2003/12/23 投稿者:kotodamakanashi 戻る
 途中下車 (歌)山川 豊

しんしんと… ただしんしんと
降り積もる 雪に
酔い覚めを… ただ酔い覚めを
あいつを忘れるための酒

 あなたの寝息を耳元で聞く。
 あなた、湯船にお湯が溢れる頃よ。まるで川の瀬音のようね。
 でも私が動けばあなたを起こしてしまう。
 じっとこのまま腕の中。あなたの寝息と水の音。

年上と ジャノ目傘 過去持つ女の話と
安宿と 波の音 別れ泪と窓の雪

 いつもはキスで私を溶かし、たくさん焦らして熱く貫く。
 今日のあなたは違ってた。ドアの内鍵をカチャリとロックして、
 そのまま私をベッドに倒す。
 あなたは服を脱ぐ暇さえ与えてくれない。

 「きょうは何よりも早く欲しかったんだよ」 嬉しい。

からころと… ただからころと
胸が泣く 夜は
思いだす… ただ思いだす
二人で飲んでた頃の事

 バスルームであなたが呼んでいる。
 もっと余韻にひたっていたくて、首にしがみついて離さなかった。
 でもとうとう笑ってすり抜けていった。「殺されるよ」

 一眠りして目覚めたさっきのあなたは、
 嘗てないほど全身が燃えていた。
 熱い身体がすべての思考を撥ね退けて迫ってくる。
 私を情念で突き刺して、
 永遠にこのベッドに縛り付けておこうとするみたいに。
 私とベッドは一緒にあえぐ。
 喘いで喘いで歓喜の中で揺れて捩れる。

振り返る… ただ振り返る
逢いたさに 背中
すぎ去った… ただすぎ去った
お前を忘れるための酒
雪の中 朝待たず 便せん書いた置き手紙
枕元 水差しと 忘れていったのか手鏡
雪の音 聞こえるか どこへも行くなと聞こえるか

 あなたはさっき、こう言った。
 「ここを他の誰にも見せないでくれ」
 そうね、私のここはあなたのもの。これから先も、ずっと。

忘れない 忘れない 男は飲むほど忘れない
男は飲むほど忘れない