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おらが春

目出度さもちう位也おらが春 一茶

 こぞの五月生れたる娘に一人前の雜煮膳を居へて
這へ笑へ二ツになるぞけさからは

 文政二年正月一日 とし男つとむべき僕といふものもあらざれば
名代にわか水浴る烏かな 一茶

 水江春色
すつぽんも時や作らん春の月  ゝ

山の月花盗をてらし給ふ  ゝ  善光寺堂前

灰猫のやうな柳もお花哉  ゝ

さくらさくらと唄はれし老木哉  ゝ

櫻へと見えてじんじん端折哉  ゝ

 初午
花の世を無官の狐鳴にけり  ゝ

かくれ家や猫にもすへる二日灸  ゝ

葎からあんな胡蝶の生れけり  ゝ

 上野遠望
白壁の誹れながらかすみけり  ゝ

苗代は菴のかざりに青みけり  ゝ

花の陰あかの他人はなかりけり  ゝ

 二月十五日
小うるさい花が咲とて寐釋迦かな  ゝ

み佛や寐ておはしても花と錢  ゝ

猫の子や秤にかゝりつゝじやれる 一茶

 玉川
さらし布霞の足しに添いにけり  ゝ

   思ひきや下萌いそぐ若草を 野邊のけぶりになして見んとは 一茶
 長々の月日雪の下にしのびたる蕗、蒲公英のたぐひ、やをら春吹風の時を得て、雪間雪間をうれしげに首さしのべて、此世の明り見るやいなや、ほつりとつみ切らるゝ草の身になりなば、鷹丸法師の親のごとくかなしまざらめや、草木國土悉皆成佛とかや、かれらも佛生得たるものになん。

 獨坐
おれとしてにらみくらする蛙哉 一茶

梅の花爰を盗めとさす月か  ゝ

松島の小隅は暮て鳴く雲雀  ゝ

大猫の尻尾でなぶる小蝶かな  ゝ

 三月十七日ほしな詣
花ちるやとある木陰も小開帳  ゝ

通りぬけせよと垣から柳かな  ゝ

餅腹をこなしがてらのつぎ穂哉  ゝ

今の世も鳥はほけ經鳴にけり 一茶

鶯の馳走に掃しかきねかな  ゝ

馬までもはたご泊や春の雨  ゝ

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る  ゝ

かすむ日やしんかんとして大座敷  ゝ

横乘の馬のつゞくや夕雲雀  ゝ

 京島原
入口のあいそになびく柳かな  ゝ

藪村やまぐれあたりも梅の花  ゝ

正月や夜はよる迚うめの月  ゝ

茶屋むらの一夜にわきし櫻かな  ゝ

翌々と待たるゝうちが櫻かな 白飛

なぐさみにわらを打也夏の月 一茶

 卯月八日
長の日をかはく間もなし誕生佛  ゝ

五月雨も中休みかよ今日は  ゝ

 病後
ちりの身とともにふはふは紙帳哉  ゝ

五月雨も仕廻のはらりはらりかな  ゝ

小座頭の天窓にかぶる扇かな  ゝ

竹の子と品よく遊べ雀の子  ゝ

入梅晴や二軒並んで煤拂ひ  ゝ

 谷藤橋
這わたる橋の下よりほとゝぎす  ゝ

はつ瓜を引とらまへて寐た子哉  ゝ

 人形町
人形に茶を運ばせて門凉み  ゝ

今迄は罰もあたらず晝寐蚊屋  ゝ

蚊がちらりほらり是から老が世ぞ  ゝ

世がよくばも一ツ泊れ飯の蠅  ゝ

卯の花に一人きりの社かな  ゝ

 幽栖
蟲にまで尺とられけり此はしら  ゝ

 身一つすぐす迚山家のやもめの哀さは
おのが里仕舞てどこへ田植笠  ゝ

あつぱれの大わか竹ぞ見ぬうちに  ゝ

花つむや扇をちよいとぼんのくぼ  ゝ

としよりと見るや鳴蚊の耳のそば  ゝ

 戸隱山
居風呂へ流し込たる清水かな  ゝ

此入りはどなたの菴ぞ苔清水 一茶

一つ蚊のだまつてしくりしくりかな  ゝ

その門に天窓用心ころもがえ  ゝ

かくれ家の柱で麥を打れけり  ゝ

 越後女旅かけて商ひする哀さを
麥秋や子を負ひながらいはし賣  ゝ

笋や人の子なくば花咲ん  ゝ

芝でした休み所や夏木立  ゝ

山苔も花さく世話はもちにけり  ゝ

孑孑の天上したり三ケの月  ゝ

 獨樂坊
寐所見る程は卯の花明りかな  ゝ

法の山や蛇もうき世を捨衣  ゝ

思ふまじ見まじとすれど我家かな 一茶

 おなし心を
故郷に花もあらねどふむ足の 迹へ心を引くかすみかな  ゝ

あまひらをおどろかさじと青麥に ほどよき風の吹すぐるかな

 日々懈怠不惜寸陰
けふの日も棒ふり蟲よ翌も又 一茶

 無限欲有限命
此風に不足いふなり夏坐敷  ゝ

起々の欲目引張る青田哉  ゝ

 心に思ふことを
故郷は蠅まで人をさしにけり  ゝ

直き世や小錢程でも蓮の花  ゝ

松陰や寐蓙一ツの夏坐敷  ゝ

 題童唄
三度掻て蜻蛉とまるや夏座敷 希杖

片息に成て逃入る螢かな 一茶

夕顏の花で涕かむおばゞかな  ゝ

あついとてつらで手習した子哉  ゝ

大螢ゆらりゆらりと通りけり  ゝ

 田中川原如意湯に晝浴みして
なを暑し今來た山を寐て見れば  ゝ

なむあみだ佛の方より鳴蚊かな  ゝ

とべよ蚤同し事なら蓮の上  ゝ

かくれ家は蠅も小勢でくらしけり  ゝ

ひいき鵜は又もから身で浮みけり  ゝ

松の蝉どこまで鳴て晝になる  ゝ

今迄は罰もあたらず晝寐蚊屋  ゝ

はなれ鵜が子のなく舟に戻りけり  ゝ

紙屑もぼたん顏ぞよ葉がくれに 一茶

 蛙の野邊
 爰らの子どもの戯に蛙を生ながら土に埋めて諷ふていはく、ひきどのゝお死なつた、おんばくもつてとぶらひに/\/\と、口々にはやして苡の葉を、彼うづめたる上に打かぶせて歸りぬ。しかるに本草綱目、車前草の異名を蝦蟇衣といふ、此國の俗がいろつ葉とよぶ、おのづからに和漢心をおなじくすといふべし、むかしはかばかりのざれごとさへいはれあるにや
   卯の花もほろりほろりや蟇の塚 一茶

 此もの、諸越の仙人に飛行自在の術ををしへ、我朝天王寺には大たゝかひにゆゝしき武名を殘しき。
 それは昔々のことにして、今此治れる御代に隨ひ、ともに和らぎつゝ、夏の夕暮せどに莚を廣げて、福よ福よと呼べば、やがて隅の藪よりのさのさ這ひよりて、人と同じく凉む、其つら魂ひ一句いひたげにぞありける、さる物から長嘯子の蟲合に、歌の判者にゑらまれしは汝が生涯のほまれなるべし

ゆうぜんとして山を見る蛙哉 一茶

鶯にまかり出たよ引蟾 其角

思ふことだまつて居るか蟾 曲翠

一雫天窓なでけり引かへる 一茶

そんじよそこ爰と青田のひいき哉  ゝ

閨の蚊のぶんとばかりに燒れけり  ゝ

鵜の眞似は鵜より上手な子ども哉  ゝ

寐竝んで遠夕立の評義かな  ゝ

留守中も釣り放しなる紙帳かな  ゝ

山番の爺が祈りし清水かな  ゝ

蓮の葉に此世の露は曲りけり  ゝ

狗に爰へ來よとや蝉の聲  ゝ

 五月二十八日
とらが雨など輕んじて濡れにけり  ゝ

魚どもや桶ともしらで門凉み 一茶

とくかすめとくとくかすめ放ち鳥  ゝ

彼岸の蚊釋迦のまねして喰れけり 大江丸 光俊卿

水ふねにうきてひれふる生け鯉の 命まつ間もせはしなの世や 俊頼卿

ふしつけしおどろが下に住むはへの 心おさなき身をいかにせん

 淺間山
晝顏やぽつぽと燃る石ころへ 一茶

 俳諧宗雲水に送る
鬼茨も添て見よ見よ一凉み  ゝ

 古之爲關也將以禦暴今之爲關也將以爲暴
關守りの灸點はやる梅の花 一茶

人聲に子を引かくす女鹿かな  ゝ

はつ螢其手はくはぬとびぶりや  ゝ

蓮の花少曲るもうき世かな  ゝ

隈界のなまけ所や木下闇  ゝ

 大沼
萍の花からのらんあの雲へ  ゝ

 越後
柿崎やしぶしぶ鳴の閑古鳥  ゝ

 江戸住居
青草も錢だけそよぐ門凉  ゝ

なでしこに二文が水を浴せけり  ゝ

 小金原
母馬が番して呑す清水かな  ゝ

風あるをもつて尊とし雲の峯  ゝ

疫病神蚤も負せて流しけり  ゝ

 茂林寺
蝶々のふはりと飛んだ茶釜かな  ゝ

櫻までわるくいはする藪蚊かな  ゝ

蟻の道雲の峰よりつゞきけん  ゝ

なでしこやまゝはゝ木々の日陰花 一茶

さるべき因縁ならんと思へば苦しみも平生とは成りぬ

朝夕に覆かぶさりし目の上の 辛夷も花の盛りなりけり 一茶

 其引
子ばかりの布團に蘆の穗綿かな 山崎宗鑑

竹の雪はらふは風のまゝ子哉 正勝

うつくしきまゝ子の顏の蠅打ん 江雪

なげゝとて蚊さへ寐させぬまゝ子哉 未達

 貞享四年卯歌仙 葛の繩目をゆるされし文
まゝ子をもいたはる嫁の名をとけて 芭蕉

 祇園拾遺 下部ひそかに首理めける
繼母の又口はしる夜の雨 未達

 おく五歌仙
山木かくれて草に血をぬる 芭蕉

わづかなる世をまゝ母に僞られ 風流

 小さき土鍋のありけるを我腹の子にとらせて、とらせざりければ、鶯の鳴をきゝてよめるとなん
   鶯よなどさはなきそちやほしき 小鍋やほしき母や戀しき 貫之娘

 親のない子はどこでも知れる爪を咥へて門に立、と子どもらに唄はるゝも心細く、大かたの人交りもせずして、うらの畠に木萱など積たる片陰に跼りて、長の日をくらしぬ、我身ながらも哀なりけり
   我と來て遊べや親のない雀 六才 彌太郎

ぼた餅や藪の佛も春の風 一茶

蚤の跡かぞへながらに添乳かな 一茶

よりより思ひ寄せたる小兒をも遊び連にもと爰に集ぬ
柳からももんぐあゝあと出る子哉  ゝ

蓬莱になんむなんむといふ子哉  ゝ

年問へば片手出す子や更衣 一茶

 小兒の行末を祝して
たのもしやてんつるてんの初袷  ゝ

名月を取てくれろとなく子哉  ゝ

子寶がきやらきゃら笑ふ榾火哉  ゝ

あこが餅/\とて並べけり  ゝ

妹が子の脊負ふた形りや配餅  ゝ

餅花の木陰にてうちあはゝ哉  ゝ

凉風の吹く木へ縛る我子かな  ゝ

わんぱくや縛られながらよぶ螢  ゝ

 其引
あゝ立たひとり立たることし哉 貞徳

子にあくと申人には花もなし 芭蕉

袴着や子の草履とる親心 子堂

花といへも一ツいへやちいさい子 羅香

春雨や格子より出す童の手 東來

早乙女や子のなく方へ植てゆく 葉捨

折とても花の木の間のせがれ哉 其角

 はしとり初たる日
鵙鳴や赤子の頬をすふ時に 同

 男にきらはれて親のもとに住みけるに、おのが子の初節句見たくも晝は人目茂ければ
   去られたる門を夜見る幟かな よみ女しらず

 子を思ふ實情さもと聞へて哀なり。猛きものゝふの心を和らぐるとはかゝる眞心をいふなるべし。
 いかなる鬼男なりとも、風の便りにもきゝなば、いかでかふたゝび呼び歸さざらめや。

 所有畜類是レ世々ノ親族ナリとなん、親をしたひ子を慈む情、何ぞへだてのあるべきや。
   人の親の鳥追けり雀の子 鬼貫

夏山や子にあらはれて鹿の鳴 五明

負て出て子にも鳴かする蛙哉 東陽

鹿の親笹吹く風にもどりけり 一茶

小夜しぐれなくは子のない鹿にがな  ゝ

子をかくす藪の廻りや鳴雲雀  ゝ

露の世はつゆの世ながらさりながら 一茶

 去四月十六日、みちのくにまからんと、善光寺まで歩みけるを、さはる事ありて止みぬるも、かゝる不幸あらんとて道祖神のとゞめ給ふならん

 其引 子におくれたるころ
似た顏もあらば出て見ん一踊 落梧

 母におくれたる子の哀さに
おさな子やひとり飯くふ秋の暮 尚白

 娘を葬りける夜
夜の鶴土に蒲團も着せられず 其角

 孫娘におくれて三月三日野外に遊ぶ
宿を出て雛忘れば桃の花 猿雖

 娘身まかりけるに
十六夜や我身にしれと月の欠 杉風

 猶子母に放れしころ
柄をなめて母尋るやぬり團扇 來山

 愛子をうしなひて
春の夢氣の違はぬがうらめしい  ゝ

 子をうしなひて
蜻蛉釣りけふはどこまで行た事か かゞ千代

 やんごとなき人々の歌も心に浮ぶまゝにふとしるし侍りぬ

 讀人知らず
哀なり夜半に捨子の泣聲は 母に添寢の夢や見つらん

捨て行く親したふ子の片いざり 世に立かねて音こそなかるれ 爲家卿

人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道に迷ひぬるかな 兼輔卿

 頌曰
未擧歩時先己到 未動舌時先説了 直饒著々在機先 更須知有向上竅

貰ふよりはやくうしなふ扇かな 一茶

俄川とんで見せけり鹿の親  ゝ

大寺や扇でしれし小僧の名  ゝ

 曲者隱れてうかゞふ圖
あはれ蚊のついと古井に忍びけり  ゝ

 大山詣
四五間の木太刀をかつぐ袷かな  ゝ

太郎冠者まがひに通る扇かな  ゝ

 紫の里近きあたり、とある門に炭團程なる黒き巣鳥をとりて、籠伏せして有けるに、其夜親鳥らしく、夜すがら其家の上に鳴ける哀さに
   子を思ふ闇やかはゆい/\と 聲を鳥の鳴あかすらん 一茶

 盗人おのが古郷に隱れて縛れしに
業の鳥罠を巡るやむら時雨  ゝ

 御成り場所に、鳥どもの餌蒔をしたふ不便さに
人眤き鶴よどちらに箭があたる  ゝ

箭の下に母の乳を呑む鹿子かな 立志

 さすがのさつ男も髻切りしは斯る折になんありける。

 おのれ住る郷は、おく信濃黒姫山のたらたら下りの小隅なれば、雪は夏きへて霜は秋降る物から、橘のからたちとなるのみならで、萬木千草上々國よりうつし植るに、ことごとく變じざるはなかりけり。
   九輪草四五りん草で仕廻けり 一茶

 鎮西八郎爲朝人礫うつ所に
時鳥蠅蟲めらもよつく聞け  ゝ

鹿の子や横にくはへし萩の花 一茶

 老翁岩に腰かけて一軸をさづくる圖に
我汝を待こと久しほとゝぎす  ゝ

 幽栖
我家に恰好鳥の鳴にけり  ゝ

二三遍人をきよくつて行螢  ゝ

飛螢其手はくはぬくはぬとや  ゝ

 成蹊子こぞの冬つひに不言人と成りしとなん。鶯笠のもとより此ころ申おこせたりしを
   つの國の何を申も枯木立  ゝ

白笠を少しさますや木下陰  ゝ

まかり出たるは此藪の蟇にて候  ゝ

雲を吐く口つきしたり引蟇  ゝ

赤い葉の榮耀にちるや夏木立  ゝ

稻妻や一切づゝに世が直る  ゝ

石川はくはらり稻妻さらり哉  ゝ

夕霧や馬の覺えし橋の穴  ゝ

秋風に歩て迯る螢かな  ゝ

 二番休
乳呑子の風よけに立かゝし哉  ゝ

 連にはぐれて
一人通ると壁に書く秋の暮  ゝ

 七月七日墓詣
一念佛申だけしく芒かな  ゝ

木啄のやめて聞かよ夕木魚  ゝ

木つゝきが目利して居る菴かな  ゝ

 經堂
蟲の屁を指して笑ひ佛かな  ゝ

得手ものゝ片足立や小田の雁  ゝ

山寺や椽の上なる鹿の聲  ゝ

下手笛によつくきけとやしかの聲 一茶

茸狩のから手でもどる騒かな  ゝ

 さと女三十五日墓
秋風やむしりたがりし赤い花  ゝ

さをしかの喰こぼしけり萩の花  ゝ

我やうにどつさり寐たよ菊の花  ゝ

のらくらが遊びかげんの夜寒哉  ゝ

露の玉つまんで見たるわらは哉  ゝ

 立よらば大木の下とて、大家には貧しき者の腰をかゞめておはむきいふもことはりになん。
 爰の諏訪宮に大きさ牛をかくす栗の古木ありて、うち見たる所は菓一ツもあらざりけるに、其下をゆきゝする人、日々とり得ざるはなかりけり

 十五夜は高井野梨本氏にありて
古郷の留守居も一人月見かな 一茶

 月蝕皆既亥七刻右方ヨリ缺、子六刻甚ク丑ノ五刻左終
人數は月より先へ缺にけり 一茶

人の世は月もなやませ給ひけり  ゝ

潜上に月の缺るを目利かな  ゝ

酒盡てしんの坐につく月見かな  ゝ

 おのが味噌のみそ嗅を知らず
蕎麥國のたんを切つゝ月見かな  ゝ

 九月十六日正風院菊會
鍬さげて神農顏や菊の花  ゝ

菊園や歩きながらの小盃  ゝ

杖先で畫解するなりきくの花  ゝ

入道の大鉢巻できくの花  ゝ

下戸菴が疵なりこんな菊の花  ゝ

 さと女笑顔して夢に見へけるまゝを
頬ぺたにあてなどしたる眞瓜かな  ゝ

どう追れても人里を渡り鳥  ゝ

山雀の輪拔しながらわたりけり  ゝ

鵙の聲かんにん袋きれたりな  ゝ

蟷螂や五分の魂是見よと  ゝ

 高井野の高みに上りて
秋風や磁石にあてる古郷山  ゝ

行灯を松に釣して小夜砧  ゝ

行な雁往ばどつちも秋の暮  ゝ

 若僧の扇面に
影法師に耻よ夜寒のむだ歩き  ゝ

こんな村なんとの行か渡り鳥 白飛

藪陰やことし酒屋のことし酒 土英

 老樂
子どもらを心でおがむ夜寒かな 一茶

こほろぎのとぶや唐箕のほこり先 一茶

小菊なら繩目の耻はなかるべし  ゝ

 戸迷ひせし折からに
小便所爰と馬よぶ夜寒かな  ゝ

喧嘩すなあひみたがひの渡り鳥  ゝ

さをしかやゑひしてなめるけさの霜  ゝ

狼は糞ばかりでも寒かな  ゝ

一つかみ塗樽拭ふ紅葉かな  ゝ

むら千鳥そつと申せばばつと立  ゝ

炭の火や朝の祝儀の咳ばらひ  ゝ

三介が敲く木魚もしぐれけり  ゝ

木がらしやから呼されし按摩坊  ゝ

 善光寺門前憐乞食
重箱の錢四五文や夕時雨  ゝ

大根引拍子にころり小僧かな  ゝ

はつ雪の降り捨てある家尻哉  ゝ

木からしや折介歸る寒さ橋  ゝ

菜畠を通してくれる十夜哉  ゝ

雪ちるやおどけもいへぬしなの空  ゝ

能なしは罪も又なし冬籠  ゝ

 強盗はやりければ
張番に菴とられけり夜の霜  ゝ

彼是といふも當坐ぞ雪佛  ゝ

お袋がお福手ちぎる指南哉  ゝ

餅搗が隣へ來たといふ子かな  ゝ

 餅花
かまけるな柳の枝にもちがなる  ゝ

子のまねを親もするなり節季候  ゝ

 東に下らんとして中途迄出たるに
椋鳥と人に呼るゝ寒かな  ゝ

 護持院原
木がらしや廿四文の遊女小屋 一茶

 兩國橋
寒垢離にせなかの龍の披露かな  ゝ

 かも川をわたらじとちかひし人さへあるにひと度籠りし深山を下りてしら髪つむりを吹れつゝ名利の地に交る
   恥かしやまかり出てとる江戸のとし  ゝ

其迹は子どもの聲や鬼やらひ  ゝ

 小人閑居成不善
冬籠り惡く物喰を習けり  ゝ

 廿一日節分
一聲に此世の鬼は迯るよな  ゝ

けふからは正月分ンぞ麥の色  ゝ

 札納
梅の木や御祓箱を負ながら  ゝ

 二十七日晴 坊守り朝とく起て飯を焚ける折から、東隣の園右衞門といふ者の餅搗なれば、例の通り來たるべし、冷てはあしかりなん、ほかほか湯けぶりのたつうち賞翫せよといふからに、今や今やと待にまちて、飯は氷りのごとく冷えて、餅はつひに來ずなりぬ
   我門へ來さうにしたり配餅 一茶

ともかくもあなた任せのとしのくれ 一茶

文政二年十二月廿九日