重 題 白居易（中唐）
日高睡足猶慵起 日高く眠足りて 猶起くるにものうし
小閣重衾不怕寒 小閣しとねを重ねて 寒さをおそれず
遺愛寺鐘欹枕聴 遺愛寺の鐘は 枕をそばだてて聴き
香爐峰雪撥簾看 香爐峰の雪は 簾ををかかげて看る
匡盧便是逃名地 匡盧はすなわち 是 名を逃るるの地
司馬仍為送老官 司馬はなお 老いを送るの官たり
心泰身寧是帰処 心泰く身やすきは 是 帰する処
故郷何獨在長安 故郷何ぞ独り 長安にのみ在らんや
除夜作 高適（盛唐）
旅館寒灯独不眠 旅館の寒灯 独り眠らず
客心何事転悽然 客心何事ぞ うたた悽然
故郷今夜思千里 故郷今夜 千里を思う
霜鬢明朝又一年 霜鬢明朝 又一年
月 夜
今夜鹿州月 今夜
閨中只獨看 閨中只だ独り看ん
遥憐小兒女 遥かに憐れむ小児女の
未解憶長安 未だ長安を憶うを解せざるを
香霧雲鬟濕 香霧雲鬟かん湿うるおい
清輝玉臂寒 清輝玉臂ひ寒からん
何時倚虚幌 何れの時か虚幌きょこうに倚り
雙照涙痕乾 双ならび照されて涙痕乾かん
月夜憶舍弟 月夜に舍弟を憶う
戍鼓斷人行 戍鼓じゅこは人行を斷つ
邊秋一雁聲 邊秋 一雁の聲あり
露從今夜白 露は今夜從より白く
月是故郷明 月は是れ故郷にも明らかならん
有弟皆分散 弟有れども皆な分散し
無家問死生 家の死生しせいを問う無し
寄書長不達 書を寄するも長く達せず
況乃未休兵 況んや未だ兵を休やめざるをや