黒田節

酒は飲め飲め 飲むならば
日の本一の この槍を
飲みとるほどに 飲むならば
これぞ眞の 黒田武士

峰の嵐か 松風か
訪ぬる人の 琴の音か
駒ひきとめ 立寄れば
爪音高き 想夫恋

春の弥生の あけぼのに
四方の山辺を 見わたせば
花のさかりも 白雲の
かからぬ峰こそ なかりけれ

花たちばなも 匂うなり
軒の菖蒲も かおるなり
夕ぐれまえの 五月雨に
山ほととぎす 名のりして

花より明くる み吉野の
春のあけぼの 見渡せば
唐人も 高麗人も
大和心に なりぬべし

すめらみくにの ものゝふは
如何なることをか つとむべき
たゞ身に持てる まごころを
君と親とに 盡すまで

古き都に 来てみれば
浅茅が原とぞ なりにける
月の光は くまなきて
秋風のみぞ 身にはしむ