大鉈怖い

 ♪お手手つないで野道を行けば♪の作詞者はあまり野道を歩いたことがないようだ。お手手をつないで歩くとどうしても横列になる。真ん中を歩く人は良いが道端を歩く人は昔はよく鉈を踏んだ。
 履き物は藁草履が多かったから大変だ。大怪我する。それも未だ新鮮な研ぎ立てだといくら草履を洗っても臭いが消えない。
 大鉈だと草履を回り込んで足まで怪我する。ご承知と思うが鉈とは[stool]のことだ。大鉈は量のことだから単なる[big stool]ではなく[a stewpot of stools]とか[large quantities of stools]というのでは?
 これは身近な英語なので先生か英検上級の人に質問して確かめておこう。

 さて鉈の語源であるが『ある人が山仕事から帰り仕事に使う鉈を忘れたことに気づいた。一寸ボーッとした男だったので家人が「何処に忘れたのか」と聞いた。
 「男はstoolしたところだ」と答えた。「何処でstoolしたのか」と聞かれると「鉈を忘れたところ」と答えた。これからむきだしのstoolを鉈というようになった』ことを知っていればかなりの物知りである。

 また鉈は野道や山道にだけあるのではない。小学校の階段下などにもあった。
 うっかりして手に付くと、すぐその場で拭き取るのが原則のため階段の手すりで拭いたりした。

 その頃学校の階段手すりは後ろ向きで跨り滑り降りる遊び道具でもあったからすぐ誰かが滑ってきて手すりはきれいになる。

 長じて聞いたある元将軍の話。当時ソ連に行ったさい、レストランでトイレにたつと若い美人が水が流れる音が消えないうちにドアから出てきた。
 かの国の若い女性は特に美しい。大統領や官房長官でなくても「オーチンハラショー」などと言われたら国家機密もいっしょに漏らしてしまいそうだ。
 ところが水は流れたが物は流れない。
すりこぎ状の物が水の中に立っていた。
 レストランだからフォークを持っていたのかそのすりこぎ状のものを突き崩してみると藁のような繊維が大量に混ざっていた。
 こんな逞しい国民と戦争すべきでないとしみじみ感じたという。

 そう、藁はよく焙烙であぶり石でたたいて粉にし少量の小麦粉をつなぎに使い団子にしても不味く、漬け物の汁をつけ、白湯といっしょに飲み込んでも下痢をしたりして食べ物とは思えなかった。

 鉈道は上高地あたりに未だあるとか。
 昔の食べ物やその行く末のことはほとんど忘れてしまったが、テレビで妙齢の女子アナが「予算に大鉈を振るう」などと言うと今でも一寸血圧が上がる。
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