わが心は侘びしくも軽く わが悲しみは明るい 君が面影にあふれる このわが悲しみ
ただひとり ただひとり君の面影に わが愁いを乱すもの 今は絶えてなく
心はまた恋に燃える 恋しらぬ稚なごごろの われならぬ身に
大木惇夫
朝かぜにこほろぎなけば ふるさとの水晶山も むらさきに冴えたらむ
紫蘇むしる母の手も 朝かぜに白からむ
竹内てるよ
生まれて何も知らぬ 吾子の頬に 母よ絶望の涙をおとすな
その頬は赤く小さく 今はただ一つの巴旦杏(はたんきょう)にすぎなくとも いつ人類のための戦ひに 燃えて輝かないと いふことがあらう
生まれて何も知らぬ 吾子の頬に 母よ 悲しみの涙をおとすな
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