川柳秘語とバレ句 六 2004/10/28 投稿者:aosagi123

木遣(きやり)木遣り音頭。
 秘語ではそれに擬して木遣り音頭の嬌声に言う。
 笛や太鼓のお囃子入りのお祭りなどに言われ、
 小咄にも五人囃子、祇園囃子、神楽囃子などの話として掲げられているのがある。
木遣りが聞こえてお祭りを子に見られ

気をやると叱られると新造云い

神楽堂笛や太鼓で味を付け

経師屋(きょうじや)経師張り屋。
 情事語では「張る」とて、張り合うこと。
 目当ての相手をつけ回すことに言う。

    不器用な経師屋やめて蝋燭屋
【蛇足】蝋燭屋は秘語の独悦者を言う。
 モノになりそうにないので、独悦に転向との句。

    張り物に娘結ばぬ頬かむり
【蛇足】頬被り(素ぼけの年少者)では、張り合っても娘の方で相手にせず結ばれないと言う句。

【行水】いわゆる盥行水。
 秘語では、昔、遊里で妓が月経時を「行水」と呼んでいた。
 「経水」を「ぎょうすい」と読ませたものだろう。

行水を座敷であびる浅黄うら
行水のわかる浅黄は垢がぬけ
垢抜けた浅黄行水聞きわける

    うすく見る位ではさす若いうち
 女郎は商売柄、この期間はほとんど短く済むように様々な方法が行われていた。
 俗には「花七日」などと言われるが、遊里では「二日」と称していた。

【兄弟】衆道では男役の者を「念者」と言い、これを「兄分」とする。
 そして両者を「兄弟」と言うことは処書に見えている。
 秘語には「義兄弟」「地兄弟」と言えば、衆道関係であり、
 そのほか「穴兄弟」「魔羅兄弟」とは三角関係の秘語となっている。

    部屋方の兄弟分は互いせん
【蛇足】大奥の女中同士での張り方仕様を言った句

相身互いとは長局の言葉

羅切してまた下になる長局

牛の角もぐと女が二人出来 両首

我が身抉ってひとの仕たさを知れ
手淫 五人組 隣の内で、
「アア、いきやすいきやす」といふは、
「こりゃ途方もない。昼中に」と門を見れば、戸が締めてある。
「モシ、昼中に何なされます」隣の亭主
「されば、貧すれば鈍するで、夜する事を昼致します」と、
 覗くもかまはず、サッサッとやる。
「コリャたまらぬ」と飛んで帰り、五人組の最中、隣の亭主が来て、
「お前は何をなされますぞ」
「ハイ、貧すりゃどんするから、二人でする事を一人で致します」
 (今歳咄・ひとりげい・安永二)

手習い
 ここにやさか峠といふ所あり、稲に穂が咲き、穂に穂が咲き、
「これ万代に珍しき」とて、急ぎ代官所へ申し上げる。
 お代官、この書き物見て、
「これはやさか峠の峠という字は、山篇に上下と書くが、このとうげという字は、手篇に上下と書いてある。何、皆のもの、誰が書いた」
「あい、五人組でござります」(明朝梅・万作・安永九)

【解説・蛇足】峠と書くべき所を手編に上下は国字。
 自衛組織の五人組とのサゲも即妙。
 手淫を見咎められた小僧が、番頭から
「とかく、かかな覚えん」といわれた
「手習い」をしていると言い訳し、
「指先でかきます」という「色の手習い」(大寄噺尻馬六編・嘉永頃)
2004/10/30
【曲取り】曲は変化のあること、面白み、味なこと、と言った意味の語。秘語では交会の様々な取り口を「曲取り」と言い、「曲つき」「曲角力」と擬称する事もあり、「乱取り」の称もある。
枕草紙は曲取りの仕様帳

羽衣がほしいで曲取りをさせる 天女の舞

好きこそ上手なれ曲取り

さて次なる芸当は女房上え

あいあいと嫁さまざまに行われ

枕絵の通りにすれば寒い

【きりぎりす】虫の名。また、吉原通いの舟の名にも通称。
 肥後では、行房における切実な情を訴える嬉声のことを言う。

    面ざしは馬に似ているきりぎりす
【蛇足】形もそうだが、馬並なのに出会って、せつせつたる嬉声と言うわけ

あれあれと櫓まらはずれてほととぎす ろ栓
鈴虫をやめくつわ虫ご寵愛 奥様とメカケ

魚鳥留(きょちょうどめ)将軍家の法会の日などには、魚鳥を売ることを禁じられたので、それから、精進することに言われた。

水切れにつき当分のうち地黄丸 腎虚
生ものを忌む毒断ちで里へやり

【錐もみ】錐は男陰の異名。きりもみは交会のこととなる。

    きりもみは押さえた人がふいてやり
【蛇足】錐もみの時には板が動かぬように押さえている者が、たまったくず粉を吹いてやるとの句意。
 バレでは、始末の作法を言ったものである。

小便の留守のうちきよ拭きをする

これきりのこね取ぐっと差し上げる

さあ筆が当たるとのの字やたら書き

【切見世】切り遊びの安女郎屋。
 「鉄砲見世」と言うのもこれである。
 一と切り百文のちょんの間遊びの客を迎える。

切見世は青大将のにおいがし あおくさ
切り見世は突き出すようにいとま乞い

独り言
 あまりの退屈ゆへ、縁側へ出て庭を眺めているうち、無性に勃えてどふもならぬ。それでも仕方もなしと、一本掻きけるそのよさ、程なく出くる淫水ぴよいぴょいと向こふの笹の葉へかかりて、だらりとさがれば、
 男「ハハア、あいつが宿ったら、いい軽業師になろふ」
 (福寿草・ひとりごと・寛政二)

【解説・蛇足】勃えるは、陰茎が勃起すること。
 一本掻くは、一物をこすって自辱する意。
 向こうの葉にかかったのを、遠くまで飛んで見事にぶら下がった軽業師の芸当に引っかけた。

張形 踵掛け
 下女、張形を使っているところを、主人、慌ただしく呼びければ、踵に結ひ付けたるを気も付かず、「あい」といふて行く。
主人「我が足につけた物は何じゃ」といふ。
下女「ヲヤ、粗相な。どこで辺乃古を踏んで参りました」
 (豆談語・張形・安永頃)

【解説】張形は陰茎の形に作った女子の自辱用淫具

    「つなぎけり踵に馬を長局」(宝七)

 自辱の最中に用命されて、

    「御局の粗相亭主を踏みつぶし」柳四九三三

質屋の後家
 ある人、張形を持ち行き、
「一分借りたい」と、番頭を様々口説けども、さらに聞き入れず。双方物言い、声高なるによって、後家、奥より立ち出で、
「あなたもよくよくの事なればこそ、あれほどにおっしゃるに一分貸してあげられよ」といへば、番頭、ふせうぶせふに一分貸したり。先の人帰りし跡にて、番頭、張形を見て、涙を流し、
「ツエ、旦那が生きてござれば、五百がものほかない」
 (寿寿葉羅井戸・質屋の後家・安永八)


【解説・蛇足】「張形の流れは出さぬ質屋後家」(新柳多留中巻)だが、亭主存命ならば当然不要な張形を、倍額で引き受ける。
2004/10/31
【切れ文】離縁状のこと。去り状、三くだり半などとも言う。
 「切れ文」は正式の夫婦関係解消の場合でなくとも、
 単に男女関係で手を切る際の文のことにもなる。
切れ文をにやりにやりと噛んで捨て
切れ文の中へ辺乃古を書いてやり

    切れ文を火箸ですつといける也
 「出て行け」、「エエどこへでも出ていく」と、いってしまったでまえ、去り状を書くところまで行ってしまったが本心を見透かされていて、妙な目付きで噛み捨てられたのではザマはない。

付け文は辺乃古の(なり)に結ぶなり 結び文

去り状は口説いた文の十分の一

手を切ると指を切るとは大違い
 起請の指切り

質屋から切れ文の来るえらい事

【金魚】情事秘語では、赤いと言うこと、食えないと言うことなどから、月経の異名として、花街に行われた称である。

金魚だおよしと鰻入れさせず

【金叩き】俗に御法という事でもないが、外腎が蟻の戸渡りを打つのは、快感上に大きな役割をなしている、と言われる。俗に言う「寒念仏」は「かね叩き」だが、秘語は「きん叩き」という。

    寒念仏している門で回向する

【蛇足】大津絵のうち、鬼が金をたたいて念仏している絵があり、これは小児の夜泣きのまじないとして、壁に逆さに貼ると夜泣きが直ると言われているが、鬼といい金叩きと言い、そして夜泣きが止むと言うなど、どうやら性的な寓意があるようだ。

【巾着】小銭とか守り札などを入れて腰に下げた、紐で絞める小袋。道中で小出しの銭を入れて提げるのは「早道」と称した。
 秘語の「巾着」は女陰異名で、特に、蛸、巾着とて最上級の品と言われている。「毛巾着」とも。実物は毛皮で作った巾着。
 「腰巾着」は常に一緒に付いて歩く者をいい、遊里語での「巾着」とは遣り手婆の異名という。

巾着は松皮菱に口を開け 菱形

巾着のふちは紫中はもみ

毛巾着せいて道具にきれが出来

巾着は一本入れて口を〆

買い当てた巾着に金を入れ

淫乱の巾着相模もっている
    菱餅はおなごちまきは男の子

節句餅 血だらけの張形
 ある女中、ご奉公も首尾良く下がり、相応なところへ片付きしに、毎晩毎晩門口へ来て、
「わしをよく振り捨てて片付いてきさした」と恨みをいへば、
 亭主此を聞き多きに怒り、女房を詮議すれども、女房
「一向存ぜん」といふ。亭主、不思議に思ひ、翌る晩、正体見届けんと、門口へ待ち構へし所へ、案の如く来たればしすましたりと、真っ二つに切りければ、姿は替えて糊だらけ、早速提灯を点し、糊を慕い、だんだんと行けば、女房の里ゆへ、家内を詮議すれども、手負いし者一人もなし、いよいよ怪しく思ひ、女房の道具を一々探し見れば、一つの桐の箱、血だらけゆへ、中を明けてみれば、張形が真っ二つ。(わらひ鯉・奥女中・寛政七)

【解説・蛇足】振られた男同様、独身時に愛用された張形が、
 娘の結婚に嫉妬の炎を燃やした。おぼこ娘が妊娠したので事情を確かめると、日頃愛用した張形が、飛騨の名匠甚五郎だった。
 「変生男子」(雅興春の行衛巻四・寛政九)の奇談もある。
2004/11/1
【草】秘語では性毛のこと。「春草」とも俗称。
 除草を「摘み草」と言い、陰名には「叢」「やぶ」「稗」「芒」などあり、海草の「おご」もこれに例えられている。
池之端花咲く頃に草も生え 初潮春草

古里はみな草深きところなり

吉原の土手通るほど草を抜き

土手の草濡れたで馬は滑り込み

売り物は草をむしって洗う鉢

蛇の入る穴の出口に龍のひげ

おごの白和え一種なり出合い茶屋

松茸でおごと剥き身をかき回し

女郎はおけし惣髪は地物なり

土器は浅い深いの草で出来 浅草と深草

    花の山いまだお草の気は知れず
 (解説)娘が花見に行ったが、世に慣れず、供の奴の気心もよく判っていないとの句。「お草」は草履取りの略称。
 破礼句では、春草のけもない娘を言おうとしている。

【草津の湯】上州草津温泉は古い温泉で
 「お医者様でも草津の湯でもこいのやまいはなおらない」との諺にもある通り、湯治場として有名だった。此処の入浴は褌をしたまま入浴の風習が伝えられてきたという。

   ふんどしを猿にとられる草津の湯
【解説】猿は湯女の異名で、浴客となじんで、其の足止めの口説から、褌を取り上げられたとの滑稽句であって、あたかも、三保松原の天女の羽衣物語の逆を行き、ここでは男がいい返事をしない限り、湯つぼから出られない話となっている。

    湯壺が草津下女頬も赤城産 臭通鼻
【蛇足】湯壺が草津(臭っ)?頬が赤城産とは?
 湯壺が草津の温泉ほど良いという意味?

【串】秘語では男陰異名。「芋田楽」「針」「槍」

三千の剥き身一本の串で刺し 大奥

(くじ)る】えぐる。手でかきほじること。秘語では手奔のことになるが、女子の手奔には「せせり」「抉り」などの方法の区別がある。

抉られたお駒は開が油ぎり

喰い飽きた饅頭指で抉ってる

我が身抉って人の仕たさを知れ

赤貝をたわけ抉って食いつかれ

饅頭に小僧だまって指をさし

据え風呂の加減に指が二本濡れ

死にたいのにの字を抜いて欲しい後家

ひねくっている茶座敷の床柱 銘木にきかす
2004/11/2
【ぐずろ兵衛】愚図とて、愚かしく痴呆の擬人名、のろい、
 弱いとの意で、秘語では男陰の痿陰、老陰などに言われる。
ぐずろ兵衛聟の不足の起こりなり

    ぐずろ兵衛足を絡んで〆付ける
【蛇足】それは、絡んでしっかり締め付けていないとズルット抜ける?

    酔うた辺乃古もちをつく開の土手
【蛇足】フニャ魔羅では土手転がるより仕方なし。

門口でお辞儀奥へと女房云い

張り物に娘結ばぬ頬かっむり

新造は中折れがして持て余し

    祭り前気ばかりせき込む提灯屋
【蛇足】提灯は垂れ下がりだから祭りに至りません

【具足】秘語では「よろい」「かぶと」の秘具を言う。「武具」とも。

【口々】秘語では、口は穴と同義になり、「下口」の称あり、
 顔で口の大きい者は「広通鼻」だと言われている。
 「上戸」「下戸」のこともあり、「口々」は「呂」とも異名され、
 親嘴の異名となり、古語では多く「口吸う」と言った。

目と目それから手と手口と口

後は無言で口と口

道鏡の浮気官女のふたをする 口にふた

せきれい不審口吸うはたが伝授

    蛤は吸うばかりだと母訓え
【蛇足】蛤は婚礼の夜を表す吸い物椀。
 実は食べず、汁だけを吸うのが作法。そのことに擬して、初寝にはいかな喜びにも、口吸う程度以上に取り乱しては鳴らぬ、お里が知れるから、との母からの訓戒の句。

吸う息を聞いてとろろを下女流し

【口の端】秘語の「池の端」に同じ。地頭春草などとも言う。
 「ほがみ」「土手」の類語。

地女は唐人ほどの口の端 顎髭

蛇の入る穴の出口に龍のひげ

山伏のうちのちまきはすごく見え 兜布

相果てる
 堅いお侍が遊びにおこしなされ、よほど酒が過ぎたとみへて、
 祝儀の小謡一二番謡われれば、女郎も若い者も呆れた顔で座を持ちかねて、
「サアお床入り」と勧めたときに、
「然からばいづれも」と挨拶して、寝間へ入ったが、
「あんまりおかしいお客じゃ、あれでは睦言が面白かろう」と、
 みな聞き耳で窺いければ、だんだん攻め寄せたときに、
 女郎が、
「アアいきやす。死にんす死にんす」といへば、御侍
「身も相果てるやふだ」(今歳咄・女郎・安永二)

【解説・蛇足】
    「道鏡に崩御崩御と御体悦」(柳八五一四)

気根の落ちる薬
 医師道三一渓へ、顔色衰えたる人来て
「御無心のことにて候へども、気根の落つる薬を、たんと下され候やうに」と申しける時、道三聞き給ふて、
「これはさて珍しき所望でおりやる。見掛とははらりと違ふた義を承る」と仰られしかば、
「いや、我らの用にてはござない。女どもに食べさせたく存じ候」と申したれば、
「何方もさやうにあるや」とて大笑いになった。
 (戯言養気集下巻・元和頃)


【解説・蛇足】はらりとは、全く、すっかり。
2004/11/3
【くつわ虫】くつわ虫はメカケの異名と『川柳語彙』にある。
 奥様には「鈴虫」という。
 「風鈴」の秘語もあり、嬌声の品位に付いて云う名か。
鈴虫やめくつわ虫ご寵愛

風鈴の忙しないのを乳母としり

内証のように鈴とは面白い 遊里での呼び鈴

【くつわ屋】亡八をクツワとて遊女屋のこと。

くつわ屋は馬のようなへ神酒をあげ

金釘も出来ずぶつつけ口説なり

口説かれて核に反り打つ武士の妻

小娘を頭ばかりと口説くなり

切ない口説きようおつつけるばかり

首つたけとはあてがった口説きよう

川の字に寝ていて舟をやる工夫

川の字をりの字に崩す夫婦仲

かみ様へそらったわけて這って見る

熊女見たいところが一つあり

革籠背負い辺乃古修行にさがみ出る
自分は正直
 ある人散々に煩ひ、医者を呼び、脈を取らせければ、
「これは大事の御煩いにて候。一義をお控え無くば、お薬は進ずることなるまじき」と申されければ、
「その段はお気遣いなされそ、はや二三年も、そのかたはござない」といふ。
「それは奇特な事じゃ、さらば、まづ薬を参らせう。この加減を見て重ねて仰せられ候へ」といふ。
「おついでに女どもの脈をも恐れ申せ」とて呼び出す。医師くすし
「この脈は、懐妊の心持ちござある。これは苦しうもおりないが、亭主のその気色にて、あのやうなれば、中々療治がなるまい」と申さるる。亭主迷惑して、
「それは我らの子には御座あるまい」といはれた。
 (きのうけふの物語上巻第五一話・寛永十三)


子供は先刻承知
 ある者、昼一義をくわだてんとおもへども、子供二人ありければ、ならず候程に、何とかして子供を使いにやり候はんと分別して申すやうは、
「この鉄輪(かなわ)を、兄弟して中(になう)ふて、川へ行きて洗へ」と申しければ、「心得候」とて洗ひに行く。企てて、しみたる最中に、子供二人ながら帰りたる。親ども、うろたへて申すやう
「何とて鉄輪をば洗ひ候はで帰りたるぞ」と叱りければ、兄息子申しけるは、
「他所にも昼っぴが流行るやら、川に鉄輪洗ひたるがつかへて洗はれぬほどに帰りた」といふた。
 (きのうけふの物語上巻第七七話・寛永十三)


【解説・蛇足】昼一義も、ひるっぴも、昼間行う男女の交わり。
 鉄輪(かなわ)は五徳。しみるは佳境に入る。
中国笑話「嗔児(しんじ)
 (笑府・閨風部)も、隣家の王家へ行かせた子供が、
「王おばさん家でも、同じ事やってるよ」と帰ってくる。
 添い寝していた子の寝床から夫の所へ、「そっと抜けてきた」
 妻が一義の最中、寝ているはずの子がそばに寄ってきたので、
「汝は何とて来た」というと、
「坊もそっと抜けてきた」と答える咄(きのうけふの物語上巻七八話)も、
「おっかやァ坊もいくよと目を覚まし」
 (柳五二一二)
2004/11/4
【組み打ち】秘語では「取り組み」「角力」の類語で、交会の俗称。「組み打ちの絵」は秘画のこととなる。
組み打ちの図も入れてある具足櫃
 戦いに勝つまじない

    組み打ちに太鼓を叩く居候 所在なさに
【蛇足】バレでは取り組みの気配を知って腹太鼓を打つの句。

死んだかと思うと起きる角力取り
子心に乳母が負けたと思ってる

【久米仙】大和国高市郡の久米寺に伝えられている久米の仙人。神通力を授かり、自由に空中を飛行したが、たまたま川岸で洗濯していた女の白い脛を見て通力を失い、雲を踏み外して下界へ落ちたという。

久米仙はよほど遠目のきく男

久米以後は尾張大根にも恐れ

毛が少し見えたで雲を踏み外し

【競べ馬】競馬のことであるが、秘語では、若者達の戯れに、勢いに任せての悪遊び。

独り身がよって辺乃古の力わざ

悪遊び辺乃古に力持ちをさせ

障子突き抜け辺乃古にバァをさせ

倅のいたずらごろうじろこの障子

破れ障子つわもの共が槍のあと

辺乃古くらべの巻ン頭はてんこ反り

【暗やみ】女陰の異称。「常闇」とも言う。

一つ目の入道やみと穴さがし

恋の闇とは火を消してするのなり 火消し壺

やみ仕合い廻り道具で下女される
 回り舞台に擬す

とぼそうと云えばけしなと女房云い

仕留めたと見えて剥き身を拭う音

菊見
「今年は良くできたと聞いたが、拝見せうか」と見に来る。
「成る程、新花もあり、まづあの通り」と書院を見せ、
「新花は土蔵の後ろじゃ。ご覧あれ。それ、お供して、お目に掛けよ」と腰元に言いつければ、腰元、庭下駄を直し、案内して連れ行く。暫く(ひま)どりて座敷へ帰り、
「さてさて見事な、きつい出来じゃ」と褒める。亭主
「貴様のその膝の土は」と問はれ、
「これは」と縁側へ出て払へば、腰元は顔を赤めて、尻をはたく。
 さしまくら・菊見・安永二


【解説・蛇足】
「下女尻をはたけば男前を拭き」(天五智六)の句もある。

いらぬ言い訳
 女房の留守に下女を手なづけ、
「これ幸い、嬶が留守だから、この間約束の通り、一番しやう。
 まづ、湯屋へ行って来い」
「アイ」といふて帰ってみれば、客があって話してい居る。
 下女も好きな奴にて、どふぞ早く客を帰し始めたいと思へども客帰らず。あまり待兼ねて、
「旦那様、よく洗ひました」(豆談話・下女・安政頃)

【解説・蛇足】亭主の戯れ言を本気にし、夜、寝間に行き、
「何しに来た」と咎められ、「嫌と云いに参りました」と言う
 「いらぬ言い訳」正直咄大鑑巻五・貞享四


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