御殿女中の使役男が御宰。
 男と会う瀬の御殿女中、門限に遅れるとせかされる。

   太さが当百で巾着開きしみ
 当百は小判形の銅銭。
 大きくて巾着財布にも入れにくいと言うイメージを借用。

   おッかァや御まんこするとしぬのかへ
 両親の房事の嬌声を耳にした幼児の質問。

   鶏頭の花月役の開の襞
 リアリズム。赤く重なり波打つ鶏頭の花弁。

   玉門の血に慌て襟の毛抜く
 不意の初花、鼻血止めにはぼんの窪の毛を抜くとよいというので。

   痔持の尻は芍薬の半びらき

   仰向いてぜんずり臍が(にわかみず)

   稚な顔うせずかわらけすぼけまら
 土器と包茎

   ビュウビュウと玉門へ響いた屁の谺

 「越前」→越前福井侯の槍には、クマの皮が鞘袋に用いられていて、行列には此を押し立てて歩いた
   @ 越前は一本もない長局

   A 越前はいたしにくいと小間物屋

   B 越前で嫁人知れぬ不楽しみ

   C 入り婿の越前肩身尚すぼけ

   D 越前は一生おさな顔失せず

   E 僧正は越前で猶殊勝なり

   F 越中が外れて隣の國を出し

   G いぼ付きは切らしましたと小間物屋

   H 入り婿と間男までにあなどられ

   I 無一物とは羅切かと馬鹿な僧

   J 越中は足らず越前余りあり

   K 越中を女房がすると事が欠け

2004/9/10

「新選狂句川柳五〇〇題」上中下巻(明治14-1881)

   濡れてから恋の思いは晴れるなり

   口閉じて目と目で恋の電信器

   村の恋折ふし麦を仮枕

   持ち上げるやう恋病の脈を打ち

   股ぐらの妬み胸ぐら取って言ふ

   腎助と助平いつも原告者
 色好みに限って密告する。

   お馬だと乗った亭主を跳ね付ける
 経行中だと、「馬」「跳ね付ける」は縁語。

   七日間トンタクよりも猶待たれ
 「ドンタク」は日曜日。月経が早く終わればよいと

   紅の花絶えず見る惣雪隠そうごうか
 共同トイレに落ちている経水の始末紙。

   据膳の御馳走いつもとろろなり
 女からの恋の誘惑はとろろ汁のよう。

   相模の夜這い饅頭を持ってくる
 好色な下女は、蒸したてを持参するよう。

   豆賊は亭主の留守に抜き身で来
 無褌のまま。

   雲となり雨となる時曇る声

   夏六は無理だ三度目で夜は白み
 「春三夏六秋一無冬」といふ。

   丸き世に楕円な穴を人が好き

   笑い声止むと苦しい息遣い

   川の字が崩れ蒲団に波が立ち

   居続けの客はしつづけ呑みつづけ

   百日の蝋ほど有りんすと燈ぼさせず
 百匁蝋燭ほどの太さなので拒絶される。

   三味線を枕はとんだいい調子

2004/9/11

   明治二一年の「新風狂句柳彦生栄」

   水揚げさせて新開を熟地にし

   あれさおよし血に交われば赤くなり

   五人がかりで着せたり脱がせたりし
 五本の指で皮つるみ。

   裏門の境を敲く供のきん
 会陰刺激する百叩き

   擂り粉木へ芥子を付ける寺小姓
 一物に黄色い付着物が付く。

   潤ひのある地は棹もゆるく入り

   妻は無し力む分身せがれが手にあまり

   糊を漉すようにぼっちゃり御簾を洩り
 枕紙の御簾紙も大量の放出で溢れる。

   すまたで大物潜らすも感心だ
 女郎の秘技。内ももを使う素股。

   わづか七日の休日にも無駄力み

   巾着と言う筈金まで括り込み

   死にますと断るやうに寿を縮め

   茶臼でおろす白酒はかたまらず

   生穴に入るにも死ぬ死ぬ往くと言い

   さあ事が済んだが始末紙がなし
 準備しないまま。抜くに抜かれず、せり上がり。

   寝入る子で川といふじがツの字形
 子はそのままで、夫婦が下半身だけを寄せる。

   死にますと言ふ間いきますと甦り

   両頭で死に身に試合ふ局部屋
 御殿女中が互型の張形を使って自慰。

   間夫にもやらずいきひすは口斗ばか
 女郎の遂情したふり。

   男女同兼陰間も男妾もし
 当時の新語、男女同権を掛ける。男娼を抱える女もいる。

川柳蒼鷺 @ A B C D E F G H I J 179 瓜奴 紅梅 pinaillage2000 歴代川柳 愛-絆集 TOP頁