二 ミヤマキリシマ 咲き誇り 山くれないに 大船(たいせん)の 峰を仰ぎて 山男 花の情を 知る者ぞ
三 四面山なる 坊がつる 夏はキャンプの 火を囲み 夜空を仰ぐ 山男 無我を悟るは この時ぞ
四 出湯の窓に 夜霧来て せせらぎに寝る 山宿に 一夜を憩う 山男 星を仰ぎて 明日を待つ
五 石楠花谷の 三俣(みまた)山 花を散らしつ 篠分けて 湯沢に下る 山男 メランコリーを 知るや君
六 深山紅葉に 初時雨 暮雨滝(くらさめたき)の 水音を 佇み聞くは 山男 もののあわれを 知る頃ぞ
七 町の乙女等 思いつつ 尾根の処女雪 蹴立てつつ 久住(くじゅう)に立つや 山男 浩然の気は 言いがたし
八 白銀の峰 思いつつ 今宵湯宿に 身を寄せつ 斗志に燃ゆる 山男 夢に九重(くじゅう)の 雪を蹴る
九 三俣の尾根に 霧飛びて 平治(ひじ)に厚き 雲は来ぬ 峰を仰ぎて 山男 今草原の 草に伏す