鎌 倉
芳賀矢一 詞
一 七里ヶ浜の磯伝い、
  稲村ヶ崎、名将の
  剣投ぜし古戦場。

二 極楽寺坂越え行けば、
  長谷観音の堂近く
  露坐の大仏おわします。

三 由比の浜辺を右に見て
  雪の下村(したむら)過ぎ行けば、
  八幡宮の御社(おんやしろ)

四 上るや石のきざはしの
  左に高き大銀杏、
  問わばや、遠き世々の跡。

五 若宮堂の舞の袖
  しずのおだまきくりかえし
  返せし人をしのびつつ。

六 鎌倉宮にもうでては、
  尽きせぬ親王(みこ)のみうらみに
  悲憤の涙わきぬべし。

七 歴史は長き七百年、
  興亡すべてゆめに似て、
  英雄墓はこけ蒸しぬ。

八 建長円覚古寺の
  山門高き松風に、
  昔の音やこもるらん。