山暝聽猿愁、
滄江急夜流。 風鳴兩岸葉、 月照一孤舟。 建德非吾土、 維揚憶舊遊。 還將兩行涙、 遙寄海西頭。 |
山暝くらくして猿愁を聽き、
滄江さうかう急ぎて夜に流る。 風は鳴る兩岸の葉、 月は照らす一孤舟いちこしう。 建德けんとくは吾が土とに非ず、 維揚ゐやうは舊遊を憶ふ。 還また兩行の涙を將もって、 遙かに海西かいせいの頭ほとりに寄す。 |
|
|
我宿五松下、
寂寥無所歡。 田家秋作苦、 鄰女夜舂寒。 跪進雕胡飯、 月光明素盤。 令人慚漂母、 三謝不能餐。 |
我五松ごしょうの下もとに宿しゅくし、 |
|
|
有客有客字子美、
白頭亂髮垂過耳。 歳拾橡栗隨狙公、 天寒日暮山谷裏。 中原無書歸不得、 手脚凍皴皮肉死。 嗚呼 一歌兮歌已哀、 悲風爲我從天來。 |
客かく有り客かく有り字あざなは子美しび、 |
|
|
|
|
鷲翎金僕姑、
燕尾繍蝥弧。 獨立揚新令、 千營共一呼。 |
鷲翎しうれいの金僕姑きんぼくこ、 |
十年離亂後、
長大一相逢。 問姓驚初見、 稱名憶舊容。 別來滄海事、 語罷暮天鐘。 明日巴陵道、 秋山又幾重。 |
十年離亂りらんの後のち、 |
山石 韓愈 山石犖确行徑微、 黄昏到寺蝙蝠飛。 升堂坐階新雨足、 芭蕉葉大支子肥。 僧言古壁佛畫好、 以火來照所見稀。 鋪床拂席置羹飯、 疏糲亦足飽我飢。 夜深靜臥百蟲絶、 清月出嶺光入扉。 天明獨去無道路、 出入高下窮煙霏。 山紅澗碧紛爛漫、 時見松櫪皆十圍。 當流赤足蹋澗石、 水聲激激風吹衣。 人生如此自可樂、 豈必局束爲人鞿。 嗟哉吾黨二三子、 安得至老不更歸。 |
|
|
|
|
離離原上草、
一歳一枯榮。 野火燒不盡、 春風吹又生。 遠芳侵古道、 晴翠接荒城。 又送王孫去、 萋萋滿別情。 |
離離りりたり原上げんじゃうの草、 |
|
|
|
|
君知妾有夫、
贈妾雙明珠。 感君纏綿意、 繋在紅羅襦。 妾家高樓連苑起、 良人執戟明光裏。 知君用心如日月、 事夫誓擬同生死。 還君明珠雙涙垂、 何不相逢未嫁時。 |
君は妾せふに 夫をっと有るを知りて、 |
|
|
|
|
|
|
海畔尖山似劍鋩、
秋來處處割愁腸。 若爲化得身千億、 散向峰頭望故鄕。 |
海畔かいはんの尖山せんざんは劍鋩けんばうに似にて、 |
城上高樓接大荒、
海天愁思正茫茫。 驚風亂颭芙蓉水、 密雨邪侵薛茘牆。 嶺樹重遮千里目、 江流曲似九迴腸。 共來百越文身地、 猶是音書滯一鄕。 |
城上じゃうじゃうの高楼大荒たいくゎうに接し、 |
手種黄柑二百株、
春來新葉遍城隅。 方同楚客憐皇樹、 不學荊州利木奴。 幾歳開花聞噴雪、 何人摘實見垂珠。 若教坐待成林日、 滋味還堪養老夫。 |
手てづから種うう黄柑くゎうかん二百株しゅ、
春 來きたれば新葉しんえふ城隅じゃうぐうに遍あまねし。 方まさに楚客そかくと同じく皇樹くゎうじゅを憐れみ、 學ばず荊州けいしうの利りする木奴ぼくどに。 幾いづれの歳か花開きて雪の噴ふくを聞き、 若もし林を成すの日を坐待ざたいせしめんか、 滋味還なほも老夫を養うに堪たへん。 |
|
樂天と同ともに棲靈寺の塔に登る 歩歩ほほ相あひ攜たづさへれば難かたきを覺えず、 九層きうそうの雲外うんがい闌干らんかんに倚よる。 忽然こつぜんとして笑ひて語る半天の上、 無限の遊人いうじん眼まなこを舉あげて看る。 |
巴山楚水淒涼地、
二十三年棄置身。 懷舊空吟聞笛賦、 到鄕翻似爛柯人。 沈舟側畔千帆過、 病樹前頭萬木春。 今日聽君歌一曲、 暫憑杯酒長精神。 |
巴山はざん楚水そすゐ淒涼せいりゃうの地、 |
紫陌紅塵拂面來、
無人不道看花回。 玄都觀裏桃千樹、 盡是劉郎去後栽。 |
紫陌しはくの紅塵こうぢん面めんを拂はらひて來きたり、 |
二十餘年作逐臣、
歸來還見曲江春。 遊人莫笑白頭醉、 老醉花間能幾人。 |
二十餘年逐臣ちくしんと作なり、 |
|
八詠應制 二首之一 上官儀
啓重帷、重帷照文杏。 翡翠藻輕花、 流蘇媚浮影。 瑤笙燕始歸、 金堂露初晞。 風隨少女至、 虹共美人歸。 羅薦已擘鴛鴦被、 綺衣復有蒲萄帶。 殘紅豔粉映簾中、 戲蝶流鶯聚窗外。 洛濱春雪迴、 巫峽暮雲來。 雪花飄玉輦、 雲光上璧臺。 共待新妝出、 清歌送落梅。 |
|
|
帝里重陽節、
香園萬乘來。 卻邪萸入佩、 獻壽菊傳杯。 塔類承天湧、 門疑待佛開。 睿詞懸日月、 長得仰昭回。 |
帝里の重陽節、 |
三冬季月景隆年、
萬乘觀風出灞川。 遙看電躍龍爲馬、 囘矚霜原玉作田。 |
三冬の季月隆さかんなる年を
景ことほぎ、 |
|
|
密葉因裁吐、
新花逐翦舒。 攀條雖不謬、 摘蕊詎知虚。 春至由來發、 秋還未肯疏。 借問桃將李、 相亂欲何如。 |
密葉みつえふ裁たつに因よって吐ひらき、 |
逐仙賞、展幽情。
踰昆閬、邁蓬瀛。 仝 三 檀欒竹影、 飆風松聲。 不煩歌吹、 自足娯情。 仝 四 仰循茅宇、 俯眄喬枝。 煙霞問訊、 風月相知。 仝 五 枝條鬱鬱、 文質彬彬。 山林作伴、 松桂為鄰。 仝 六 淸波洶湧、 碧樹冥蒙。 莫怪留歩、 因攀桂叢。 仝 七 莫論圓嶠、 休説方壺。 何如魯館、 即是仙都。 仝 九 登山一長望、 正遇九春初。 結駟填街術、 閭閻滿邑居。 鬥雪梅先吐、 驚風柳未舒。 直愁斜日落、 不畏酒尊虚。 仝 十 霽曉氣清和、 披襟賞薜蘿。 玳瑁凝春色、 琉璃漾水波。 跂石聊長嘯、 攀松乍短歌。 除非物外者、 誰就此經過。 仝 十一 暫爾遊山第、 淹留惜未歸。 霞窗明月滿、 澗戸白雲飛。 書引藤爲架、 人將薜作衣。 此眞攀玩所、 臨睨賞光輝。 仝 十二 放曠出煙雲、 蕭條自不羣。 漱流清意府、 隱儿避囂氛。 石畫妝苔色、 風梭織水文。 山室何爲貴、 唯餘蘭桂熏。 仝 十三 策杖臨霞岫、 危歩下霜蹊。 志逐深山靜、 途隨曲澗迷。 漸覺心神逸、 俄看雲霧低。 莫怪人題樹、 祗爲賞幽棲。 仝 十四 攀藤招逸客、 偃桂協幽情。 水中看樹影、 風裏聽松聲。 仝 十五 攜琴侍叔夜、 負局訪安期。 不應題石壁、 爲記賞山時。 仝 十六 泉石多仙趣、 巖壑寫奇形。 欲知堪悅耳、 唯聽水泠泠。 |
仙を逐おひて賞めで、幽情を展のぶ。
昆閬こんらうを踰こえ、蓬瀛ほうえいを邁ゆかん。 檀欒だんらんたる竹影ちくえい、 飆風べういつたる松聲しょうせい。 歌吹かすゐを煩わづらはさざれど、 自おのづから 娯情ごじゃう足たる。 茅宇ばううを仰循ぎゃうじゅんし、 喬枝けうしを俯眄ふべんす。 煙霞問ひ訊たづぬ、 風月相あひ知らん。 枝條しでう鬱鬱うつうつとして、 文質彬彬ぶんしつひんぴんたり。 山林を伴ともと作なし、 松桂を鄰と為なす。 淸波洶湧して、 碧樹冥蒙たり。 怪しむ莫かれ留歩するを、 桂叢を攀くに因る。 圓嶠ゑんけうを論ずる莫なかれ、 方壺はうこを説くを休やめよ。 何なんぞ魯館ろくゎんに 如しかん、 即すなはち是これ仙都なり。 山に登りて一いつに長望すれば、 正に 九春きうしゅんの初めに遇あふ。 結駟けっし街術がいじゅつを 填うづめ、 閭閻りょえんに邑居いふきょ滿つ。 雪と鬥たたかひ梅先まづ 吐ひらくも、 風に驚きて柳未いまだ 舒のべず。 直ただに斜日しゃじつの落つるを愁うれひ、 酒尊しゅそん虚うつろとなるを畏おそれず。 霽曉せいげう氣清和にして、 襟えりを披ひらき薜蘿へいらを賞しゃうす。 玳瑁たいまい春色を凝こらし、 琉璃るり水波に漾ただよはす。 石いはに跂つまだちて聊いささか長嘯し、 松に攀よりて乍しばらく短歌す。 物外ぶつぐゎい者を除くに非ざれば、 誰たれか此ここに就つきて經過せん。 暫爾ざんじ山第さんていに遊び、 淹留えんりう惜おしみて未いまだ歸らず。 霞窗かさうに明月滿ち、 澗戸かんこに白雲飛ぶ。 書藤とうを引もって架かと爲なし、 人薜へいを將もって衣と作なす。 此これ眞まことに玩所ぐゎんしょと攀したひ、 臨睨りんげいに光輝を賞す。 放曠はうくゎうすれば煙雲えんうんを出いだし、 蕭條せうでうとして自おのづから羣むれず。 流れに漱くちすすぐ清意府せいいふ、 儿かいに隱かくれて囂氛がうふんを避さく。 石畫せきぐゎ苔色たいしょくを妝よそほひ、 風梭ふうさ水文すゐもんを織おる。 山室何爲なんすれぞ貴たふとき、 唯ただ蘭桂けいらんの熏かをりの餘あますあるのみ。 杖つゑを策つきて霞岫かしうに臨み、 歩危くして霜蹊さうけいを下る。 志は深山の靜かなるを逐おひ、 途みちは曲澗きょくかんに隨したがひて迷ふ。 漸やうやく心神の逸はやるを覺おぼえ、 俄にはかに雲霧うんむの低きを看る。 怪あやしむ莫なかれ人樹に題するを、 祗ただ幽棲いうせいを賞せんが爲ためなり。 藤に攀よぢて逸客を招き、 桂を偃ふせて幽情に協かなふ。 水中に樹影を看て、 風裏に松聲を聽く。 琴きんを攜たづさへて叔夜しゅくやに侍じし、 局を負おひて安期あんきを訪おとなふ。 應まさに石壁に題すべからざるも、 爲ゆゑに記す山を賞せし時を。 泉石仙趣多く、 巖壑がんがく奇形を寫す。 耳に 唯ただ水の泠泠れいれいたるを聽くのみ。 |
|
|
|
瑤池やうちの阿母あぼ綺窗きさうを開き、 八駿はっしゅん日に行ゆくこと三萬里、 穆王ぼくわう何事なにごとぞ重かさねては來きたらず。 |
|
相あひ見る時難かたく別るるも亦また難かたく、 東風とうふう力ちから無く百花殘くづる。 春蠶しゅんさん死しに到りて絲いと方まさに盡つき、 蠟炬らふきょ灰はひと成りて涙始めて乾かはく。 曉鏡げうきゃうに但ただ愁うれふ雲鬢うんびんの改まるを、 夜吟やぎん應まさに覺おぼゆべし月光の寒きを。 蓬山ほうざん此ここより去ること多路たろ無く、 青鳥せいてう殷勤いんぎん爲ために 探さぐり看みよ。 |