少年に贈る 江海かうかい相あひ逢あひて客恨かっこん多く、 秋風しうふう葉は下くだりて洞庭どうてい波なみだつ。 酒さけ酣たけなはにして夜よる別わかる淮陰わいいんの市し、 月は照らす高樓かうろう一曲の歌。 |
汴河べんが懷古 盡ことごとく 道いふ隋の亡ぶは此の河の爲なりと、 今に至いたるも千里通波つうはに頼たよる。 若もし水殿すゐでん龍舟りゅうしうの事こと無ければ、 禹うと功こうを論ろんじて較やゝ多からざらんや! |
奢雲しゃうん豔雨えんうは祗ただ 悲風ひふうのみ。 呉王の事事じじ須すべからく國を亡ほろぼすべく、 |
玄宗げんそう馬を回めぐらせば楊妃やうひ死し、 雲雨うんう忘れ難がたきも日月じつげつ新たなり。 終つひに是これ聖明せいめい 天子の事こと、 景陽宮けいやうきゅう井せい又また何人なんぴとなる。 |
平地と山尖さんせんとを論ろんぜず、 無限の風光盡ことごとく占しめらる。 採とり得えたり百花蜜みつと成なりし後のち、 |
田家を詠む 二月新絲しんしを賣うり、 五月新穀しんこくを糶うりよねす。 眼前がんぜんの瘡きずを醫いやし得えて、 心頭しんとうの肉を剜卻わんきゃくす。 我は願ふ君王くんわうの心、 化して作ならん光明くゎうみゃうの燭しょくと。 綺羅きらの筵えんを照らさずして、 只だ逃亡たうばうの屋をくを照らさんことを。 |
蓬門ほうもん未いまだ識しらず綺羅きらの香かう、 良媒りゃうばいに 託せんと擬ほっするも亦自ら傷む。 誰たれか愛めでん風流ふうりうの高格調かうかくてう、 共ともに憐あはれむ時世じせいの儉梳妝けんそしゃう。 苦はなはだ恨うらむ年年ねんねん金線きんせんを壓あっし、 他人たにんの爲ために嫁かの衣裳いしゃうを作るを。 |
草色さうしょくは靑靑せいせいとして柳色りうしょくは黄なり 桃花たうくゎ歴亂れきらんとして李花りくゎ香かんばし。 東風とうふう爲ために愁うれひを吹き去らず、 春日しゅんじつ偏ひとへに能よく恨うらみを惹ひいて長し。 |
十年一劍を磨くも、 霜刃さうじん未いまだ曾かつて試こころみず。 今日把とりて君に似しめさば、 誰たれか不平の事を爲なさん。 |
釣 罷やめ歸り來かへきたりて船を繋つながず、 江村かうそん月落ちて正まさに眠ねむるに堪たへたり。 縱然たとひ一夜風吹き去るとも、 只ただ蘆花ろくゎ淺水せんすゐの邊ほとりに 在あらん。 |
鶴林寺に題す 終日しゅうじつ昏昏こんこんたり醉夢すゐむの間かん、 忽たちまち「春盡つく」と聞きて強しひて山に登る。 又また浮生ふせい半日の閑かんを 得えたり。 |
重ねて滕王閣に登る 滕王閣とうわうかく上伊州いしうを唱うたひ、 二十年前此ここに遊ぶ。 半なかばは是ぜ半ばは非ひなるも君問ふこと莫なかれ、 好山は長とこしへに在ありて水は長とこしへに流る。 |
翠幕紅筵高くして雲に在り、 歌鐘一曲萬家に聞こゆ。 路人は滕王閣を指點し、 看送る忠州白使君。 |
五原の春色舊來きうらい遲おそく、 二月垂楊すゐやう未だ絲を挂かけず。 即今そくこん河畔冰こほり開くの日、 正に是これ長安花落つるの時。 |
三月晦日劉評事に贈る 三月正まさに當たる三十日、 風光我が苦吟くぎんの身に別わかる。 君と共に今夜睡ねむるを須もちゐず、 未いまだ曉鐘げうしょうに到らざれば猶なほ是これ春。 |
汴水べんすゐ東流とうりうす無限の春、 隋家ずゐかの宮闕きゅうけつ已すでに塵ちりと成る。 行人かうじん長堤ちゃうていに上のぼりて望むこと莫なかれ、 風 起おこらば楊花やうくゎ人を愁殺しうさつせん。 |
九月九日望鄕臺、 他席他鄕客を送る杯。 人情已に厭ふ南中の苦、 鴻雁那ぞ北地より來る。 |
上皇南京なんけいに西巡するの歌 誰たれか道いふ君王くんなう行路難かたしと、 六龍りくりょう西幸して萬人ばんにん歡よろこぶ。 地は轉じて錦江きんかう渭水ゐすゐと成り、 天は 廻めぐりて玉壘ぎょくるゐ長安と作なる。 |
上皇南京なんけいに西巡するの歌 劍閣の重關ちょうくゎん蜀の北門ほくもん、 上皇の歸馬雲の若ごとく屯たむろす。 少帝せうてい長安に紫極しきょくを開き、 日月じつげつを雙ならべ懸かけて乾坤けんこんを照らす。 |
悶を解く 一たび故國を辭して十とたび秋を經へ、 秋瓜しうくゎを見る毎ごとに故丘を憶おもふ。 今日こんにち南湖に薇蕨びけつを采とる、 何人なんぴとか爲ために覓もとめん鄭瓜州ていくゎしう。 |
美人珠簾しゅれんを捲き、 深坐して蛾眉を嚬ひそむ。 但だ見る涙痕の濕うるほふを、 知らず心に誰たれをか恨むを。 |
邊將を宴す 一曲の涼州りゃうしう金石きんせき清く、 邊風へんぷう蕭颯せうさつとして江城かうじゃうを 動うごかす。 坐中老らう有り沙場さぢゃうの客かく、 橫笛わうてき吹くを休やめよ塞上さいじゃうの聲こゑ。 |
班婕妤はんせふよ 怪あやしむらくは妝閣さうかくの 閉とづることを、 朝てうより下くだりて相あひ迎へず。 總すべて春園の裏うちに 向おいて、 花間くゎかん笑語せうごの聲こゑ。 |
韋員外ゐゐんぐゎいの家いへの花樹くゎじゅの歌 今年こんねん花は去年に似て好く、 去年人は今年に到いたりて老ゆ。 始めて知る人は老いて花に如しかざることを、 惜しむ可べし落花君掃はらふこと莫なかれ。 君が家いへの兄弟けいてい當あたる可べからず、 列卿れつけい御史ぎょし尚書郞しゃうしょらう。 花は 玉缸ぎょくかうを撲うちて春酒香かんばし。 |
劉十九りうじふく同じく宿す 紅旗こうき賊を破るは吾わが事に非あらず、 黄紙の除書くゎうしぢょしょに我が名無し。 唯ただ嵩陽すうやうの劉處士りうしょしと共に、 棋きを圍かこみ酒を賭かけて天明てんめいに到る。 |
烏夜啼うやてい 黄雲くゎううん城邊じゃうへん烏棲からすすまんと欲ほっし、 歸り飛びて啞啞ああと枝上しじゃうに啼なく。 機中きちゅう錦にしきを織おる秦川しんせんの女、 碧紗へきさ烟けむりの如く牕まどを 隔へだてて語る。 獨ひとり 空房くうばうに宿しゅくして涙雨の如し。 |
落葉聚あつまりて還また散じ、 征禽去りて歸らず。 我が窮途の泣なみだを以て、 君が出塞の衣を沾うるほす。 |
人日じんじつ帰るを思ふ 春に入りて纔わづかに七日、 家を離れて已すでに二年。 人の帰るは雁がんの後に落ち、 思ひの発するは花の前に在あり。 |
嵩山を下るの歌 嵩丘を下れば思ふ所多く、 佳人を攜たづさへて歩むこと遲遲たり。 松間の明月長とこしへに此かくの如きも、 君の再遊する時は復また 何いづれの時ぞ。 |
宋之問の嵩山の歌に和す 日ひ云ここに暮れて嵩山すうざんを下れば、 路みち連綿れんめんたり松石しょうせきの間。 谷口こくこうを出いでて明月を見れば、 心徘徊はいくゎいして還かへる 能あたはず。 |
去年離別して雁がん初めて歸り、 今歳こんさい裁縫して螢ほたる已すでに飛ぶ。 狂客きゃうかく未いまだ來きたらず音信いんしん斷え、 知らず何處いづこにか寒衣を寄するを。 |
昨夜秋風漢關に入り、 朔雲さくうん邊雪へんせつ西山せいざんに滿つ。 更に飛將を催うながして驕虜けうりょを追おはしめ、 沙場さじゃうの匹馬ひっぱをして還かへらしむる莫なかれ。 |
秋風嫋嫋動高旌、
玉帳分弓射虜營。 已收滴博雲間戍、 更奪蓬婆雪外城。 |
秋風嫋嫋でうでうとして高旌かうせいを動かし、
玉帳ぎょくちゃう弓を分かちて虜營りょえいを射る。 已すでに滴博てきはく雲間うんかんの戍じゅを收めて、 更に蓬婆ほうば雪外の城を奪はん。 |
一樹依依在永豐、
兩枝飛去杳無蹤。 玉皇曾採人間曲、 應逐歌聲入九重。 |
一樹依依として永豐えいほうに在り、
兩枝飛び去りて杳えうとして蹤あと無し。 玉皇曾かつて採る人間じんかんの曲、 |
一樹いちじゅ春風千萬枝せんまんし、 金色きんしょくよりも嫩どんに絲いとよりも軟なん。 永豐えいほうの西角せいかく荒園くゎうゑんの裏うち、 盡日じんじつ人無し阿誰あすゐに 屬ぞくせん。 |
一樹衰殘委泥土、
雙枝榮耀植天庭。 定知玄象今春後、 柳宿光中添兩星。 |
一樹衰殘して泥土に委し、
雙枝榮耀天庭に植ゑしむ。 定めて知らん玄象今春の後、 柳宿光中に兩星を添へるを。 |
銀臺金闕夕沈沈、
獨宿相思在翰林。 三五夜中新月色、 二千里外故人心。 渚宮東面煙波冷、 浴殿西頭鐘漏深。 猶恐清光不同見、 江陵卑溼足秋陰。 |
銀臺金闕夕べに沈沈、
獨宿相ひ思ひて翰林に在り。 三五夜中新月の色、 二千里外故人の心。 渚宮の東面煙波冷やかに、 浴殿の西頭鐘漏深し。 猶ほ恐る清光同じく見ざるを、 江陵は卑溼にして秋陰足おほし。 |
已に訝る衾枕の冷ややかなるを、 復た見る窗戸の明らかなるを。 夜深くして雪の重きを知り、 時に聞く折竹の聲を。 |
殘紅落ち盡くして始めて芳はなを吐ひらき、 佳名かめい喚よびて「百花の王」と作なす。 競きそひ誇る天下無雙の艷えん、 獨ひとり占しむ人間じんかん第一の香。 |
宣城にて杜鵑花を見る 蜀國に曾て聞く子規しきの鳥、 宣城に還また見る杜鵑とけんの花。 一叫一廻腸はらわた一斷、 三春三月三巴さんぱを憶おもふ。 |
水邊すゐへんの楊柳やうりう麴塵きくぢんの絲、 馬を立とどめ君を煩わづらはして一枝いっしを折る。 惟ただ春風しゅんぷうの最も相あひ惜しむ有りて、 殷勤いんぎんに更に手中しゅちゅうに向かって吹く。 |
九日齊山せいざんに登高す 江かうは秋影しうえいを涵ひたして雁がん初めて飛び、 客かくと壺を攜たづさへて翠微すゐびに上のぼる。 塵世ぢんせい逢あひ難がたし口を開きて笑ふに、 菊花須すべからく滿頭に插さして歸るべし。 但ただ酩酊めいていを將もって佳節かせつに酬むくい、 用もちゐず登臨落暉らっきを恨むを。 古往今來こわうこんらい只ただ 此かくの如く、 |
鬢眉びんび雪色せつしょく猶なほ酒を嗜たしなみ、 言辭げんじ淳朴じゅんぼく古人の風ふう。 鄕村がうそんの年少は離亂りらんに生まれ、 先朝せんてうを 話かたるを見て夢中むちゅうの如し。 |
我昔未いまだ生まれざりし時 我昔未いまだ生まれざる時、 冥冥めいめいとして知る所無し。 天公てんこう強しひて我を生み、 我を生みて復また何をか爲なせる。 衣い無くして我をして寒からしめ、 食しょく無くして我をして饑うゑしむ。 你なんぢ・天公てんこうに我を還かへさん、 我に未いまだ生まれざりし時を還かへせ。 |
窗外さうがい正まさに風雪、 爐ろを擁ようして酒缸しゅかうを開く。 何如いかんぞ釣船てうせんの雨に、 蓬底ほうてい秋江しうかうに睡ねむると。 |
孫山人に寄す 新林二月孤舟こしう還かへる、 水は清江せいかうに滿ちて花は山に滿つ。 借問しゃもんす故園こゑんの隱君子いんくんし、 時時じじ來往らいわうして人間じんかんに住ぢゅうするかと。 |
醉中すゐちゅう紅葉こうえふに對す 風に臨のぞむ杪秋べうしうの樹き、 酒に對す長年ちゃうねんの人。 醉貌すゐばう霜葉さうえふの如く、 紅くれなゐなりと雖いへども是これ春ならず。 |
白司馬に寄す 三條さんでう九陌きうはく花の時節、 萬戸ばんこ千車せんしゃ牡丹ぼたんを看る。 爭いかでか江州かうしうの白司馬しばをして、 五年の風景長安を憶おもはしめん。 |
洞房どうばう昨夜春風しゅんぷう起こり、 遙はるかに憶おもふ美人湘江しゃうかうの水。 枕上ちんじゃう片時へんじ春夢しゅんむの中うちに、 行ゆき盡つくす江南かうなん數千里。 |
相あひ逢あふ紅塵こうぢんの内うち、 高揖かういふす黄金わうごんの鞭むち。 萬戸ばんこ垂楊すゐやうの裏うち、 君が家は阿那あだの邊。 |
一夕いっせき九きうたび起おきて嗟なげき、 夢は短くして家に到いたらず。 両ふたたび度わたる長安の陌みち、 空むなしく涙を将もって花を見る。 |
昔日せきじつの齷齪あくせく誇ほこるに足たらず、 今朝こんてうの放蕩はうたう思おもひ 涯はて無し。 春風しゅんぷうに意いを得えて馬蹄ばてい疾はやく、 一日いちじつに看み盡つくす長安ちゃうあんの花。 |
八月霜飛柳半黄、
蓬根吹斷雁南翔。 隴頭流水關山月、 泣上龍堆望故鄕。 |
八月霜しも飛びて柳半なかば黄なり、
蓬根ほうこん吹斷すゐだんされて雁がん南に翔かける。 隴頭ろうとうの流水りうすゐ關山くゎんざんの月、 泣きて龍堆りょうたいに上のぼりて故鄕を望む。 |
花下に醉ふ 芳はうを尋たづねて覺おぼえず流霞りうかに醉ゑひ、 樹きに倚より沈眠ちんみんして日ひ已すでに斜めなり。 客かく散さんじ酒は醒さむ深夜の後のち、 更に紅燭こうしょくを持ぢして殘花ざんくゎを賞しゃうす。 |
惻惻たる輕寒翦翦の風、 小梅雪を飄はせて杏花紅なり。 夜深斜搭鞦韆の索、 樓閣朦朧として煙雨の中。 |
長安の春 長安二月香塵かうぢん多く、 六街りくがいの車馬聲せい轔轔りんりん。 家家かか樓上花の如き人、 千枝萬枝紅豔こうえん新あらたなり。 簾間れんかん笑語せうご自みづから相あひ問ふ: 「何人なんぴとか占しめ得たる長安の春を」と。 「長安の春色本もと主あるじ無く、 古來盡ことごとく屬す紅樓こうろうの女に。 如今じょこん奈いかんともする無し杏園きゃうゑんの人、 駿馬しゅんめ輕車にて擁ようし將もちて去さる。」 |
人に寄す 夢に別れて依依いいとして謝しゃ家に到れば、 小廊せうらう迴合くゎいがふして曲闌きょくらん斜ななめなり。 多情たじゃう只ただ春庭しゅんていの月つきのみ有りて、 |
終南餘雪を望む 終南しゅうなん陰嶺いんれい秀ひいで、 積雪雲端うんたんに浮うかぶ。 林表りんぺう霽色せいしょくを明あきらかに、 城中じゃうちゅう暮寒ぼかんを增ます。 |
冰簟ひょうてん銀床ぎんしゃうなれども夢成ならず、 碧天へきてん水の如ごとく夜雲やうん輕かろし。 雁聲がんせい遠く過すぎて瀟湘せうしゃうに去さり、 十二樓じふにろう中ちゅう月つき自おのづから明るし。 |
涙は羅巾らきんを溼うるほして夢成ならず、 夜 よ深ふけて前殿ぜんでん歌聲かせいを按あんず。 紅顏こうがん未いまだ老おいず恩おん先まづ斷たえ、 斜めに薰籠くんろうに倚よりて坐して明めいに到る。 |
兵部尚書席上の作 華堂くゎだう今日こんにち綺筵きえん開き、 誰たれか分司ぶんしの御史ぎょしを喚よび來きたらしむ。 偶たまたま狂言きゃうげんを發はっして滿坐を驚かせれば 三重さんちょうの粉面ふんめん一時いちじに回めぐる。 |
夜雨北に寄す 君きみ歸期ききを問とふも未いまだ期き有あらず、 巴山はざんの夜雨やう秋池しうちに漲みなぎる。 何いつか當まさに共ともに西窗せいさうの燭しょくを剪きりて 卻かへって話はなすべき巴山はざん夜雨やうの時ときを。 |
家在閩山東復東、
其中歳歳有花紅。 而今不在花紅處、 花在舊時紅處紅。 |
家は閩山びんざんの東の復また東に在あり、
其その中なか歳歳さいさい花の紅くれなゐなる有り。 而今じこん花の紅くれなゐなる處ところに在をらず、 花は舊時きうじに在ありて紅あかき處ところに紅あかし |
家在閩山西復西、
其中歳歳有鶯啼。 如今不在鶯啼處、 鶯在舊時啼處啼。 |
家は閩山びんざんの西復また西に在ありて、
其その中なか歳歳さいさい鶯うぐひすの啼なく有あり。 如今じょこん鶯啼あうていの處ところに在あらざるも、 鶯うぐひすは舊時きうじ啼なきし處ところに在ありて啼なく |
晏起あんき 爾來じらい酒に中あたりて起おくること常に遲く、 臥ぐゎして南山を看みて舊詩きうしを改む。 戸を開けば日ひ高たかくして春はる寂寂せきせき、 數聲の啼鳥ていてう花枝くゎしに上のぼる。 |
平蕃曲へいばんきょく 渺渺べうべうとして戍煙じゅえん孤こなり、 茫茫ばうばうとして塞草さいさう枯かる。 隴頭ろうとう那なんぞ閉とづることを用もちゐん、 萬里ばんり胡こを防ふせがず。 |