醉留東野 韓愈 昔年 因讀李白杜甫詩。 長恨二人不相從。 吾與東野生並世、 如何復躡二子蹤。 東野不得官、 白首誇龍鍾。 韓子稍姦黠、 自慚青蒿倚長松。 低頭拜東野、 願得終始如駏蛩。 東野不迴頭、 有如寸筳撞鉅鐘。 我願身爲雲、 東野變爲龍。 四方上下逐東野、 雖有離別無由逢。 |
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酒家に題す 酒は綠にして花は紅あかく客は詩を愛す、 落花の春岸酒家の旗。 尋思じんしし世を避けて逋客ほかくと爲なり、 醉ゑはずして長つねに醒むるは也また是これ癡ならん。 |
落日山水好、
漾舟信歸風。 玩奇不覺遠、 因以縁源窮。 遙愛雲木秀、 初疑路不同。 安知清流轉、 偶與前山通。 捨舟理輕策、 果然愜所適。 老僧四五人、 逍遙蔭松柏。 朝梵林未曙、 夜禪山更寂。 道心及牧童、 世事問樵客。 暝宿長林下、 焚香臥瑤席。 澗芳襲人衣、 山月映石壁。 再尋畏迷誤、 明發更登歴。 笑謝桃源人、 花紅復來覿。 |
落日山水好く、 |
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滁州ちょしうの西澗せいかん 獨ひとり憐あはれむ幽草いうさう澗邊かんへんに生じ、 上に黄鸝くゎうりの深樹に鳴く有るを。 春潮雨を帶びて晩來急に、 野渡やと人無くして舟自ら橫たふ。 |
隱隱たる飛橋は野煙を隔へだて、 石磯の西畔に漁船に問ふ。 桃花は盡日流水に隨ひて、 洞は淸谿せいけいの何處いづこの邊にか在る」と。 |
襄陽歌 李白 落日欲沒峴山西、 倒著接籬花下迷。 襄陽小兒齊拍手、 攔街爭唱白銅鞮。 傍人借問笑何事、 笑殺山公醉似泥。 鸕鶿杓、鸚鵡杯。 百年三萬六千日、 一日須傾三百杯。 遙看漢水鴨頭綠、 恰似葡萄初醗醅。 此江若變作春酒、 壘麹便築糟丘臺。 千金駿馬換小妾、 笑坐雕鞍歌落梅。 車旁側挂一壺酒、 鳳笙龍管行相催。 咸陽市中歎黄犬、 何如月下傾金罍。 君不見晉朝羊公 一片石、 龜頭剥落生莓苔。 涙亦不能爲之墮、 心亦不能爲之哀。 清風朗月 不用一錢買、 玉山自倒非人推。 舒州杓、力士鐺。 李白與爾同死生、 襄王雲雨今安在、 江水東流猿夜聲。 |
襄陽じゃうやうの歌 落日沒せんと欲す峴山けんざんの西、 倒さかしまに接籬せふりを著つけて花の下に迷ふ。 襄陽じゃうやうの小兒齊ひとしく手を拍うち、 街を攔さえぎりて爭きそひて唱ふ『白銅鞮』。 傍人借問す何事をか笑ふと、 笑殺す山公の醉ゑひて泥の似ごときを。 鸕鶿ろじの杓しゃく、鸚鵡あうむの杯。 百年三萬六千日、 一日須すべからく傾くべし三百杯。 遙かに看る漢水鴨頭の綠、 恰あたかも似たり葡萄の初めて醗醅はつばいするに。 此の江かう若もし變じて春酒と作ならば、 壘麹るゐきく便すなはち築かん糟丘臺さうきうだい。 千金の駿馬小妾と換へ、 笑ひて雕鞍に坐して『落梅』を歌ふ。 車旁側に挂く一壺の酒、 鳳笙龍管行ゆくゆく相ひ催うながす。 咸陽の市中に黄犬を歎くは、 何ぞ如しかん月下に金罍きんらいを傾かたぶくるに。 君見ずや晉朝の羊公 一片の石、 龜頭剥落して莓苔ばいたい生ず。 涙も亦また之これが爲ために墮おつる能あたはず、 心も亦また之これが爲ために哀しむ能あたはず。 清風朗月 一錢の買ふを用もちゐず、 玉山自おのづから倒たふる人の推おすに非ず。 舒州じょしうの杓、力士の鐺さう。 李白爾なんぢと死生を同くせん、 襄王じゃうわうの雲雨今安いづくにか在る、 江水は東流して猿は夜に聲なく。 |
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柳州の峨山に登る 荒山秋日午ごなり、 獨ひとり上のぼりて意悠悠いういうたり。 如何いかんぞ望鄕の處、 西北は是これ融州ゆうしう。 |
疎陂驛に宿す 秋は棠梨を染めて葉半ば紅なり、 荊州東に望めば草空に平かなり。 誰か知らん孤宦天涯の意を、 微雨瀟瀟たり古驛の中。 |
朱大の秦に入るを送る 遊人五陵に去る、 寶劍直あたひ千金。 手を分つとき脱して相ひ贈る、 平生一片の心。 |
三日入廚下、
洗手作羹湯。 未諳姑食性、 先遣小姑嘗。 |
三日に廚下ちゅうかに入り、
手を洗ひて羹湯かうたうを作る。 未だ姑の食性を諳そらんぜざれば、 先づ小姑をして嘗めしむ。 |
遊子の吟 慈母手中の線いと、 遊子身上の衣ころも。 行くに臨みて密密に縫ふは、 意に恐る遲遲として歸らんことを。 誰たれか言ふ寸草の心の、 三春の暉きに報い得えんとは。 |
西施昔日浣紗くゎんさの津しん、 石上の靑苔人を思殺す。 一たび姑蘇を去りて復また返らず、 岸傍の桃李誰たが爲にか春なる。 |
禪院に題す 觥船くゎうせん一棹いつたう百分空し、 十歳青春公に負そむかず。 今日鬢絲びんし禪榻ぜんたふの畔ほとり、 茶烟輕く颺あがる落花の風。 |
長安少年無遠圖、
一生惟羨執金吾。 麒麟前殿拜天子、 走馬西撃長城胡。 胡沙獵獵吹人面、 漢虜相逢不相見。 遙聞撃鼓動地來、 傳道單于夜猶戰。 此時顧恩寧顧身、 爲君一行摧萬人。 壯士揮戈回白日、 單于濺血染朱輪。 歸來飲馬長城窟、 長城道傍多白骨。 問之耆老何代人、 云事秦王築城卒。 黄昏塞北無人煙、 鬼哭啾啾聲沸天。 無罪見誅功不賞、 孤魂流落此城邊。 當昔秦王按劍起、 諸侯膝行不敢視。 富國強兵二十年、 築怨興徭九千里。 秦王築城何太愚、 天實亡秦非北胡。 一朝禍起蕭墻内、 渭水咸陽不復都。 |
長安の少年遠圖無く、
一生惟ただ羨うらやむ執金吾。 麒麟前殿に天子に拜し、 馬を走らせ西長城の胡を撃つ。 胡沙こさ獵獵れふれふとして人面に吹き、 漢虜相あひ逢はんとすれども相ひ見まみえず。 遙かに聞く撃鼓の地を動とよもして來るを、 傳へ道いふ單于夜猶ほ戰ふと。 此の時恩を顧かへりみるも寧なんぞ身を顧かへりみんや、 君が爲一いつに行きて萬人を摧くだく。 壯士戈ほこを揮ふるひて白日を回らし、 單于血を濺したたらせて朱輪を染む。 歸り來りて馬に飲みづかふ長城の窟、 長城の道傍白骨多し。 之これを耆老きらうに問ふ何代の人なりやと、 云ふ事には秦王築城の卒と。 黄昏の塞北人煙無く、 鬼哭きこく啾啾しうしうとして聲天に沸わく。 罪無くして誅せられ功あるも賞せられず、 孤魂流落す此の城邊。 當昔たうせき秦王劍を按じて起たば、 諸侯膝行して敢あへて視みず。 富國強兵二十年、 怨みを築き徭えうを興おこす九千里。 秦王城を築くは何たる太愚、 天實げに秦を亡ぼすは北胡に非ず。 一朝禍わざはい起こすは蕭墻せうしゃうの内、 渭水咸陽復また都せず。 |
花を歎く 自ら是ぜとし春を尋ぬるに 須もちゐず惆悵ちうちゃうとして芳時を怨むを。 狂風落とし盡す深紅の色、 綠葉陰かげを成して子枝に滿つ。 |
僧院に題す 虎溪こけい閒月かんげつ引きて相ひ過ぎ、 雪を帶ぶる松枝薜蘿へいらを掛かく。 無限の靑山行ゆくゆく盡つきんと欲ほっし、 白雲深き處老僧多し。 |
天山雪後海風寒く、 橫笛偏ひとへに吹く『行路難』。 磧せき裏の征人三十萬、 一時に首かうべを回めぐらして月中に看る。 |
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塔勢如湧出、
孤高聳天宮。 登臨出世界、 磴道盤虚空。 突兀壓神州、 崢嶸如鬼工。 四角礙白日、 七層摩蒼穹。 下窺指高鳥、 俯聽聞驚風。 連山若波濤、 奔走似朝東。 靑松夾馳道、 宮觀何玲瓏。 秋色從西來、 蒼然滿關中。 五陵北原上、 萬古靑濛濛。 淨理了可悟、 勝因夙所宗。 誓將挂冠去、 覺道資無窮。 |
塔勢湧出ゆうしゅつするが如く、
孤高天宮に聳そびゆ。 登臨世界を出いで、 磴道とうだう虚空こくうに盤る。 突兀とっこつとして神州を壓し、 崢嶸さうくゎうとして鬼工の如し。 四角白日を礙ささへ、 七層蒼穹さうきゅうを摩す。 下窺して高鳥を指し、 俯聽して驚風を聞く。 連山波濤の若ごとく、 奔走東に朝むかふに似たり。 青松馳道ちだうを夾み、 宮觀何ぞ玲瓏れいろうたる。 秋色西より來きたり、 蒼然さうぜんとして關中に滿つ。 五陵北原の上ほとり、 萬古ばんこ青濛濛せいもうもう。 淨理了つひに悟る可べし、 勝因夙つとに宗とする所。 誓ひて將まさに冠を挂かけて去り、 覺道無窮に資せんとす。 |
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玉關にて長安の李主簿に寄す 東のかた長安を去ること萬里餘、 故人何ぞ惜しむ一行の書。 玉關西望すれば腸はらわた斷つに堪へんや、 況いはんや復また明朝は是これ歳除さいぢょなるをや。 |
幽州新歳の作 去歳荊南梅雪に似て、 今年薊北雪梅の如し。 共に知る人事何ぞ常に定まらん、 且し喜ぶ年華去りて復ま來るを。 邊鎮の戍歌連夜動き、 京城の燎火徹明して開く。 遙遙として西のかた長安の日に向ひ、 願はくは南山の壽じゅ一杯を上たてまつらん。 |
懷君屬秋夜、
散歩詠涼天。 山空松子落、 幽人應未眠。 |
君を懷ひて秋夜に屬し、
散歩して涼天に詠ず。 山空しくして松子しょうし落ち、 幽人いうじん應まさに未だ眠らざるべし。 |
昔日芙蓉の花、 今成る斷根の草。 色を以て他人に事つかへ、 能よく幾時いくときの好よろしきを得たりや。 |
歳暮陰陽短景を催うながし、 天涯の霜雪さうせつ寒宵かんせうに霽はる。 五更の鼓角聲悲壯に、 三峽の星河影動搖す。 野哭やこく千家戰伐せんばつを聞き、 夷歌いか幾處か漁樵ぎょせうより起こる。 臥龍ぐゎりょう躍馬やくば終つひに黄土、 人事音書いんしょ漫そぞろに寂寥。 |
廬山の五老峰を望む 廬山東南五老峯、 青天削り出だす金芙蓉。 九江の秀色を攬結らんけつす可べき、 吾われ此この地を將もって雲松に巣すくはん。 |
綠樹陰かげ濃こまやかにして夏日長く、 樓臺ろうだい影を倒さかしまにして池塘に入いる。 水精すゐしゃうの簾れん動きて微風起こり、 一架の薔薇しゃうび滿院香かんばし。 |
秋の思い 洛陽城裏秋風を見る、 家書を作らんと欲して意 萬重ばんちょう 。 復また恐る匆匆そうそうとして説ときて盡くせざるを、 行人發たつに臨のぞみて又封を開く。 |
嘉陵驛かりょうえきに題す 悠悠たる風旆ふうはい山川を繞めぐり、 山驛空濛くうもうとして雨煙と作なる。 路嘉陵かりょうに半ばして頭かうべ已すでに白く、 蜀門西のかた更に青天に上のぼらん。 |
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別れを恨む 洛城らくじゃう一別四千里、 胡騎こき長驅ちゃうくす五六年。 草木變衰へんすゐして劍外けんがいに行き、 兵戈へいくゎ阻絶そぜつして江邊かうへんに老ゆ。 家を思ひ月に歩して清宵せいせうに立ち、 弟を憶おもひ雲を看て白日に眠る。 聞道きくならく河陽近ごろ勝かちに乘ずと、 司徒しとよ急に爲ために幽燕いうえんを破れ。 |
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名花傾國けいこく兩ふたつながら相あひ歡よろこび、 長とこしへに君王の笑ひを帶びて看ることを得たり。 春風無限の恨うらみを解釋して、 沈香亭ぢんかうてい北闌干らんかんに倚よる。 |
鞭を鳴らして酒肆しゅしに過よぎり、 袨服げんふくして倡門しゃうもんに遊ぶ。 百萬一時いちじに盡くるも、 情を含みて片言へんげん無し。 |
笙歌登畫船、
十日淸明前。 山秀白雲膩、 溪光紅粉鮮。 欲開未開花、 半陰半晴天。 誰知病太守、 猶得作茶仙。 |
笙歌しゃうか畫船ぐゎせんに登り、 |
武陵の田太守に答ふ 劍に仗よりて千里を行き、 微軀びく一言いちげんに感ず。 曾かつて大梁たいりゃうの客かくと爲りたれば、 信陵の恩に負そむかず。 |
杭州の春望 望海樓ばうかいろう明らかにして曙霞しょかを照らし、 護江ごかう堤つつみ白くして晴沙せいさを蹋ふむ。 濤聲たうせい夜入いる伍員ごうんの廟べう、 柳色りうしょく春藏ざうす蘇小そせうの家。 紅袖こうしう綾あやを織りて柿蒂したいを誇り、 青旗酒を沽かひて梨り花くゎを趁おふ。 誰たれか開く湖寺こじ西南の路みち、 草は綠に裙腰くんえう一道いちだう斜めなり。 |
一日今年始まり、 一年前事空し。 凄涼せいりゃうたり百年の事、 應まさに一年と同じなるべし。 |
麗人行 杜甫 三月三日天氣新、 長安水邊多麗人。 態濃意遠淑且真、 肌理細膩骨肉勻。 繍羅衣裳照暮春、 蹙金孔雀銀麒麟。 頭上何所有、 翠爲㔩葉垂鬢脣。 背後何所見、 珠壓腰衱穩稱身。 就中雲幕椒房親、 賜名大國虢與秦。 紫駝之峰出翠釜、 水精之盤行素鱗。 犀箸厭飫久未下、 鸞刀縷切空紛綸。 黄門飛鞚不動塵、 御廚絡繹送八珍。 簫管哀吟感鬼神、 賓從雜遝實要津。 後來鞍馬何逡巡、 當軒下馬入錦茵。 楊花雪落覆白蘋、 靑鳥飛去銜紅巾。 炙手可熱勢絶倫、 慎莫近前丞相嗔。 |
三月三日天氣新たに、 長安の水邊麗人多し。 態は濃く意は遠くして淑且かつ真に、 肌理きりは細膩さいぢにして骨肉は勻ひとし。 繍羅しうらの衣裳は暮春に照はゆる、 蹙金しゅくきんの孔雀くじゃく銀の麒麟きりん。 頭上何の有る所ぞ、 翠すゐを㔩葉あふえふと爲なして鬢びん脣しんに垂たる。 背後何の見る所ぞ、 珠は腰衱えうけふを壓して穩やかに身に稱かなふ。 就中なかんづく雲幕の椒房せうばうの親しん、 名を賜ふ大國虢くゎくと秦しんと。 紫駝しだの峰を翠釜すゐふより出いだし、 水精すゐしゃうの盤に素鱗そりん行くばる。 犀箸さいちょ厭飫えんよして久しく未だ下さず、 鸞刀らんたう縷切るせつして空しく紛綸ふんりんたり。 黄門鞚くつわを飛ばして塵を動かさず、 御廚ぎょちゅう絡繹らくえきとして八珍を送る。 簫管せうくゎん哀吟して鬼神をも感ぜしめ、 賓從ひんじゅう雜遝ざったふして要津えうしんに實みつ。 後れ來きたる鞍馬あんばは何ぞ逡巡しゅんじゅんする、 軒のきに當たりて馬より下りて錦茵きんいんに入る。 楊花やうくゎ雪のごとく落ちて白蘋はくひんを覆おほひ、 靑鳥飛び去りて紅巾こうきんを銜ふくむ。 手を炙あぶらば熱す可べし勢は絶倫なり、 慎つつしみて近前する莫れ丞相じょうしゃう嗔いからん。 |
京けいに入いる使つかひに逢あふ 故園東に望めば路みち漫漫まんまん、 雙袖さうしう龍鐘りょうしょう涙乾かはかず。 馬上相あひ逢あひて紙筆しひつ無く、 君に憑よりて傳語して平安を報ぜん。 |
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戲れに六絶句を爲す 王わう楊やう盧ろ駱らくは當時の體、 輕薄文を爲して哂わらひ未いまだ休やまず。 爾曹じさう身と名と倶ともに滅ぶも、 廢すたれざる江河萬古に流る。 |
春江花月夜 張若虚
春江潮水連海平、海上明月共潮生。 灩灩隨波千萬里、 何處春江無月明。 江流宛轉遶芳甸、 月照花林皆似霰。 空裏流霜不覺飛、 汀上白沙看不見。 江天一色無纖塵、 皎皎空中孤月輪。 江畔何人初見月、 江月何年初照人。 人生代代無窮已、 江月年年祗相似。 不知江月待何人、 但見長江送流水。 白雲一片去悠悠、 青楓浦上不勝愁。 誰家今夜扁舟子、 何處相思明月樓。 可憐樓上月裴回、 應照離人妝鏡臺。 玉戸簾中卷不去、 擣衣砧上拂還來。 此時相望不相聞、 願逐月華流照君。 鴻雁長飛光不度、 魚龍潛躍水成文。 昨夜閒潭夢落花、 可憐春半不還家。 江水流春去欲盡、 江潭落月復西斜。 斜月沈沈藏海霧、 碣石瀟湘無限路。 不知乘月幾人歸、 落月搖情滿江樹。 |
春江の潮水海に連つらなりて平たひらかに、 海上の明月潮うしほと共に生ず。 灩灩えんえん波に隨したがひて千萬里せんばんり、 何處いづこの春江か月明げつめい無からん。 江流かうりう宛轉ゑんてんとして芳甸はうでんを遶めぐり、 月は花林を照らして皆霰あられに似たり。 空裏くうりの流霜りうさう飛ぶを覺えず、 汀上ていじゃうの白沙はくさ看みれども見えず。 江天かうてん一色纖塵せんぢん無く、 皎皎けうけうたる空中月輪孤こなり。 江畔かうはん何いづれの人か初めて月を見、 江月かうげつ何いづれの年か初めて人を照らしし。 人生代代だいだい窮きはまりて已やむこと無く、 江月年年相あひ似にるを望のぞむ。 知らず江月何人なんぴとをか待ち、 但ただ見る長江流水を送るを。 白雲一片去りて悠悠いういう、 青楓せいふう浦上ほじゃう愁うれひに勝たへず。 誰家たれぞ今夜扁舟へんしうの子し、 何處いづこの相思さうしか明月の樓。 憐む可べし樓上に月裴回はいくゎいし、 應まさに離人りじんを照らして鏡臺に妝よそほふべし。 玉戸ぎょくこ簾中れんちゅう卷けども去らず、 擣衣たういの砧上ちんじゃう拂はらへども還また來たる。 此の時相あひ望めども相あひ聞こえず、 願はくは月華を逐おひて流れて君を照らさん。 鴻雁こうがん長く飛びて光度わたらず、 魚龍ぎょりょう潛ひそみ躍をどりて水文もんを成す。 昨夜閒潭かんたんに落花を夢み、 憐む可べし春半ばにして家に還かへらず。 江水春を流して去り盡つきんと欲ほっし、 江潭かうたんの落月復また西に斜く。 斜月しゃげつ沈沈ちんちんとして海霧かいむに藏かくれ、 碣石けっせき瀟湘せうしゃう無限の路。 知らず月に乘じて幾人いくにんか歸る、 落月情を搖ゆるがして江樹に滿つ。 |
古從軍行 李頎 白日登山望烽火、 黄昏飮馬傍交河。 行人刁斗風沙暗、 公主琵琶幽怨多。 野雲萬里無城郭、 雨雪紛紛連大漠。 胡雁哀鳴夜夜飛、 胡兒眼涙雙雙落。 聞道玉門猶被遮、 應將性命逐輕車。 年年戰骨埋荒外、 空見蒲桃入漢家。 |
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燕歌行 高適 漢家煙塵在東北、 漢將辭家破殘賊。 男兒本自重橫行、 天子非常賜顏色。 摐金伐鼓下楡關、 旌旆逶迤碣石間。 校尉羽書飛瀚海、 單于獵火照狼山。 山川蕭條極邊土、 胡騎憑陵雜風雨。 戰士軍前半死生、 美人帳下猶歌舞。 大漠窮秋塞草腓、 孤城落日鬥兵稀。 身當恩遇恆輕敵、 力盡關山未解圍。 鐵衣遠戍辛勤久、 玉箸應啼別離後。 少婦城南欲斷腸、 征人薊北空回首。 邊庭飄飄那可度、 絶域蒼茫更何有。 殺氣三時作陣雲、 寒聲一夜傳刁斗。 相看白刃血紛紛、 死節從來豈顧勳。 君不見 沙場征戰苦、 至今猶憶李將軍。 |
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不見
走馬川行雪海邊、 平沙莽莽黄入天。 輪臺九月風夜吼、 一川碎石大如斗、 隨風滿地石亂走。 匈奴草黄馬正肥、 金山西見煙塵飛、 漢家大將西出師。 將軍金甲夜不脱、 半夜軍行戈相撥、 風頭如刀面如割。 馬毛帶雪汗氣蒸、 五花連錢旋作冰、 幕中草檄硯水凝。 虜騎聞之應膽懾、 料知短兵不敢接、 車師西門佇獻捷。 |
君見ずや |
北風捲地白草折、
胡天八月即飛雪。 忽然一夜春風來、 千樹萬樹梨花開。 散入珠簾濕羅幕、 孤裘不煖錦衾薄。 將軍角弓不得控、 都護鐵衣冷難著。 瀚海闌干百丈冰、 愁雲黲淡萬里凝。 中軍置酒飮歸客、 胡琴琵琶與羌笛。 紛紛暮雪下轅門、 風掣紅旗凍不翻。 輪臺東門送君去、 去時雪滿天山路。 山迴路轉不見君、 雪上空留馬行處。 |
北風地を捲き白草折れ、 |
雁門胡人の歌 高山かうざんの代郡だいぐんは東のかた燕えんに接し、 雁門がんもんの胡人家邊に近し。 胡鷹こようを解放して塞鳥さいてうを逐おひ、 能よく代馬だいばを將もって秋田に獵す。 山頭の野火やくゎ寒くして燒くこと多く、 雨裏の孤峰濕しめりて煙かすみと作る。 聞道きくならく遼西れうせいに鬥戰とうせん無く、 時時じじ醉ゑひて酒家しゅかに向おいて眠る。 |
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