pinaillage2000 (兵庫県神戸市)

    都に雨の降るごとく
都に雨が降るごとく
わが心にも涙ふる。
心の底ににじみいる
この侘しさは何ならむ。

大地に屋根に降りしきる
雨のひびきのしめやかさ。
うらさびわたる心には
おお 雨の音 雨の歌。

かなしみうれふるこの心
いはれもなくて涙ふる。
うらみの思あらばこそ。
ゆゑだもあらぬこのなげき。

恋も憎もあらずして
いかなるゆゑにわが心
かくも悩むか知らぬこそ
悩のうちのなやみなれ。
2004/11/16
 万葉集 柿本人麻呂
天離る夷の長道ゆ恋ひ来れば 明石の門より大和島見ゆ

橋立の倉椅川の石走はも 壮子時にわが渡りてし石走はも
入込みは ぬきみ はまぐり ごったなり

かの娘 来たので 湯屋が われるよう

猿猴に あきれて娘 湯を上がり

せんずりを かけと内儀は 湯屋で鳴り
2004/11/15
髪結床へ集まって噂話
「紺屋の娘は今年十九だが、さっぱり男っけがねえ。」
「あれア、男嫌いだね、小野小町だろう」
 これをきいた若い者、男の嫌いな女を、小野小町というのだと思い、いいことをきいた、誰かつかまえて自慢をしてやろう、友達をたづねて、
「この近所に男嫌いな女はいねえか」
「そりゃきいたことがねえが、かどの荒物屋の旦那は若いときから女嫌いで、いまだに一人だ」若い者、がっかりしたが、
「そいつア、小野道風だろう」
君は 朝 世を去り
日ぐれ 私の心はちぢに乱れる
どうして はるかなところへ
君は去ってしまったのか
マタイによる福音書
六章二八
 なぜ、衣服のことで思い悩むのか。
 野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。
 働きもせず、紡ぎもしない。しかし、言っておく。
 栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。
「下品な話」見自己責任 2004/11/13
今昔物語 角川文庫 90頁
 若き女が桑の木に登っていたら大蛇が木の下にきた。女が驚いて飛び降りたら蛇は女にまとい付きセックスをした。
 女は気絶した。女の両親は医者を呼んできた
 医者は粟の藁を三束焼き、その灰を湯に混ぜ三斗を煎じニ斗にし猪の毛十把を刻み混ぜる。
 この汁を女の陰部に入れる。這い出した蛇を打ち殺す。
 蛇の子も出てきたので殺す。女目覚める。
「我が心さらに物思えずして、夢を見るがが如くなむある」その後三年、この女蛇に嫁ぎて遂に死にける。

しろたへの 袖のわかれに露おちて身にしむ色の秋風ぞふく
憂きこと 2004/11/11 1277
憂きことを海月に語る海鼠かな 黒柳召波 「春泥句集」

うき我をさびしがらせよかんこどり 松尾芭蕉 「嵯峨日記」

淋しさの底ぬけて降るみぞれかな 内藤丈草 「丈草発句集」

枕よりあとより恋のせめくれば せむ方なみぞ床中にをる
 古今集 巻十九

春日野の若紫の摺り衣 しのぶの乱れかぎりしられず
 伊勢物語

奥山の岩に苔生し 畏けど 思ふこころをいかにかもせむ

奥山の岩本菅の 根深くも思ほゆるかも わが思妻は

膝に伏す玉の小琴の 事なくは いたくここだく われ恋ひめやも
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花桜の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそうれしけれ
       島崎藤村 第一詩集「若菜集」(明治三十年刊)

「人もなき国もあらぬか 我妹子と
たづさはり 行きてたぐひて居らむ」
 誰も居ないところに 貴女と手に手を取って 行って、ずっとよりそって いたいよ。

 大伴家持 万葉集巻四
恋しとよ君恋しとよゆかしとよ 逢はばや見ばや見えばや

良寛さんの言葉に
 災難に逢時節には、災難に逢がよく候。
 死ぬ時節には、死ぬがよく候。
  文政十一年(1828)十一月十二日
 melancholy ennui 2004/11/8 1274

憂鬱.メランコリー、
物憂い.アンニュイ、
詩情が流れている、
物憂さが心の中を流れ
憂鬱が包み込み
甘い霧が私を柔らかく撫ぜ
午後の秋の日は
物憂い憂鬱
幸せは老後は物憂い時を
憂鬱は歳を燻し銀の如く
額田王の天皇の、蒲生野に遊猟したまえし時、額田の王の作れる歌
あかねさす 紫野行き しめ野行き 野守は見ずや 君が袖振る

皇太子の答へたまへる御歌
むらさきの にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
    蛙の死

蛙が殺された、
子供がまるくなって手をあげた、
みんないっしょに、
かわゆらしい、
血だらけの手をあげた、
月が出た,
丘の上にひとがいる。
帽子の下に顔がある。

    東京へゆくな 2004/10/31 3621

ふるさとの悪霊どもの歯ぐきから
おれはみつけた 水仙いろした泥の都
波のようにやさしく奇怪な発音で
馬車を売ろう 杉を買おう 革命はこわい
・・・・・
・・・・・・
あさはこわれやすいがらすだから
東京へゆくな ふるさとを創れ
・・・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・

    異都憧憬 萩原朔太郎

ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもわむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。
川柳蒼鷺 @ A B C D E F G H I J 179 瓜奴 紅梅 pinaillage2000 歴代川柳 愛-絆集 TOP頁