漁 翁　　　　　　　　柳宗元

漁翁夜傍西巌宿　漁翁 夜 西巌に傍そうて宿す
暁汲清湘然楚竹　暁に清湘を汲んで楚竹を然たく
煙銷日出不見人　煙 銷きえ日出でて 人を見ず
欸乃一聲山水緑　欸乃あいだい一声 山水緑なり
廻看天際下中流　天際に廻看(かいかん)して中流を下れば
巌上無心雲相遂　巌上 無心に雲相遂おふ

　 移 居　　　　　　　陶潜

春秋多佳日　　春秋佳日多く
登高賦新詩　　高きに登りて新詩を賦す
過門更相呼　　門を過ぐれば更こもごも相呼び
有酒斟酌之　　有らば之れを斟酌す
農務各自帰　　農務には各自帰り
間暇輒相思　　間暇には輒すなわち相思う
相思則披衣　　相思えば則ち衣を披ひらき
言笑無厭時　　言笑げんしょう厭あく時無し
此理将不勝　　此の理 将はた勝らざらんや
無為忽去茲　　忽ち茲を去るを為す無かれ
衣食当須紀　　衣食当まさに須らく紀おさむべし
力耕不吾欺　　力耕吾を欺かず

　 京都東山　　　　　　徳富蘇峰

三十六峰雲漠漠　 三十六峰 雲漠漠
洛中洛外雨紛紛　 洛中洛外 雨紛紛
破登短褐来揮涙　 破登短褐 来って涙を揮ふ
秋冷殉難烈士墳　 秋は冷かなり 殉難烈士の墳