良寛歌集 戲 歌

  良寛におくる(以下四首自問自答)
 粥二合 業三合をまぜくはせ
五合庵にぞ 君は住むなり

  かへし
 自今以後 納所は君にまかすべし
二合三合の わけのよろしき

  又かへし
 君と我れ 僅の米ですんだらば
兩くはん坊と 人は言ふらん

 いざさらば 我れもこれより乞食せん
借宅庵に 君は御座あれ

  山田杜皐老の
 「初とれの鰯のやうな良法師
やれ來たといふ子等が聲々」といひしに
 大めしを 食うて眠りし報にや
いわしの身とぞ なりにけるかな

 岩室の酒禪君の許にまかりけるに酒ばかりすすめらるるを
 さけさけと 花にあるじを任せられ
今日もさけさけ 明日もさけさけ

 「秋の夜人々の蟲の音を聞かんとて出でたりけるに雨の降り來りければ良寛法師の庵に入りて かぼちやなど食べ物語したりける時讀み給ひけるとなん」
  百木園主人榮重記

 蟲の音も 今宵かぼちやとなりにけり
薯の鰻と なるもことわり

 「烏めが 生麩の桶へ飛びこんで
足の白さよ 足の白さよ」 三輪の内室

 雀ごが 人の軒ばにすみなれて
さえづる聲の そのかしましさ

 雁鴨は われを見捨てて去りにけり
豆腐に羽根の なきぞうれしき

 見ればをし およべば高しはこ柿を
たごめてたもれ 丈高の殿

 一度さへ やせたる殿を山蜘が
絲引きかけて 天へまひあがる

 大空の かほのごとある君なれば
來るとはすれど 目には見ずけり

 一度さへ 心にかかるとちうの町
双六碁盤 からりころり

 草むらの 螢とならば宵々に
黄金の水を 妹たまうてよ

 身がやけて 夜は螢とほとれども
晝は何とも ないとこそすれ
 我れだにもまだ食ひたらぬ白粥の
そこにも見ゆる影法師かな

 蚤虱 ねに鳴く秋の蟲ならば
我が懷は むさしののはら

 きぬぎぬの 東しらみにかくはしは
我がふる布の 虱なりけり

 理や 佛の種を茄子にかへば
其の色さへも 瑠璃にてあれば

 天竺の 涅槃の像と良寛と
枕ならべに 相寢たるかも

 極樂の 蓮の花の花びらを
我れに供養す 君が神通

 いざさらば はちすの上にうちのらん
よしや蛙と 人はいふとも

 山伏の 峰かけ衣何と染めん
ゆかたすそゆき 袖はくれなゐ

 良寛僧が 今朝のあさは菜もて
にぐる御姿 後の世まで殘らん

 良寛が 花持てにぐるお姿は
いつの世までも 殘りけるかな

 彌彦山 おろちが池のね藤こそ
越後でおひて 佐渡で花咲く

 今日の日の 黄金に勝る朝日樣
八重立つ雲は 別れて照らしやる

 朝霧に 乘り出す駒はこまも駒
あしげも駒に たづなゆらゆら

 夕立に 振り込められし腐れ儒者
ひたる君子と 誰れか言ふらん

 大方の 世をむつまじくわたりなば
十に一つも 不足なからん

 小正月 いはふ小松の七五三
丑につけこむ 十分の福

 うちはとて あまり丸きは見よからず
扇のかどを 少し加へて


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