秋夜将暁出籬門迎涼有感 二首 其一 陸 游
秋夜将に暁けんとし籬門を出でて涼を迎う 感有り二首 其の一
遥かな銀河 西南の空に落ち
隣りの鶏は しきりに時を告げる
発病以来 かつての志も尽き果て
門前で頭を掻きながら これまでのわが身を傷むのだ
陸游は六十三歳のときに旧作を整理して『剣南詩集』二十巻を刊行しましたが、そのとき若いころの作品の多くを廃棄したと言われています。
しかし、陸游は八十五歳まで生き、老いても多くの作品を書きましたので、現在に残された作品は九二〇〇首といわれ、中国詩人のなかでは最多です。
七言律詩を得意とする詩人ですが、ここでは七言絶句を取り上げています。詩は光宗の紹煕三年(一一九二)、六十八歳のときの作品で、再度の免職のあとふたたび山陰に村居しているときに作ったものです。
しばらく病気をしていたらしく、かつての「壮志」も尽き果てようとしていると言っているのは、抗金の志のことです。
陸游は生涯を通じて金への徹底抗戦の志を失いませんでした。
寒村に倒れ伏しても わが身を哀れと思わない
思うのはただ国のため 辺境を守ること
真夜中に眠れないでいると 風雨の音がして
鉄甲の騎馬に乗って 冰河を渡る夢をみた
詩は前日の詩と同じ年の十一月に作られたもので、六十八歳のときの作品です。礼部郎中兼実録院検討官の職を罷免され、再び郷里に帰って村居の身分ですが、国を思う気概には強烈なものがあります。
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