北大恵迪寮歌
横山  芳介  詞
納所弁二郎 曲
都ぞ弥生の雲紫に
花の香漂う宴遊の筵
尽きせぬ奢りに濃き紅の
その春暮れては移ろう色の
夢こそ一時青き繁みに
燃えなん我が胸想いを載せて
星影さやかに光れる北を
人の世の 清き国ぞとあこがれぬ

豊かに稔れる石狩の野に
雁音はるばる沈みてゆけば
羊群声なく牧舎に帰り
手稲の嶺黄昏こめぬ
雄々しく聳ゆる楡の梢
打振る野分に破壊の葉音の
さやめく甍に久遠の光
おごそかに 北極星を仰ぐかな

寒月懸れる針葉樹林
橇の音氷りて物皆寒く
野もせに乱るる清白の雪
沈黙の暁霏霏として舞う
ああその朔風飄々として
荒る吹雪の逆まくを見よ
ああその蒼空梢聯ねて
樹氷咲く 壮麗の地をここに見よ

牧場の若草陽炎燃えて
森には桂の新緑萌し
雲ゆく雲雀に延齢草の
真白の花影さゆらぎて立つ
今こそ溢れぬ清和の光
小川の辺をさまよい行けば
美しからずや咲く水芭蕉
春の日の この北の国幸多し

朝雲流れて金色に照り
平原果てなき東の際
連なる山脈玲瓏として
今しも輝く紫紺の雪に
自然の芸術を懐かしみつつ
高鳴る血潮の迸りもて
貴き野心の訓え培い
栄え行く 我等が寮を誇らずや