このページは龍さんの川柳、俳句、短歌の同人誌入選作品を紹介するページです。
1.同人誌入選作(その1)
障子貼り終えて澄みたる空気かな」
「選評」
古い紙をはがして洗った障子に、新しい紙を貼る。「障子貼る」は冬を迎える仕度の一つで、秋の季語です。
貼り終えた障子を入れると真っ白な紙の清浄さとともに、部屋の空気までが澄みわたっているように感じられたのです。
2.同人誌入選作(その2)
鬼は外見合う夫婦の目が笑う」
「総評の中の一部」
(前略)川柳のユ−モアは「穿うがち」であって駄洒落ではありません。
その点からも、前回につづき秀吟の三句には脱帽しました。
とくに、齋藤龍男氏の穿ちの利いたユ−モア句は、後世に残したい一句です。(以下略)
「選者評」
面白い句だ。「鬼は外」と叫びながら夫婦が顔を見つめ合う。
もしかして妻は俺に出て行けと言っているのだろうか、夫の声は私に出て行けと叫んでいるのかも・・・。
お互いがお互いを鬼に見立てているのが面白い。
「目が笑う」は、お互いの本音ともとれるし、睦ましい夫婦のいつものやり取りの眼差しともとれるが、後者であれば、この穿ちは生きない。駄洒落から脱皮した、稀に見る本格派のユ−モア句です。
俳句、短歌、川柳、都々逸の同人雑誌「樂府」に7月に応募し9月号に掲載
(154首のうちでTOP賞を獲得。)
ねぶた囃子を
遠くに聞いて
夏が行くねと
蚊帳の中
齋藤龍男 作
|
|
|
選者評:艶っぽいが下卑げびていない。青森ねぶたの夜空を焦がす巨大な山車灯篭は出陣の勇ましさ。
大型ねぶたの笛や太鼓に加えて手振りの鉦かねと「ラッセ−、ラッセ−」のかけ声で乱舞する跳ね人の列を頭に描きながら、毎年のことなのできょうは早寝と蚊帳に入った二人。夏本番は夏の終わり。
決して遠くない、通り一つだけ奥まったところからの描写がにくい。
賞祝い寸景
龍さんの快挙を耳にした同期生有志、これを肴に1杯やろうと8月30日(土)
所沢に会して祝賀会を挙行、次はそのシーン
短歌優秀賞入選作品
1.雑詠(自由に作句):優秀作
(1)「奥様は」と勧誘員の電話の声「逃げられました」と言えば声なし
選評:愉快な一首という言葉に尽きるであろう。こういう電話は実にうるさい。
私などは「奥様をお願いします」と電話に言われて「もうあの世に行きました」と答えるとガチャンである。
(2)建て売りの波に押さるるわが町は個性の持たぬ町となりゆく
選評:戦後も六十年、東京オリンピック前後に次ぎ近年も都市の再開発が盛ん。
狭い土地に驚くばかりの工夫を凝らして沢山の家が建てられる。
大体のところ似たような家ばかりである。
そんな家並みの風景を見ながら作者は個性の無さを嘆いているのだ。
筆者なども藁屋根を旅先で見かけると感動する一人である。
(3)にぎやかな田植ゑの風情今は消え遠くに一つ田植機の這ふ
選評:農耕民族としてたいせつに守り続けてき田植。
早乙女姿で田植唄を歌いながら、とまではゆかなくても助け合って賑やかに行われてきた農村の風物詩だった。
それが今はそっかり機械化してしまって広い田圃に「這ふ」ように見えるばかりだ、と対照的に歌われそこに寂しさが滲んでいる。
(4)廃校の草むらに立つ碑を読めば昔覚えし童歌なり
選評:秋のもの寂しい情感にに包み込まれる。廃校になったのは作者が通った小学校だろうか。
夏草の生い茂る中に立つ碑をみつけて近づいてゆくとそれは昔みんなで声を合わせて歌ったわらべ歌だった。
昔から子供たちに歌われてきた歌が「童歌」だが、どの歌だったのだろう。
思わず懐かしさに口ずさんだことだろう。
2.題詠(決められた題で作句、選評は付かず):優秀作
(1) 苦労して育てた娘すんなりと渡してなるか目の前の奴 (題:苦)
(2)心持ち大きく切らるる羊羹を取ってにんまり孫の微笑む (題:切)
(3)「お迎えに来ました」と言ふ若者に「まだ早いぞ」と老師笑へり (題:来)
(4)今もなほ晶子ひばりの「みだれ髪」熱き心の胸に響ける (題:乱)
(5)中東へ赴任して行く子の無事を祈りて居間に世界地図貼る (題:地図)
(6)引きこもり心の中を見せぬ子の微かに動く目に希望持つ (題:中)
今回は投稿した短歌三首が佳作以上に入りました。ご笑読あれ。
優秀作
「地吹雪を車窓に映しコトコトとスト−ブ列車津軽野を行く」
選評:冬の津軽路をスト−ブ列車で旅行した折のことを詠んだ。外は地吹雪なのに、列車の中はスト−ブで暖かい。
車窓に映る吹雪が余所事ののように感じられるのだ。
「コトコトとスト−ブ」も雰囲気を盛り上げる表現である。
佳作二首もついでに(選評は無し)
「肩を寄せ群れなし咲ける福寿草風に震へつ春を告げをり」
「凍てつきし帰省の郷で見る星座教へてくれし爺思ひ出す」 お粗末。 齋藤
元に戻る